今回は「のんびる11月号」に掲載されている「牛久製本同好会」のリポートをお届けします。
私は2年ほど前、「日本中の図書館で、近年本を借りる人のマナーが悪くなり、ページが破られたり落書きされたりした本が増え、困っている」という新聞記事を目にし、印象に残りました。『傷んだ本はどうなるのだろう・・・?』と常々思っていました。
そんな私に8月末、編集室から(ボランティアで図書館の本を修復する活動をしている)「牛久製本同好会」の取材依頼が届きまして、「これは日頃抱いていた疑問を解決するチャンス!」とばかり、喜んで私はその話に飛びつきました。
取材したのは9月3日の水曜日。毎週水曜日の午前中が会の活動日なのです。牛久市立中央図書館の1室で会員の皆さんが本の修復作業をしている現場にお邪魔しました。私が訪問したときは8人が修復作業をしていました。

綴じがバラバラになった本の綴じ直しの作業をする会員さん。
代表の山川輝夫(やまかわ てるお)さんは、「いつもはもっと多いんです。うちはシャイな人が多くて、『取材で写真を撮られるのは恥ずかしい』と早々帰ってしまった人や、休んでしまった人もいるんですよ」と言いつつ笑顔で迎えてくださいました。

ハサミを使ったり、糊をつけた筆を使ったり、黙々と各々の作業に没頭する会員さんたち。本の修復には神経の集中を要する。
山川さんは、本の修復の手を休めず、傷んだ本を見せながら私の質問に丁寧に答えてくださいました。
「近年の本の傷み方はひどいのですか?」との質問に、「そうですねえ。昔には考えられなかった汚し方を目にすることがありますねえ・・・」「例えば、これ」と山川さんが見せてくれた本。
「犬が齧ったあとです」と・・・。「はあ・・・つまり、家の床に放り出して置いたら、家の中で飼っている犬が・・・ということですよね」と私がつぶやくと「そうです」とうなづく山川さん。
本の扱い方も昔と変ってぞんざいになったし、ライフスタイル(犬を家の中で飼うなどの)も変ってきたから・・・という日本人のくらしの背景があるようです。
「クッキーなどの食べものの粉が折り挟まれた本も多いです」ともおっしゃっていました。

「セロハンテープで自分で破損本を直す人もいるんですが、これも困ります。べたつきや黄変が起こりますからね」いろんな事例を話す山川さん。(右横顔)

豪華本の修復もある。この本は裏表紙の扇の貼り絵が破れていた。
「それと・・・」と、山川さんが表情を改めておっしゃったのは「最近の本は綴じかたが安易に出来ているんですよ。製本が悪い。だからすぐに本の姿が崩れるのです」と。

本の背を見せて綴じかたの説明をする山川さん。
・・・なるほど、最近は本を読む側の姿勢もぞんざいなら、製本する側も軽いのか・・・・。大量の出版物が毎日のように発刊され、機械化に便利な「無線綴じ」の廉価版が出回る現代。書籍は消耗品となる傾向にあります。
「良い書籍は消耗品ではない!」と「牛久製本同好会」の人たちは理念を掲げます。
山川さんは昔作られた本と、最近出回っている子供向けの本の綴じかたの違いを、実物を見せながら説明してくださいました。確かに昔の本は背を糸でしっかり綴じてありました。最近の本の多くは糊で貼り付けてあるものが多いことも目のあたりにしました。また、糸綴じの本でも、その糸が弱い糸で細い糸で綴じられている場合が多いそうです。
修理の方法は、いくつかあります。もちろん個々の本の真新しい状態に戻す修復ですから、その本の成り立ちに沿って修復が行われます。糊綴じの本であれば糊綴じに、糸綴じであれば糸で綴じます。犬が齧ったページはその部分を綺麗に切り、欠けた箇所に同質の紙を貼って修復されていました。

「近代の本は紙質もいろいろですね。ビニールをコーティングしたような紙もありますね。そういう本が水に濡れてしまったものを修復するのはとても大変です」と山川さん。
作業机には糸・糊・アイロン・ハサミといった道具がたくさん置かれています。8人が8様にそれぞれの修復をしていらっしゃいます。別の机に載っている重石をする機械を動かしている人もいます。修復成った本は重石をかけて姿形を整えるのです。

牛久市にお住まいの会員の皆さん。自分の書いた本を製本したりもしている。製本の学習会にも出たり、と自己研鑽に熱心。
図書館の蔵書修復に必要な道具類は皆図書館側で用意してくれるとのことです。毎週一度10名ほどが集まり修復作業を行ってもまだまだ修復を待つ本はたくさんあります。「悲しいのは、私達が修復して戻した本がまた修復に回ってきた時です」と、山川さん。
11月3日「文化の日」は牛久中央図書館の「図書館まつり」。「牛久製本同好会」はこの日図書館で、図書館利用者の持参した個人の毀れた本の修復をします。

「図書館まつりには毎年参加していますが、修復成った本を手に瞳を輝かす子ども達や年配の人たち姿を見るのが嬉しいですね」と山川さん。
「牛久製本同好会」の皆さんは本をこよなく愛し、また、文化を伝える縁の下の力持ち的人たちなのだと感じました。
聞けば「牛久製本同好会」のような、図書館蔵書修復のボランティアは各地でいくつか誕生しているとのこと。それは嬉しい。全国の図書館に満遍なくそうした縁の下の力持ちがついて欲しい。そうしたらどんなに地域文化が活き活きすることでしょう!
山川さんの今後の夢は、個人の書籍の修理とその相談にも応じたいということ。今迄も、関東圏内の人たちから個人蔵書に関する相談を受けることは度々ありましたが、「遠方から足を運んでもらうのは大変だ」とお客様を思いやる山川さん。「デジタルカメラやメールを介してヒント助言をさせていただくシステムを構築したい」と夢見ておられるのです。興味のある方、趣旨に賛同される方は山川さんに是非連絡をして下さい。
山川さんのメールアドレスは
yamasan9@olive.ocn.ne.jp
(山本豊美)