2月1日更新の、「回想法を知っていますか?」の記事中にご登場いただいている小林幹児先生の回想法の勉強会をお訪ねしてきました。

欠席の方もあり、参加者は少なかったのですが、病院の精神科勤務の看護士さん、ベテラン介護士さんなど、回想法の必要性をよく認識され、既に心療回想士5級の資格を取得されている人もおられて、活発な意欲的な意見が交わされていました。ブルーのシャツ姿の方が小林先生です。

病院に勤務の方がシナプスの働きと認知症の関連を質問され、シナプスは脳の中で情報の伝達をする。が、伝達する物質のグリタミンを、グリア細胞が食べてしまうと情報が伝わらなくなる。伝わらない=アルツハイマー型認知症。これは遺伝子が関係しているので、その遺伝子を見つけ、なくすればアルツハイマーにならない。・・・と言ってもまだまだ未来の話だが・・・と説明されている小林先生。こういう会話にもどこかユーモアを漂わせておられ、場は何か明るく、いい意味で軽い。

熱心にメモをとるお二人。向かって左の方は大学院で勉強してきた方という。的をついた質問や意見が出る。

輪になって、それぞれ回想ガイドとゲストに扮してのロールプレィ。この日の題材は『飲み物』。ペットボトルを持って、子供の頃の飲み物にまつわる話をしていく。というと、ただの思い出話をしあっているように思われるかもしれないが、回想士は、思い出話に見えるところから、発言者の深層心理や、気持の向かっていく先をとらえる。しかもさり気なく笑いがわくような引っ張り出しを心がける。実際この日のロールプレイも、晴れ晴れとした笑いが満ち、本当に楽しいものだった。例えば、普段は思い出さない、忘却の彼方にあった飲み物にまつわる出来事や、自分のしたことをはっと思い出し、その思い出したこと自体が、その人をその場で解放させる雰囲気ができてくるのだ。
ではここで、小林先生のプロフィールと、回想法の概要の紹介をしましょう。
でも概要は、医療に近い分野のことですから、中途半端な聞きかじりでの理解ではとんでもない間違いをしかねません。そこで、先生の書かれた著書から、ご挨拶の文を、原文のままで、読み易いように小見出しをつけながら転載させていただくことにします。
プロフィール
小林幹児(こばやし かんじ)・博士(行動科学)
特定非営利活動法人日本デスカウンセリング協会代表
心療回想法研究会長・産能大学講師・心療回想士・日本心療内科学会員・日本応用心理学会員
日本大学大学院心理学修了・財団研究員などを歴任
(回想療法の理論と実際より)
小林先生と回想法との出会い
回想法との出会いは、1997年、インターネットで調べものをしているときにヒットしたのがきっかけでした。
回想法はまったく新しい技術というわけではなく、自分が今までやってきた技術のことを「回想法」と表現するのか、という驚きでした。
それから回想法の本格的な研究が始まりました。
日本デスカウンセリング協会
当時、余命告知をされたがん患者へ「死の受容」ができる心理カウンセラーとして活動していましたが、もっと多くの人々を救いたいと願うようになり、回想法技術を広めることを目的として1999年、特定非営利活動法人日本デスカウンセリング協会を設立しました。
設立当初は「デス・死」を標榜するなど社会紊乱を引き起こすものだ、と役所の方々や友人などから多くのネガティブ意見をいただきましたが、「ネガティブだからこそ。表に出すのが必要なのです」と説得を繰り返す日々が続きました。今思うと、この数年で大きく時代意識が変化したことを実感しています。今は「死を語ることこそ大切なことだ」と出会う方すべての方から励ましのことばをいただくようになりました・
回想法の使い方
もともと回想法はアメリカとオーストラリアで医療における心理療法として発達してきたものなのですが、日本ではリクレーションとして普及しているように感じています。それも確かにすばらしいことと思いますが、本来の価値をしっかりと日本でも見直していく時期が来たようです。
「心療回想法」の名称の履歴
「心療回想法」という名称は、札幌明和病院の創設院長の奥瀬哲医師(故人)のご指摘に由来しています。奥瀬院長は「心療内科」を日本にもたらした第一人者であり、日本の心療内科診療のあり方をはっきりと示されました。そうした奥瀬院長の薫陶を受け継ぐことを願い、医療フィールドで行う回想法を心療回想法と呼んでいます。
回想法の未来へ
回想法が回想療法へと発展し、さらに脳リハビリとしての位置づけまでも得ようとしている現状から、「日本回想療法学会」設立の機運が高まってきました。デスカウンセリングからはじまった回想法が、その翼を大きく広げていけるよう、さらなる充実をめざして行きたいと思います。
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回想録
これは、認知症や高齢者の方に、インタビュー形式を用いてあたられる時に使用される、貴重なインタビューテキストのようなものです。
細やかな配慮や計算の上で形になった問いが120あります。
この回想録のご紹介は、次の機会にしたいと思います。
内閣総理大臣認証法人 日本回想療法学会のホームページ
http://www.fureai.or.jp/~psytex/
回想法を学んでみたい方は、このホームページから問い合わせられるといいでしょう。
リポーターの独言
小林先生の挨拶文にも表れていますように、回想法は、これから発展していく方法・学問なのだと思います。
近年、脳の解明がなされてきていますが、脳はある一部を欠損しても他の部分が補ってまた再生する、あるいは、ニューロンそのものが新しくおこり、一時欠損のためにおかしくなっていた状態が回復するなどの発表や報道もあります。まるで脳そのものの生命力と再生力の強さを言われているような気がします。・・・とすると、小林先生の回想法というのは、脳欠損の「救世主」のひとつとなり得るのではないか、と素人考えながら思い、認知症の夫と暮らす私は期待でどきどきしてしまいます。
タイトルに、「回想法は楽しい」としましたが、回想法が楽しいのではなく、小林先生の指導される回想法は楽しい、というのが正しい表現のような気がします。楽しくなくてはならない『学問』、なのだと思います。
実際この日、お話に加わっていると自然に笑いがこみあげてきて、気がつくと心身が軽くなったような感覚を覚えました。この感覚は脳の活性とつながるものかもしれないとも思いました。素敵な体験をさせていただきました。
(佐々木 和恵)