パルシステム生協の食品や生活用品を注文するカタログは、年代や家族構成によって選べるようにいくつか種類がありますが、認知症の夫と二人暮らしの私は、Kinariを利用しています。
週に一回配布されてくるKinariの表紙には、毎回それぞれのテーマの情報記事が掲載されていますが、私はそれをとても楽しみにしています。安全性を第一にするパルシステムならではの野菜、米、添加物など食品に関する内容を中心に、「人」にまつわるあらゆる問題を追い、コンパクトにまとめられた記事は、いぶし銀のような確かな存在感を放っていると感じるのです。
なんと! そのKinariの表紙に、私が登場しました!
10月5回号の『お互いが傷つかない「老いとの共生」をめざして。』に、絵本「
おもいではチョコレートのにおい」の感想をまじえて、認知症の夫を介護する暮らしをお話ししたものが掲載されたのです。
認知症の夫を介護する生活は、それなりに自然体で出来るように工夫をしたり、神経質な面のある自分の考え方を改めたり、そとめからだらしなく見えても、惰性でやっていけるところはそうしていこうと決めて、家事は手を抜くなど、人が思われるほど大変でなくやっていっているつもりでしたが、いざ、取材を受けてお話しすることを考えると、ちょっと気が重くなりました。「介護をする生活」を話すというのは、単に介護を話すだけでは終わらず、それによって炙り出されてくる自分の人生を再認識することだろうと覚えるものがあったからです。
でも、絵本「おもいではチョコレートのにおい」が、会話や物語の展開はユーモラスで、描き方はとてもゆったりとした叙情性があり、読んでいると自分の肩の荷が軽くなるような心地がしたことで、平常心で話しに入っていくことができました。
聞き手の記者の方が心を開いて受け止めて下さるのを感じたことで、なお自由に話が進みました。そして私は、これまで人に一度も言ったことのない、自分の心の底に押し込めていた部分を、炙り出されるまま自然に明かしました。
それは、私は夫と互いに理解しあった幸せな夫婦ではなかった、ということでした。
夫の方は、気持や心の交感などはどうでもよく、自分が仕事をしていくのに家庭が一応の落ち着きをもって保たれていればいい、というようでしたが、私は、人間としてきちんと認めてもらいたい、という思いを強く持っていて、それが満たされない孤独感に苦しんでいました。ですから、夫に対して、そのことの不満と不信を強く感じていて、それと同時に、「今にわかりあえる」「いつか人間対人間として向かい合い認めてもらえる」の願いを切実に抱き続けていたのです。
この願いは、夫が認知症になった時、「とうとうわかり得ないまま遠くにいってしまった・・・」という激しい虚脱感に変わりました。永遠のものになってしまった乾き。私の魂は誰にも愛されず必要とされず、ついに老いさらばえて死んでいくのだ、という恐怖に近い焦燥感。寂しさ。
これらの悲壮になりかねない話を、Kinariはちょうどほどよい現実味と温かさに仕上げてくださっていました。凄いと思いました。なんだかほおぅっと心身のこわばりが抜けていった気がしました。
それはそのまま、自分を表出すること、人の表出したものを自分が書くことの意味と価値を教えられたことでもありました。
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Kinariは本になっています。
食をはじめ、さまざまな役に立つ情報が満載です。人と人生の書物でもあります。本当にお薦めの一冊です。
発行
パルシステム生活協同組合連合会
商品企画部
パルシステム編集部
株式会社ゼネラル・プレス
2007年3月19日発行
電話 03-5976-6123
http://www.pal.or.jp
定価476円(税込 499円)
(佐々木和恵)