作家、演出家、監督など何かを表現する人が、よく「誰かが見てくれて完結する」と言われるのを聞いたことはありませんか。
私は、この「煙が目にしみる」を観たあと、「人は死んで、生命の終わりという上で完結を迎えるが、人生の完結は、死だけではないのだ」という感慨にふけりました。
演出、木内洋子さんは、この舞台についてこのように書いていらっしゃいます。
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物語は・・・、とある斎場が舞台。幕があがるとそこには白装束を着た二人の男が座っています。そう、まさしくこれから焼かれようとしている二人なのです。残された家族達は最後の別れを惜しみ、悲しみに包まれています・・・が、たった一人のおばあちゃんだけは違います。死んだはずの息子と「人生最後の、いや、あの世で最初の友達」の姿が見え、言葉が聞こえる・・・らしいのです。家族達は信じられない思いでおばあちゃんに接します。でも、どこか心は癒され、人と人が関わり合いながら生きているこの世で、失いそうになった大切なものに気づいていくのです・・・。
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そうなのです、木内さんが演出したこの芝居は、“人と人が関わり合いながら生きているこの世で、失いそうになった大切なものに気づいていく”。これこそが、故人の人生を完結させる、ということではないでしょうか。
この舞台では、生きている間は、理解できなかった、理解しようともしなかった故人の思いや心が、一人のおばあちゃんの言動をきっかけに、家族の中にしみいっていくのです。失いそうになった大切なものに気づいていく、すなわち、故人を真に知る、のです。この時はじめて、故人の人生が完結する。
白装束の一人、野々村浩介の家では、浩介が生きている間は、互いのことなどどうでもよかった家族の心が、浩介の自分たちに寄せていた深い愛情を理解していき、自分自身と家族を信じる安心感を覚えていきます。
もう一人の白装束、北見栄治は、生前若い恋人がいて、娘から反発されていました。栄治も娘も孤独でした。ですが栄治が煙になるこの日、娘と恋人は顔を合わせ、最初は激しくぶつかりますが、だからこそ栄治の人間的な優しさや苦悩をそれぞれに受け入れ理解していきます。
こうして、浩介も栄治も、自分の人生を悔いなく完結させ、煙となって桜咲く空に立ち上っていくのです。本格的な大道具・美術の力量も素晴らしく、美しい見せ場がいくつもありました。
そんな感慨にしみじみとひたらせてくれた、さいたま演劇集団「YOU」の「煙が目にしみる」でした。
今回、三回公演だったのですが、三回ともチケットを完売し、当日駆けつけた人は入れないほどの人気でした。それは、YOUが、地域、人間の暮らしに根ざした公演を、常に誠実に果たしていらっしゃるからではないでしょうか。スタッフ、キャストの、プロ、アマの境など感じない実力も、人気が高まる要因のようです。
今回の舞台では、藤井かつ子が、物語の立役者おばあちゃんを、人生の酸いも甘いも洒脱にかえてなお愛らしい、という個性を作り上げて堂々と演じ、観客を笑いの渦に巻き込みながら、一人ひとりの人生をふと振り返らせたのではないかと思いました。
スタッフ
舞台監督:白神久吉(彩の国さいたま芸術劇場技術スタッフ)
照明:丹野重幸(彩の国さいたま芸術劇場技術スタッフ)
音響:八七橋岳(彩の国さいたま芸術劇場技術スタッフ)
演出:木内洋子
脚色:さいたま演劇集団「YOU」
劇団スタッフ
美術:高岡智彦/吉田素子/浅井香代子/奥村幹子/田中礼子
宣伝美術:斉藤周一
制作:藤井かつ子/佐保和典/木内洋子/望月香代子/石あかね
キャスト
渡辺和子/佐保和典/石あかね/望月香代子/小沢茂/やまもとまさこ/藤井かつ子/ふうこ/数井美由紀/伊藤由香/宮下寿子/きうちようこ/坂口紀代/吉田康夫/新井巌男

上演が終わって、劇場からホールに出る観客の皆さん。

このブログや雑誌ののんびるで登場していただいた与野朗読の会の方々とばったり。浩介の従姉妹、原田泉役を演じた石あかねさん(向かって左から二人目)と撮影。石さんは大変な表現力をもった女優。今回はちょっと意地の悪い役どころを存在感たっぷりに演じている。
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さいたま演劇集団「YOU」では、劇団員の募集を随時されています。
問い合わせは 048-854-8870
ホームページ
http://members3.jcom.home.ne.jp/welcome.yono/index.htm
リポーターの独言
いやぁ、泣いて、笑って、感動させていただきました! ただただ面白い芝居をありがとうございます!!! の気持ちです。
(佐々木和恵)