5月22日に取材見学させていただいた「NPO法人虹の谷」の「ダンス教室」の続きです。
安田洋次君(仮名)は中学一年生。自閉症です。虹の谷のダンス教室に通ってくるようになったのは1年前。自分で踊ることは出来ないけれど「雰囲気だけでも味わわせてあげたい」とお母さんが連れてきました。
虹の谷スタッフの田中さんらが洋次君の背後に立って介助しながらダンスの輪に。
始めた頃は全く動かず、洋次君の手を上に上げたりする動作を介助したスタッフは洋次君の手の重さに、「ダンス教室のあとはぐったり疲れた」そうです。でもお母さんと洋次君は毎月第4火曜日、1時間のこのダンス教室に通い続けました。そして1年が経過し・・・。
最近、洋次君のお母さんが言いました。「洋次、すごく楽しいらしいです!」と。
知らない私などから見れば、表情の変化に乏しい洋次君の顔。でも毎日洋次君を見ているお母さんには、ダンス教室をすごく楽しんでいる洋次君の表情が見えるのです。

洋次君(仮名)も踊りの輪の中に
田中さんも最近洋次君の手の重さがあまり感じられなくなってきたことに気づきました。洋次君の中に、自分で手を上げ下げしようという意思が出てきたのです。
お母さんが洋次君の変化に気づいたことの中でも一番大きな発見は「私の目を見て笑うようになった」ということです。それは「人とコンタクトが取れるようになった」ことを意味します。

ペアで踊るダンスでは人と人の関係性が体得される。
22日に「虹の谷」の早川代表から伺った「ダンス教室」の目的、「自分をコントロールできる」「人と人との関係性を作る」のうち、洋次君の上に現れた変化は間違いなく「人との関係性を作る」ことだったのです。
一年で、12回、12時間で、こうした変化が現れるなんて!
田中さんは更に、「このダンス教室は、洋次君にとって『受け入れられている』と感じられる雰囲気があったことも、影響したのでしょう」と考察します。確かにダンスの最中、洋次君が突然奇声を上げても、誰もいやな顔をしません。子供たちは皆、踊ることに夢中だし、見守るお母さんたちもゆったりとした表情で座っています。
ダンスの指導をする野村慶子先生は、ご自身が片方の耳に聴覚障害がある、ということを明るい目をくりくりさせてごく当たり前のようにおっしゃいました。
先生の中に健常者に対するときと障がい者に対するときとの構えの違いはないのが感じられました。
6月3日、この日は虹の谷の「ファーム教室」を取材する予定でした。が、私の方に急用が出来、取材できませんでした。でも、その夜、ダンス教室で子供たちの介助をされていた田中さんからお話を伺うことが出来ました。
「ファーム教室」でも、障害を持った子供たちが周囲の人との関係性の中で成長していっていることがわかりました。そのお話は「のんびる8月号」に書きますので、ここでは割愛させていただきます。
田中さんは甲府市で活動している「若葉教室」の主催者でもあります。「若葉教室」にも障がいのある子供たちが通ってきて自己表現力や創造性を身につける訓練を受けます。またお母さんからの相談や心のケアもしています。「虹の谷」の組織体の中に含まれているのではありませんが、「若葉教室」に通っていた子が大きくなって「虹の谷」に通うようになったり、深いつながりを持っています。

音楽療法で子供たちの自己コントロールを試みる田中さん。使う楽器は「ライヤー」。「子供たちにはピアノの音は強すぎるのです。ライヤーの響きが子供たちに浸透していきやすいと思います」と田中さん。
「虹の谷」を「ダンス教室」を皮切りに取材し始めて、「若葉教室」に出会ったり、障害のある子供たちの自立支援のネットが張られているのを知ったことはうれしい発見でした。「虹の谷」が今後更に活躍の場を広げていくことを期待しつつ、今回の報告といたします。(山本豊美)