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介護☆同行二人<てめぇ、どろぼう>

2008-01-30 01:15:05

認知症というのは、本当にさまざまに思いも寄らないその人の姿を映し出すものです。その様は悲喜こもごも。思わず、「あっとおどろくタメゴロー」なぞ口走ってのけぞってしまうことがあります。

今日は、そのうちのお笑い版ともいうべき夫の行状を暴露しちゃいましょう。
1999年の9月に脳出血の手術をして、年が明けてやっと歩行がボツボツできるようになり、食事を他の患者さんたちと一緒に食堂で摂れるようになった頃のことです。

tosibyouin3.jpg退院して検診に

私が頃合を見計らって食堂に行きますと、夫はもう自分で気に入った席に腰掛け、食事が来るのを待っておりました。
私はすぐに、夫が見かけないジャンパーを着ているのに気がつきました。でも、「そのジャンパーどうしたの?」とは訊きませんでした。
この日の昼間、次男が東京から見舞いに来ていたことを知っていましたから、「Tがお土産に持ってきたんだ」と瞬時に納得したのです。

ただ、この時ひとつ、不審に思いました。
(それにしても、Tはなんでこんなセンスの悪い、しかも古着を父親に持ってきたんだろう?)
ほんとにそのジャンパーは、茶色の合成皮の特にあたたかにも思えないベラベラのものでした。Tは今時の青年らしくそれなりにお洒落な子でしたから、ジャンパーの品の悪さを、私はいまいましく思ったほどでした。
それでも、Tが持ってきたんだ、と何疑うことはなかったのでした。若者がわざわざ古着を購入するとテレビかなんかで知っていたので、それに違いないと、この点もさっさと勝手に納得したのでした。
私はそういうKYな人間なのです。

やがて食事が来て、私は夫に食事の介助をしていました。・・・ふと、人の視線を感じてそちらを見ると、患者さんの一人である男性が、じいっとこちらを睨むように見つめているではありませんか。
「?」と思ったその時、その男性は、ガタガタと立ち上がり(と言ってもこの方は脳梗塞の後遺症で足が不自由になられていて、相当時間がかかりましたが)、指をまっすぐに夫に指して叫びました。
「やっぱり、俺のジャンパーだ! てめぇ、どろぼうしやがって!」
こんな驚いたことはありません。「ど、ど、どろぼう???」と夫の顔を見ると、夫は我関せず、すましてごはんを食べています。

結局、夫がその人の部屋まででかけ(病室は別でしたから)、ベッドのわきにおいてあったジャンパーを着こんだんですね。本人はもちろん、盗もうなどという意識はなかったと思います。
その後、私は平謝りに謝り、翌日、その方の奥様が来ておられる時にあらためて謝りに行きました。

また別の日、夫はよその病室を徘徊して、なぜか下着ばっかりを山のように抱えて自分のベッドに戻ったこともありました。
ひょっとしたらこれは深刻に思うべきことかとは思ったのですが、大笑いして過ぎるしかすべを知らない私でした。今でもこの入院の時のことを思い出すと冷や汗が出ます。友人たちにはネタにして大いに爆笑させておりますが。


(佐々木和恵)

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