1、織の道にいざなわれて
ふとした時に思い出す事があります。今から30年余り前の
こと。ニート、フリーター対策が叫ばれるこの頃、彼等彼女
等の心情を察する時に、真っ暗な明かりの見えない闇の中で
次なる仕事を捜しあぐねていた頃の自分の姿が重なります。
新卒の私が社会人としての第一歩を記したのは児童館。地域 の子供達との日々はそれは楽しく、幼児から「セン公ぶっ飛 ばしてえ!」と叫ぶ中学生までを相手に、下町の人情にドッ
プリ漬かり地域に開かれた児童館を地で行っていたのです。
が、お役所仕事に変わりなく、想いと現実のギャップに健康 を害し病休に入り、そして退職。
休暇中に陶芸、染織の現場に赴き技を覚えながら次なる仕事 を捜し続けた日々。20代半ばの出口の見えないトンネルの 中で、やっと出会えた「ホームスパン」という英国の手紡ぎ 手織りの毛織物。越後上布、絹織物の産地に生まれ育った私 に、思い出の中に息衝く和の布とは異なる英国紳士の雰囲気 漂うツイードの服地を手仕事で創り出す工房の内弟子入門が 許されたのです。先生御夫妻の下に学ぶ、5人の弟子仲間と の輝ける(?)一時代を記してみようと思います。
(矢口 峰子)