「50年前の、私が10歳の頃、お大師様の縁日といったらそれは素晴らしい賑わいだったのよ。毎月21日に、取手駅の東口から長禅寺に続くお大師通りには出店が隙間がないくらいに並んで、近隣の農家のお嫁さんたちは、普段は土にまみれるようにして働きづめだったけど、この日は一張羅を着てお洒落をして出かけるの。買い物をし、そして友人との語らいを楽しむ。男の人たちは夜更けまでお酒を飲み交わす。子供たちもお小遣いをもらい、目を輝かせて出店を回る。・・・縁日は、娯楽がない時代の、みんなの気持ちを明るく楽しくさせて、明日の活力を養ってくれる灯火のようなものだった。それが、40年前ぐらいからだんだんさびれ、いつの間にか消えてしまった。その後、あんなに活気のあった取手のまちが寂しくなってしまったの。昔のように縁日が戻ったら、どんなにいいだろう」。・・・居酒屋を営む工藤悦子さんは、店に来た数人の若者に愚痴のようにこう話しました。この愚痴が、取手のお大師様の縁日を復活させる物語のはじまりとなったのです。<写真はクリックして見て下さい。大きくなります>
『駄菓子屋よいこ』の店と工藤悦子さん
■「取手しか知らない」大人と「取手を知らない」若者の融合
愚痴を聞いていた若者たちが、「縁日ってそんなに人が集まるの? じゃ、縁日をまた興せばいいじゃない。やろうよ。人が集まるって素敵なことだよ!」と反応したので、工藤さんはびっくりしました。この若者たちは取手市以外のところに住み、取手市内にある職場に通っていたのですが、バスで駅と職場を往復するだけで、取手のまちには関心がないと思っていたからです。この日はたまたま工藤さんの店に来ていたのです。
若者たちは、工藤さんの驚きを尻目に、この後縁日復活に向かって動き始めました。工藤さんも友人たちに声をかけ準備に入りました。「取手しか知らない」工藤さんたち取手っ子と、「取手を知らない」若者たちの融合の始まりです。
「私たち取手の人間は、つい周りの人の視線を気にしてしまうの。人の中には、『何やるんだろう?』ってあまり好意的でない目をする人もいたからね。でも、若者たちはそんなことにとらわれない。真っ直ぐに純粋に進めていったわ」。
■復活に挑む者の砦『取手ぶるく』の誕生
若者たちの発想と実行力は鮮やかでかっこいい。
まず、みんなが集まる拠点を作ろうと提案。たちまち、「駄菓子屋よいこ」が立ち上がりました。
「駄菓子屋よいこ」の立ち上げと平行して、縁日復活をする会の名前も決めました。
これがまたなかなかのセンスと技です。『拠点』を『砦』と『取手』を重ね、ドイツ語の砦を意味する『ぶるく』をとって『取手ぶるく』としたのです。
NPO法人『取手ぶるく』の誕生です。『ぶるく』は、ドイツ語で『城』と昔ドイツの人々が自らの手で街を創りあげた『城砦に住む人』を表しています。若者たちは、みんなで取手を楽しくしようとの願いをこめて、自ら街を作ったドイツの城砦に住む人々にちなんで『取手ぶるく』と命名したのです。
こうした若者たちの自由な発想と行動力に勇気付けられ、工藤さんたち地元組みも、実際に駄菓子屋と縁日を起こすための交渉などに一生懸命にあたっていきました。
最初は10人足らずのメンバーで、出店も甘酒だけでした。が、三年経った今は、惣菜、漬物、パン、花、玩具などの店が並び、占いのコーナーもあります。
昨年から、東京芸術大学取手キャンパスの学生やOBも参加するようになり、その学生たちが参加するベーゴマ大会が注目をされています。
ベーゴマ大会には小学生も参加するそうです。取材に行った4月21日は土曜日でしたが小学校の行事があって小学生の参加がなくて残念でした。
ベーゴマの廻し方を指導する人は、「次の世代にベーゴマを伝える上でも小中高校生たちの参加は大歓迎だ!」と言っていました。
小学生から大学生、大人が一緒になってコマ回しを楽しむ・・・素晴らしいですよね♪
<参照:
ベーゴマ Wikipedia>
コマは紐をうまく巻くのが命。指導者の人に教わる芸大の学生たち。回るコマ。
NPO法人 PLSスマイルクラブ『ほほえみ』という知的障がい児の施設は、こどもたちが浴衣地で作った草履を並べて販売したり、南京玉簾の踊りを披露して、沿道に並んだ縁日のお客さんは拍手喝采。とても盛り上がっていました。
玉簾を鮮やかに駆使して踊る「ほほえみ」の皆さん
■『駄菓子屋よいこ』に集う人々
「この三年の間に、町に人の繋がりと元気が戻ってきたの!」と
工藤さんは目を輝かせます。
20代の鎌田くんは、「工藤さんの店のアルバイトをして会のスタッフになった。もっともっと縁日が大きくなるように頑張りたい。市民の人に来てもらいたい」と生き生きと話します。
根本さん60代は、去年の10月からボランティアで参加。活動していると楽しい。取手はいい町なのに元気がなくて残念。縁日のここから元気が広がっていくのを願っている」と言います。
60代男性岡田さんは、「21日には、ここで若い頃の友達に会える。ほんとに嬉しい」といかにも楽しそうです。
60代女性の櫻井さんは、「よいこでボランティアをはじめてから三年になるので、孫の小学校の生徒たちもみんな私を知っていて、保護者の参観日に孫の学校に行くと、みんなが『よいこのおばちゃん!』と言ってくれるんですよ。私、孫の友達のアイドルなのよ」と大らかな笑顔です。また、「出店に出す手作りの惣菜が美味しい、と言ってもらえるのも嬉しい。こうやっているのは、みんなへの感謝と恩返しの気持もあるの」とも言います。
占い師の20代女性大場さんは、「工藤さんのお店に呑みに行って参加するようになったんです。普段接点のない人と接点が持てるのが楽しい。占いはその人の人生が見える」と優しい笑みを浮かべました。
工藤さんのパートナー、
中川さんは、「参加者が増え、出店が長禅寺の境内まで長く連なるといいね。人がもっと集まると、もっと何かがおこせる。10年、そのまた10年と続いていって、縁日を孫の世代にまで手渡したい」と真剣な表情です。
■『あーと屋えまる』の参加
『駄菓子屋よいこ』の隣りに、『
あーと屋えまる』があります。ここは2006年に
東京芸大のOB浅野さんが開いたアートの店です。未来の大画家を予感させる若き画家たちの、瑞々しくかつ鋭気溢れる作品が多数並んでいます。レンタル棚もあり、絵画だけではなく、様々な小物なども並んでいます。
浅野さんは、「工藤さんたちとぼくたちは、お互いに手法は違うけれど、町が楽しく、人が集まればいいなという気持は同じ。ぼくらはアートプロジェクトとして参加」と知的でクールな口調に温かさを滲ませて語ります。

<あーと屋「えまる」Blogは
こちら>
工藤さんは、「縁日がきっかけで、ライブや演劇などもやれそうになってきた。夢が広がってきた」と美しい笑顔を見せました。
■NPO法人 取手ぶるく DATA
代表:工藤悦子
設立:2004年8月25日
所在地:〒302-0004 茨城県取手市取手2丁目9−13
T&F:0297-73-7560(問い合わせは工藤悦子の携帯090-8646-4410)
E-mail:info@torideburg.com
HP:
http://burg.torideburg.com/
会員数:40人
アクセス:取手駅東口(JR常磐線・地下鉄千代田線・関東鉄道常総線)より徒歩3分
■募集情報
募集:縁日の出店を出す人
縁日の場所:取手駅東口前の長禅寺に続くお大師通り
日時:毎月21日 10時から
縁日事務局:駄菓子屋「よいこ」
責任者:工藤悦子
所在地:茨城県取手市取手2-9-10 T&F:0297-74-4374
問い合わせ・申し込み:責任者の工藤悦子の携帯090-8646-4410に
応募資格:出店の規約を守れる成人(品物の持ち込みは無料ですが、テーブル貸し出しなどは有料など詳細は工藤の携帯に)
募集期間:随時
リポーターの独言
私も縁日は大好きです。こどもの頃、縁日の日に浴衣を着せてもらって、お小遣いを握り締め、従姉妹たちに混じって行った時のワクワクは今も忘れません。そんな縁日を復活させて下さった工藤さんはじめ皆さんに、心から敬意を表しつつ、ますます素敵な縁日になっていくことを祈っています♪
雑誌「のんびる」7月号に『NPO法人 取手ぶるく』の記事を掲載しています。
ぜひ見て下さい。雑誌「のんびる」は、このブログの
ホームから申し込むことが出来ます。315円で毎月25日発行です。
(佐々木和恵)