ロゴス点字図書館映画会
マイ・フレンド・メモリー
二十数年来の付き合いのIさん(67歳)は光だけが分かる視覚障害者です。とても自立心がある人で、健常者のご主人との間に男の子を一人持ち、彼も立派に成人して結婚し、お孫さんも二人になりました。ご主人は若いときの無理がたたって、今は具合が悪くなられ、ホームで療養中です。Iさんの希望で息子さんとは同居せず、一人で暮らしています。彼女は高校を卒業する間際に薬の副作用の為18歳で失明しました。大変な努力家で、点字、鍼灸を初めさまざまな勉強を重ねてそれらを見事にマスターしてきました。そのIさんを誘って映画を見に行きました。
ロゴス(旧カトリック)点字図書館主催で視覚障害者用音声ガイド付きと知ったからです。映画は99年に作られた「マイ・フレンド・メモリー(The Mighty)。」視覚障害者用音声ガイドそのものを私は知りませんでした。視覚障害者が果たして映画を楽しめるのかしらと思いつつも、Iさんに少しでも楽しい思いをしてもらえるものならと思いたったのです。
会場はZERO大ホール。中野駅の改札をでると点字図書館の腕章をしたボランティアの人たちが道案内をしていました。一人で来た白杖の若者が戸惑っているふうだったので、映画会ならご一緒しましょうと声をかけ、結局三人で歩いていきました。二人の視覚障害者は、瞬く間に打ち解けて話が弾み、情報交換をしているうちに会場に到着。時間的な余裕を持ってきたのですがかなり満員に近い盛況ぶり。今日は白杖を持ったお客様の多いこと。入り口で、Iさん用にポケットラジオの大きさの音声ガイド機器とイヤホンを借りました。FMラジオなら自分のものでもよいとのことで、先ほどの若者(Hさん)は持参したラジオを使うといいます。
映画は大きな体格をしているが内向的で学習障害児の少年マックスと、隣に越してきた骨の成長が阻害される難病の賢い少年ケビンの友情物語です。それまで友と呼べる人とめぐり合えなかった二人の少年が、一体となったとき無敵の存在となります。自分の価値を見出し始めたマックスでしたが、ケビンの身体は限界に近づいていきます・・・本当に心洗われる映画でした。私の隣で見ていた二人に途中で分かりますかと聞いたら、二人とも深くうなずいています。
終了後、二人に聞いたら場面の説明と登場人物のせりふとが別々のナレーターの声で入っているそうです。テレビの副音声よりも場面の描写が詳しくて、映画を見ているように想像できるといいます。H君はさすが若者、時々映画を見ているそうですが、友人のIさんは15歳のとき見たっきりで、50年ぶりと本当に感激していました。中途失明の彼女は色を知っているので場面がカラー映画のように感じられたといいます。(実際カラーだったのですが。)
会場の出口でロゴス点字図書館の高橋館長にご挨拶しIさんは50年ぶりの映画だったとお礼を言っておりました。その後比較的若いお嬢さん方のグループをナレーションを作った方々と紹介されました。Iさんが情景が目に見えたとお礼を言ったら、この方たちもとても喜んでいらっしゃいました。
この夜は私にとってもとても充実した幸せな夜でした。障害を持つ人たちでもこんなふうに楽しめる機会はあるということを改めて知り、非常にうれしかったです。機械文明が高度に進むと人間の心を壊すという考え方もありますが、機械文明が発達したおかげで、今夜のように心の目で映画を見られる人たちがいるのだというのも事実です。人間の英知は正しく使われれば限りなく可能性は広がるのですね!
[ご参考]
音声ガイド付き映画会や演劇の公演は不定期に行われますので、下記HPのお知らせ欄をご参照ください。
日本点字図書館
http://www.nittento.or.jp/
東京ヘレンケラー協会
http://www.thka.jp/
ロゴス点字図書館
http://www.ncawb.org/osirase.html
(徳重 富士子)