2006年9月16日
NGO未来の子どもネットワーク 第1回思春期子育て講座
講師:教育ジャーナリスト 青木悦さん
演題:「ホンネを言えない子どもたち」
こどもたちはしんどい思いをしている
青木さんが、”こどもたちの今”に関心を持つようになったのは、横浜で起きた、野宿をしている人たち(ホームレスと言われている人たち)を、こどもが集団で襲い、三人の死者が出た事件からだそうです。
「今のこどもは大変なところにいる。私たちはそこに気づかなくてはいけない。」と、青木さんは淡々とした口調で語りはじめました。
淡々とはいってもその中に、こどもに尋常でない熱意をもって向かい合っている人の確かな視点を感じ、聴き始めてすぐに居住まいを正しました。
「沢山のこどもに会ってきました。そこでいつもいつも感じるのは、”こどもが一番、辛いしんどい思いをしている”ことです。それは、”こどもはどこにも本音が言えない。本音を言えるこどもはどこにもいない”ということなのです。親と友達に一番気をつかっている。身近なはずの人間に気をつかって、本音を言えない。これは本当にしんどいことですよ。」
親に言えない
「私が何度も会って、やっといじめにあってることを話をしてくれた子が、”自分がいじめにあってることを、親にだけは言わないでくれ”と言うのですよ。この子は、遺書を書き、それでナイフをくるみ、ガムテープをまいて、ポケットにしのばせていた。”カッとなってナイフを取り出した時、ガムテープをほどいている間に気持ちが平静さを取り戻すかもしれないから。これは、使うためじゃなくて、ぼくのお守りなんだ”と言ったんですよ。」
「なぜ親に言わないで、と言うと思いますか? 親をガッカリさせたり、心配をかけるのがいやなんです。親は、自分がいじめられてると知ったらガッカリする、と思っているんです。・・・この話を聞いた人が、”親思いで優しいんですね”と言いました。そういうことではないと思うんです。私は、こどもは嫌なことや頭にきた時は、親に泣き叫んでいいはずだ、と思うんです。それをしないで気を遣う、と言うのは、本当にしんどいでしょう。こどもにそうさせてはいけない。・・・そうさせてしまうのはなぜか?」
親がつくる幻のこども
青木さんは、講演を聴く人にそう問い、その後、最も言いたかったことを言いきられました。
「おとなが、親が、その子その子のありのままを見て理解しないで、自分で作り上げたこども像を、自分の子にあてはめて、合わないと落胆したり失望したりするからです。つまり、親、おとなは、”幻のこども像”を最も大事にして、そこから実際のこどもを見るのです。当然、幻のこども像から見たら、実際の子は欠点だらけや弱く見える。そこでガッカリしたり、自分の子はダメダと決めつける。・・・こどもは、親が抱いている幻のこども像や期待に合わせようと懸命に努力する。・・・それが積み重なっていけば、いつか爆発するのは当然です。」
青木さんのお話は、実際に向かい合い、その子が吐露した思いや言葉にどこまでも沿おうとする中から出ているのが伝わり、聴いていて、こどもたちの切実な目の色や苦渋にあえぐ表情が見えてくるような気がしました。
そしてそのこどもの苦渋は、そのまま親の苦渋であることを察することができます。
この日、参加していた若い母親たちも、その実感があったのでしょう。お話の後の質問や意見の交換は、それぞれが抱えている問題を出し合い、それがまたそれぞれの気づきにまでなっていったと感じました。
著書
『幻の子ども像』(発行所 坂本鉄平事務所・TEL03-5840-9851)は、Q&A形式で、さまざまな問いに答えを出しています。こども(人間)は一人一人違うわけだから、同じ言葉の問いにしても中身は微妙に違うこともあり、必ずしも形が同じでもその答えの通りにすればいい、というものではないと思いますが、広い視野の篤実な答えは、大きな参考になり、気持ちが落ち着くのではないでしょうか。子育てに悩む方々にお薦めしたい本の一冊です。
他に、『アスファルトのたんぽぽ』(発行所 坂本鉄平事務所)『泣いていいんだよ』(発行所 けやき書房・TEL 042-525-9909)『「子どものために」とう前に』(発行所 けやき書房)などがあります。
青木悦さんプロフィール
1946年高知県生まれ。「朝日中学生ウィークリー」「婦人民主新聞」記者を経て現在フリー
リポーターの独語
青木さんは、ご自分の子育ても決して順風満帆ではなかったことを話しをされました。そこにありきたりの世事臭さは見えず、どこまでも真っ直ぐなのです。知識や経験の豊富さ、洞察力の確かさとともに、人間的な正直さが苦しむ人を楽にさせるのだろうと、講演が終わった後、爽快な思いにひたされました。
(佐々木 和恵)