「NPO法人 生活支援ネットワーク こもれび」の活動(1)
JR常磐線勝田駅で降りて、車で街中を抜けるとまもなく畑と人家の混在する農村地区。その中で車が20台ほど入る駐車場が目にとまりました。その脇の店舗兼住宅の入り口の看板に「生活支援ネットワーク こもれび」とあります。ここがNPO法人生活支援ネットワーク『こもれび』です。
店舗部分を改造して事務所としている部屋でちょうどミーティングが終わるところ。「こもれび」代表の楳田さん(30代)がこれからそれぞれの出勤場所へ向かうヘルパーさんたちに業務内容の確認をしています。てきぱきと指示を終えた楳田さん、「じゃ、ご苦労様です。行ってらっしゃい!」と笑顔でみんなを送り出しました。
楳田さんは、福祉系の大学卒業後、高齢者向けの公的福祉施設の常勤の介護職員として働いていましたが、働いているうちに、「なんかへんだな、ちょっと違う気がする。」という疑問がわいてきたといいます。志を同じくする仲間6人と話し合い、自分たちの考えている福祉活動をしようと、平成13年(2001年)に現在の大島事業所となっている民家を借り上げて知的障がい児の学童保育活動「みらくる」を始めました。その後、学童保育だけでなく、家に引きこもって外に出る機会のない大人の知的障がい者のデイサービスをするデイホーム「はっぴー」を平成16年に現在の津田事業所につくり、そのほかにも高齢者の在宅介護、家事・子育て支援、通院・買い物等の移送サービスと、次々に活動を広げていきました。
「『住み慣れた地域の中で、自分らしく、あたりまえの生き方をしたい。』と願うすべての人が自らの力で生活することへの支援を行いたいのです。単に『物』を提供するだけでなく、相手の『心』に届けることのできるものが何かを念頭におきながら、顔の見える、心が通じ合う、笑顔いっぱいのまちづくりを目指しています。」という楳田さんの言葉が活動への思いすべてを語っています。
もともと、日立製作所の城下町といわれ、人口の85%は何らかの形で日立関連の仕事をしていますが、地方都市にありがちなシャッター街がこのひたちなか市にも出現しています。そのため、市民の中から、自分たちの力で町づくりをしようという機運が生まれてきました。代表の楳田さんも町づくりを自分たちの手でという気持ちで、お年寄り、知的障がい児(者)、子育て支援と地域に暮らす人がみんな笑顔で暮らせるようにとがんばっているのです。
楳田さんたちが活動しているうちに利用者の中からさまざまな声が聞こえてきました。もっとも強い要望の一つがお年寄りが病院へ行ったり、買い物に行くのに足(交通機関)がないから何とかしてもらえないだろうかというものでした。都会と違ってたよれる公共交通機関がないので市民たちはみんな自分の車を使って移動しています。しかし、運転できない高齢者は、非常に不自由な思いをしなければなりません。そこで楳田さんは考えました、高齢者の足になろうと。
最初の三ヶ月間は、一般車を使ってまったくの無償で活動しました。でも、利用者が何か形でお返ししたいという精神的な負担が大きくなっているのを知りました。かつて障害児の親御さんがヘルパーの資格を取って「子供がお世話になっている分を、これで少しはお返しできる。」と晴れ晴れとした笑顔で語っていたことがあったそうです。与えるばかりの立場と与えられる(やってもらう)ばかりの立場では、対等にはなれないと「利用者から教えられて」(楳田さん)有償に切り替えました。「こもれび」には公用車として5台の軽タイプ車がありますが(一台だけは自力で購入、後は日本財団や24時間テレビの寄付)これだけでは要望にこたえるには不十分です。
千葉県流山市の「流山ユー・アイネット」の先例もあったりして、陸運局から「福祉有償運送許可」を取って一般車(白ナンバー)を使っての移送サービスが可能になりました。
楳田さんが、「山本さんをご紹介します。まもなく移送サービスに出かけますけど、その前に。」と言って、60代の男性に引き合わせてくれました。山本さんもご他聞に漏れず“城下町”のお城日立に勤務していましたが、定年前から土・日の講習会で学んでヘルパー二級の資格を取り退職後5年前から「こもれび」で居宅介護、デイサービス等にヘルパーとして従事、今はデイサービスの施設長としての重責を担っています。と同時に移送事業が始まってからはドライバーとしても引っ張りだこ。利用者は顔なじみになった山本さんを指名し、病院に買い物にと忙しい毎日を過ごしています。奥様は山本さんが資格を取る前からヘルパーとして活躍していたので、「今自分が同じ仕事をするようになってから、大変さが理解できるようになりました。」と言います。鳥取出身の山本さんは、土地の人間でないことで初めはお年寄りとの間に距離を感じていましたが、車を運転しながら勝田の昔の話や世間話をしているうちに、次第にここが自分の生まれ育った土地のような愛着を感じ始めたそうです。と同時にお年寄りとの間の垣根も取れて、利用者は顔なじみになった山本さんを指名し始めました。今では女性を含めて7人のドライバーが皆、山本さんのようにお年寄りから、息子や娘、孫のように“可愛がられて”大忙しの毎日です。
そこに電話が入ります。「承知しました。すぐお迎えに行きますよ。」と山本さんは立ち上がります。利用者さんが病院の診察が終わったから迎えに来てほしいとの連絡でした。「いってらっしゃい!」
(徳重 富士子)
(現在、「のんびる」10月号で紹介中)
<お出かけサービスドライバー募集>
移送サービスのドライバー(有償:距離と時間による)。普通運転免許証。病院、買い物などの際に車で送り迎え。運転講習をします。(費用はこもれび負担)
連絡先:NPO法人 生活支援ネットワーク こもれび 津田事業所
所在地: ひたちなか市津田2031-797(〒312-0032)
Tel/Fax: 029-273-8897
HP: http://www.npo-komorebi.jp/
E-mail : komorebi@support.email.ne.jp