〜もっと優しい旅への勉強会〜
「もっと優しい旅への勉強会
」(http://www.yasashiitabi.net/)が主催する『車椅子ユーザーの旅を考える〜行けるところから行きたいところへ〜』と題するフォーラムが開かれました。会場は新宿区戸山の戸山サンライズ(全国身体障害者総合福祉センター)です。
今日の参加者は34名。車椅子での参加者も8〜9人見込まれたので、会場の設営もそれにあわせて10人位は車椅子のまま座れるような高めの机が用意されました。受付時間の1時ごろには続々と参加者が集まり始めました。ほとんどの方々が顔馴染みのようではじめから和気藹々とした雰囲気です。
冨吉さん(旅行会社勤務)のよどみない司会で始まりました。本会の代表黒嵜さん(車椅子ユーザー・プログラムには『無敵の弁護士』との肩書きが!)の開会の挨拶。会場の前方には既に6人のパネリストがひかえてます。
最初の発言者は勝矢光信さん。勝矢さんは昨年急逝された本会元代表の草薙威一郎さんと旅の実践をされ、草薙さんと共著で当事者の視点から観光振興や観光交流に対する提言のための論文を書かれた方です。レクレーションの究極は旅であるとの思いから、車椅子で旅行をするのは大冒険と考えられた十数年も前から旅行をしていらした勝矢さんは、最初は奥様に頼りっきりだったそうです。奥様一人では負担が多いと知って、ボランティアに頼ったりしているうちに、時代が進み、社協、障がい者団体、旅行社、旅行関連学校、自立ホームなどの多くの人との交流が行われるようになり法整備も徐々に進み、全体的な制度も少しずつ確立されつつあるようだといわれます。バリアフリー旅行の歴史を切り開いてきた人たちの記録や体験がこれからの歴史を更に開くことになるでしょうというお話をされました。これまでは車椅子中心の情報になりがちだったけれど、旅行障害をもっと広い意味で捉える時期になり、高齢化社会を迎える今、どうやって充実した生き方が出来るかを世界的な視野で考え連携していく必要があるといわれました。旅をすることで体力にも自信を持ち、好奇心が満たされ心が広くなって人生が豊かになって、よかった、感謝しているとおっしゃる勝矢さんの車椅子ユーザーの視点からのお話はまさしくバリアフリーの旅の総括のようでした。
次のパネリストは『飛行機の達人』と司会者に紹介された重岡利栄子さんです。車椅子ではるばる福岡から駆けつけられた快活なお嬢さんです。東京まで夜間高速バスも新幹線もあるけれど飛行機が一番楽とのことです。昨年秋から福岡の自宅から空港までの高速バスの使い勝手がよくなったので、飛行機が今までにもまして便利になったと朗らかに言われます。2〜3年に一度は海外旅行にもいかれるとか。2000年に草薙さんからバリ島へ誘われ、以来大好きになって去年暮れにまた行かれたそうです。去年からお遍路さんにも行っているといわれます。「車椅子でゆったりお遍路をしていると自分を見つめなおすことが出来て元気になります。」とまあるい目をクルッとお茶目に動かしました。そのお遍路の美しい写真集も見せていただきました。(社会福祉法人東京コロニー職能開発室
http://www.tocolo.or.jp/syokunou/発刊:デザイン・編集分野で就労を目指している障害のある人たちによって作られたもので、写真一枚一枚が非常に美しくて、読者に訴えたいものを沢山持っている気がしました。)
次は曽根原純さんのお話です。曽根原さんはこの会の副代表であり、分科会の『学び隊』の隊長でもあります。金融機関に勤務して翻訳の仕事をしておられます。今日の副題の『行かれるところから、行きたいところへ』をご自身電動車いすで実践されたレポートをパソコンの音声合成を使って発表されました。
以前、勉強会の北海道旅行で出来なかった鉄道に乗ることと渡辺淳一文学館をたずねることを今回は一人旅で実行しようというわけです。
曽根原さんにとって介助なしの宿泊を伴う一人旅はこれが初めてでした。スケジュールは草薙さんに見ていただいたところ、「ゆったりしていてよい、札幌と函館市内の移動はタクシーを出来るだけ使うように。」とのアドバイスもいただけました。飛行機の旅は初めてではないので搭乗前の時間配分や車椅子の預け方などは問題なく、ホテルもバリアフリールームよりも曽根原さんにとっては使い勝手のよいシングルルームをネットで予約したりと、まさにここにもまた『旅の達人』がいました。念願の渡辺淳一文学館にもいけて、札幌市内をお友達と食事をする場所まで電動車いすを走らせたりとすばらしい動きです。曽根原さんは『行きたいところへ』行けたのです。曽根原さんは旅の目的を『日常から離れること』といわれます。そうです。旅は『非日常』の世界を提供してくれるので誰もが旅が好きだし、旅をしたいのです。そして行きたいところへ行きたいのです。曽根原さんは初の一人旅に成功なさいました。その間に草薙さんの急逝という思いがけない出来事がありましたが、初の一人旅の成功は草薙さんへの『恩返し』になったのではないかと結んでいらっしゃいます。
パソコンの音声合成も実に明瞭で科学の進歩を改めて感じました。傍らで於保真理さんが聴覚障がいの方々のためにパソコンの要約筆記を見事にしていらしたのにも感銘しました。
後の三人のパネリストの方々、秋元昭臣さん(元ホテル勤務、『宿泊サービスの鉄人』:「宿泊の観点から見たバリアフリー」)、室井孝王さん(副代表、旅行会社勤務、『旅行案内の鉄人』:「お手伝いが必要なお客様へのご案内〜ユニバーサルデザインの心を〜」)井上寛さん(大学院博士課程在学中、障害者旅行『研究、実践のホープ』)が、それぞれ、お仕事を通して得られた貴重な見解を述べられました。井上さんは、曽根原さんの北海道旅行とほぼ同じ時期に、勝矢さんと一緒に旅行をし、その中で元のハンセン氏病療養所を訪ねたときのことにも触れられました。旅行にかかわる仕事に従事していらっしゃる多くの方々が真剣に一生懸命にユニバーサルデザイン、バリアフリーに取り組んでいらっしゃることに改めて感銘を受けました。ここで詳しくご報告できないのが残念です。お許しください。
このフォーラムに参加し、頭の中でぼんやりと考えてはいてもなかなか形にならなかったものが、いまやっと私の頭の中でも具体的な姿を現してきた気がします。
旅は何か特別なものを与えてくれます。ですから高齢の方も障がいのある方もみんな同じように旅を楽しむことが出来れば、きっと生きる力を充電することが出来ると思います。私もご一緒に楽しんで、自分も生きる喜びを得たいので、そのためには具体的にこれからどんなことを学んだらいいか、大げさでなく、私のライフワークのつもりで勉強していきたいと思います。
(徳重 富士子)