■里山の恵みを分かち合いつつ、守っていきたい
NPO法人 むさしの里山研究会
かつては林業、養蚕、農業が盛んに行われ、自然に恵まれていた埼玉県寄居町。 ほかの都市近郊の例にもれず、この地も大規模な宅地開発やゴルフ場の造成が進んだ。 そんな町にかつての里山を取り戻したいと、ひとつの地道な活動がはじまった。
単線の線路が田んぼと畑の真ん中を通って、まっすぐ伸びている。あまりにのどかな光景に、あえてこの自然を守る必要はないのでは……と思われがちだ。しかし、「住民も自然が豊かだと思いこんでいますが、継続して調査をしていると、トンボやカエルなど生きものはどんどん減っています」と、理事長の新井裕さんに教えられた。
元々トンボが好きだったこともあって、18年前「寄居町にトンボ公園を作る会」を発足し、5か所のトンボ公園を作った。 「新たなゴルフ場建設の話が持ち上がった時です。ゴルフ場もいいかもしれないけど、この里山で子どもも遊べる場を作ろうと、トンボ公園を作ることを働きかけました。私は土地も持っていないし資金もない。知り合いもいなかったけれど、そんな思いに共感してくれる人が出てくれば実現できるんだと実感しましたね」。 新井さんは、1999年にもっと広域的な活動をと、定年まで9年を残して退職、新たにこの「むさしの里山研究会」を立ち上げ、専従することにした。
今回おじゃましたのは、昨年から本格的にはじめた「里山体験プログラム」のひとつ、たけのこ掘りとヒミツ基地作り。参加した10組ほどの親子連れは、初めて見る地面に顔を出すたけのこに興奮気味だ。 「こういう企画は値段が安ければ集まるわけじゃないことが、去年やってみてわかりました(笑)。きめ細やかな対応をするのはちょっと大変かもしれないけど、時間と交通費をかけて来るんだから、参加費は高かったけど満足できた、というほうがいい。そこで、『食と農と生き物』をセットにしたいろいろな企画を現在立てています」。
こうした体験プログラムを事業化し、NPOとして自立できるようにしていく必要があると新井さんは考える。それは20年近く里山保全に関わってきて、ボランティア頼みの状態に限界を感じているからだ。いつまでも助成金は出ないし、資金がなければ続けられないのが現実。自立の計画のひとつに農作物の販売がある。
「たとえば障がい者の作業施設でも、農産物など一生懸命作ってバザーに出しているけど、なかなか売れないんです。だったら、ここでその出口を設ければうまくまわっていくでしょう。また、流通窓口として生協に支援してもらえればとも考えているんです。そうすれば、NPO、行政、生協などの役割分担がうまくできて、地域と里山がうまく連携できる、絶好のモデルケースになるかと思いますしね」。
「自然を好きな人たちだけでなく、里山の恵みを分かち合いながら里山を守っていこうという、新しい地域社会を作っていきたい」と新井さん。いずれは障がい者も高齢者も健常者も関われる「百姓レストラン」を作りたいと、夢は広がる。
NPO法人 むさしの里山研究会 (事務局)〒369‐1205 埼玉県大里郡寄居町1233‐2 TEL/FAX:048‐581‐4540 ホームページ:http://www.denq.gr.jp/~satoyama/
[フィールドへのアクセス] 関越自動車道花園ICより車で15分、寄居カントリークラブ入口の側。
1999年に任意団体として設立、同年NPO法人格を取得。会の目的は「市民参加による、生きものと共生した地域づくり」。活動は荒川や水田の生態系、雑木林などの調査研究、自然観察会やシンポジウム、研究報告書の出版などの普及啓発、地域と都市との交流事業の3本柱。今回のような里山体験プログラムは今年度20回ほど予定していて、借りている畑で作ったソバやこんにゃくなどを使ったプログラムも盛り沢山。
正会員(個人・家族)は年会費2,000円、賛助会員(個人・団体)は1口5,000円で、誰でも入会できる。