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書物紹介<医師 黒岩卓夫:大地の子と地域医療>

2006-09-22 04:47:35

『大地の子と地域医療』は、黒岩卓夫医師が、第13回若月賞を受賞された折りに開かれた記念講演のお話しを、自らまとめられたものです。

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本の内容
医療に関する難しい専門的なお話だろうかと思ったのですが、読み始めるとすぐにその面白さに惹きこまれてしまいました。
文学青年のような芸術性、冒険家の持つロマン性を秘めた視線を含めつつ、医師としての理念、理想、情熱を根底に持って医療に打ち込まれた自らの足跡を書かれているのです。しかも、『少年の純朴さ』、そう少年そのものの溌剌とした精神がほとばしっている痛快さすら感じるのです。
と書くと、娯楽的な本なのか、と思われるかもしれませんが、そういう意味ではありません。

黒岩先生は戦争中、ご家族とともに満州開拓団の一員として満州に行かれており、戦後、妹さんと弟さんは満州開拓団から逃げ出し避難する途中、病と飢えで亡くなり、長姉さんのご一家は、北朝鮮で、夫、子供三人(一人死亡)と孫三人、計七人が1975年以降行方不明であるということです。
「大地の子」とタイトルにつけられたのは、ドラマで有名になった山崎豊子作の大地の子の陸一心と同じコースを辿って開拓団から逃げてこられたからなのです。

先生は、下のように記述されています。
『私は日本に帰り成長したが、私の心境からしたら「日本の子」にはなりきれなかった。なぜなら、満州開拓団30万人は、祖国日本に切り捨てられた棄民となったからだ』と。

ここからだけでも、この本がどのような重さをもった本かわかるでしょう。
そうなのです。この本は、戦後の悲惨な日本とご自分たちの姿を書いておられるのです。
それでも尚、面白い、痛快だと書いたのは、黒岩先生の、苦難や権力に屈しない反骨精神と、洞察したことを明快に表す潔さを称したのです。

人間性
敗戦後、日本に帰国され、医師となられ医療の道を歩んでこられたのですが、医療への情熱、理想の追求の魂もまた痛快と言うに相応しい輝きを放っておられるのです。それから、人間に対する視線の温かみ、豊かさ、自由さのようなものを感じ、読んでいるとなんとも言えない深い安心感のようなものを感じるのです。

例えば、越後で歌や三味線を弾きお金を貰って生きる盲目の女性たちは瞽女と呼ばれて、瞽女は悲しい負の存在のように伝えられていることが多いですが、黒岩医師は、このように記述されています。
「瞽女は、各地の情報のメッセンジャーであり、農村の女性たちへの癒しの受け手でもあった。」と。瞽女は、行く先々で、当時ただ忍従の中に働いていた農婦たちのグチなどを黙って聞いてあげたのだといいます。
そこで黒岩先生は、『旅芸人であった越後瞽女たちは、訪問ケアの原点ではないか』と書いておられるのです。
こうした視点の広さ、深さに感銘を受けるのです。
『のんびる』10月号に黒岩医師のインタビュー記事が掲載され、先生の業績や人間性を伝え読み応えがあります。

黒岩医師のプロフィール
1937年長野県美麻村生まれる。1942年、一家で渡満。1946年引き揚げ、東京大学医学部在学中に60年安保闘争に参加。

若月賞とは
第2次大戦中の混乱から復興、そして高度経済成長を経て経済大国となった半世紀を、長野県佐久で、「農民の健康守る」活動に尽くしてこられた医師、若月俊一氏の業績を称え、また現代の理想を失ったかに見える医療界、社会を憂い、人間や社会が再び純粋な理想と行動を取り戻すことを願って、現代の保健、医療、福祉の分野で真摯な活動をしている人に贈られます。
第一回目の受賞は1992年で、黒岩医師の受賞は第十三回目となります。
ペシャワールで、唯一の日本人医師として貧困と戦争の傷にあえぐ人々のために医療、井戸掘りなどの活動をされている中村哲医師も過去に贈られています。
  
選考委員は、作家の井出孫六氏、藤楓協会理事長,国際医療福祉大学総長の大谷藤郎氏、医事評論家の川上 武氏、医学博士,医事評論家の行天良雄氏、東京家政大学教授の樋口恵子氏

リポーターの独言
私は、黒岩先生を、『医療界の永遠の風雲児』と呼ばせていただくことにしました♪

(佐々木 和恵)

この記事のURLコメント(2)

Posted by 佐々木和恵 at 2006-11-11 00:02:54

カラスの女房様
篤いお心のこもったコメントをいただきまして、本当にありがとうございます。
黒岩先生ご夫妻と、カラスの女房さんたちの新潟での交感が目に見えるような気がしまして、何ともいえない感動を感じながら拝見しています。
NPO設立の夢、どうか捨てないで頑張って下さいね。いつか、夢叶えましたよ! とご報告が届くのを、祈りながら待っています。
カラスの女房さんたちのこうした思いは、黒岩先生にとっての応援と励ましになるのだと思います。
そして同じ思いの人たちにも!
お身体大切にして下さい。本当に応援しています。

Posted by カラスの女房 at 2006-11-09 21:16:31

はじめまして。黒岩先生の本のご紹介読んで、一言言わずに入られなくなってカキコします。去年の1月22日・23日と新潟の黒岩先生の地域医療と地域福祉の現場を見て回ってきました。仲間と地元に介護施設をNPOで立ち上げようとしていたので、勉強に行ったのです。黒岩先生の講演も聞きましたし、夜は黒岩先生やその奥様の秩子(ちづこ)様と親しく交流会も持っていただきました。雪ぶかい中、古民家を改装したデイサービスセンターを見学させていただき、いまだにあのぬくもりのある建物の中での家族的な介護の印象は鮮明です。黒岩先生のご本も買って読みました。私の中で、また仲間の中で黒岩先生のお仕事が大きな指針となったちょうどその頃、パルシステムが「キナリ」の紙面で黒岩先生を取り上げ、以降、薬のカタログにもアドバイザーとして登場されるようになり、お陰で組合員の私は黒岩先生といつもつながっているような気持ちを持つことが出来るのはほんとに幸せです。あれから私たちの方はいろいろあって、福祉事業のNPO設立は遠のいてしまいました。でも夢は捨てていません。黒岩先生がまいた種を私たちはしっかり胸で暖めています。いつか地元にまいて育てるつもりです。

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