産業遺産を核に「まちづくり」を
共楽館は1917年に日立鉱山の従業員のために福利厚生施設として建設された芝居小屋です。歌舞伎・映画・展覧会・講演会・大相撲の地方巡業などあらゆる催し物に対応したマルチホールだった1941年、1942年には羽左衛門、六代目菊五郎が来て4,000人もの人が見に来たそうです。1967年に日立鉱山が日立市に寄贈したのをきっかけに日立市は舞台・花道・桟敷を撤去して武道館に変えました。22m×28mのきれいに磨かれた板張りの道場の上を仰ぎ見ると見事な格天井です。この広さでありながら柱一本ありません。鉄パイプを使った吊り天井だからです。
建物を外から見ると正面は2階建ての唐破風、屋根には千鳥破風を備えたべんがら色の左右対称の美しい建造物。日立鉱山の技師が設計・施工したため鉱山特有の技法が随所に見られるといいます。文化庁の登録有形文化財の指定を受けていますが、2005年の耐震調査の結果、2006年から使用中止となって見学だけが許されています。
この見事な芝居小屋を自然に任せて朽ちさせていってよいものだろうかと考える人たちが集まって1993年に『NPO法人共楽館を考える集い』が設立されました。単なる共楽館の保存にとどまらず、鉱工業の町として発展した日立市の原点である産業遺産を「まちづくり」に繋げる運動にしようとしています。その核を「共楽館」とし、市民による保存運動を開始しました。三年前から産業遺産ガイド講座を開始し、専門家を招いて研修会を開いたり、日立鉱山の産業遺産の見学を行ったりと、運動も具体化しはじめています。
共楽館そのものの復元計画は予算が大きな壁となって、まだ具体化していませんが、市民が自分たちの町の原点である産業遺産を「まちづくり」につなげようという気概は、全国の町並み保存の動きとも重なり大きなうねりとなることが期待されています。
取材に応じてくれた常務理事・事務局長の市毛環さんは元高校の歴史の先生。共楽館や日立鉱山の歴史について話してくださる時の目の輝きはあたかもわが子を慈しむかのよう。生まれ育ったふるさと日立への深い思いがひしひしと感じられます。全国町並み保存連盟の理事・事務局長をも務めていらっしゃるので、視野が日立市だけにとどまらず大きく開けていらっしゃるのです。
活動会員の佐藤弘子さんも日立市の生まれで、ご自分の町をとても大切にしていらっしゃて活発?活動していらっしゃいます。特にこどもたちに自分たちの町のすばらしさを感じて人とかかわりあいながら心豊かに育ってほしいと願っています。10月26日(日)10:00-15:00会計市が行われます。最盛期には8000人もいたという日立鉱山の従業員たちが楽しんだ昔の給料日の会計市を偲び、露天を出して子供のお囃子などでこども達にもふるさとの昔から伝わる自分たちのルーツを肌で感じてもらいたいと企画実施していらっしゃいます。東京在住で、ご両親が日立市の方なので、自分たちのルーツを見極めたいと見学会や会計市のときにここを訪れる方もあるとのこと。故郷を持ち愛して大切にできるってすばらしいですね。
(「のんびる」10月号掲載中) (徳重 富士子)
<お知らせと募集>
■募集内容■ 10月2日(木)9:00-16:00見学会参加者募集 (小型バス利用)
■場所■共楽館を集合場所とし、茨城県日立市・高萩市・北茨城市・常陸太田市に点在する発電所、変電所の見学
■内容■ 産業遺産ガイド講座の一環として、日立のルーツを探る。
■参加費■ 2,000円(交通費・資料代・保険を含む。昼食は個人負担)
■問い合わせ■ NPO法人『共楽館を考える集い』事務局 市毛環
【TEL:0294−21−4884】
■応募方法■ 事務局宛にファクスで申し込む。【FAX:0294−21−4883】
■その他■ 10月26日(日)10:00-15:00会計市(日立鉱山の従業員たちが
楽しんだという昔の給料日の会計市を偲び露天を出して子供のお囃子などでにぎやかなお祭り気分を。)