しずくは、十三歳の誕生日の日、一人で寿司屋に入る。パパはあとから来ることになっている。しずくは緊張しながらパパを待っている。・・・と、となりの席の女の子と目が合った。
女の子は、服装は大人っぽいけど、体は小さくて、顔つきからしずくと同じくらい。
「こういうお店に、一人で入るのって、緊張しますよね」と、女の子はしずくに話しかけてきた。
しずくは、ミキちゃんとこうやって出会い、物語ははじまる。
出会いの日に、ミキちゃんとしずくは誕生日が同じ、つまり二人とも誕生石は「ムーンストーン」であることがわかる。そして、ミキちゃんは、体にしょうがいがあった。
ミキちゃんは、しずくの名前や誕生日や誕生石が「ムーンストーン」であることがわかるにつれ、なんとなく落ち着かない様子を見せる。読者は、しずくとミキちゃんは、どうやら何らかの絆があるようだ、と感じはじめる。
この謎が、お互いの親のことなどがわかるにしたがって解明されてくるのだが、展開はミステリアスな色合いをにじませてドキドキする。またしずくとミキちゃん双方の親子の関係は、ミキちゃんのしょうがいの問題もからんで重く切ない。
でもあくまで明るく軽妙なタッチで描かれ、そこに生じている問題を、読者に押し付けてくるものはない。私はここに、作者は、人が生きていく上で生じそれぞれが背負うものは、それぞれが引き受けて潔く生きるしかないのだ、と言いたいのではないか、と捉えた。
作品のもうひとつの大きな特徴は、児童文学では、こどもの苦しみが描かれていくことが多いが、岡田なおこのこの作品は、親の苦しみ、悲しみが顕われていることだ。しずくにしろミキにしろ、親の苦しみに翻弄されている部分があるのだが、感傷でない受け入れをしており、そこが作品のスケールを深くしている。
著者の岡田なおこさんに、近況を伺いました。
「なおこさん、春ですね〜。どんな春を過ごしていますか?」

「4/12〜13、両親+ヘルパーを頼んで、伊豆方面で遊んできました(*^_^*)
『母が動ける内に、たくさん想い出を作ろう』と言って、両親はほぼ毎月どこかに遊びに行っています。3月は弟の家族とスキーに行き、今月は私と、温泉に行きました。母は元気な頃より遊んでいます (笑)」
※このご両親との旅行の様子は、なおこさんのホームページ「
なお小箱」の
日記に書いてあります。
「ところでなおこさんは、何をしている時が一番好きですか?」

「それは、作家としてのしごと」と作品に取り組んでいるなおこさん。
体にしょうがいがあるなおこさんは、こどもの頃から、タイプライターやワープロが傍にある環境で、自然に気持ちや考えを文章で表現するようになったそうです。PCを操作する場合、その時に応じて楽な姿勢を自分で模索しているそうです。そうやって次々と作品を誕生させていらっしゃるんですね。
ホームページのプロフィールには、「もともと言語障害があったから、文章で気持ちを表すようになったと思います」とあります。
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岡田なおこ
1961年、東京生まれ。
都立光明養護学校、都立深沢高校卒。
日本児童文学者協会主催の「児童文学学校」「創作教室」を修講。
「薫ing」(岩崎書店)で野間児童文芸新人賞、「ひなこちゃんと歩く道」(童心社)で日本児童文学者賞。作品は他に「
サムディーいつか」(岩崎書店)など多数。日本児童文学者協会会員。
桑原良江
1959年新潟県生まれ。単行本の仕事に、岡田なおこ作の「薫ing」「ふたりっ子」(岩崎書店)、「真夏のSCENE」(文溪堂)などの装画・挿画を手がける。雑誌や広告、イラストの講師など幅広く活動。
誕生石はムーンストーン
2009年3月5日 第1刷
作者:岡田なおこ
画家:桑原良江
発行所:株式会社 新日本出版社
(佐々木和恵)