先週、『印旛野菜いかだの会』を取材しました。非常にユニークかつ貴重な活動なのでここでご紹介いたします。
印旛沼は『水道水源の湖沼水質、全国ワーストN0.1』の不名誉な評価を受けて久しくなります。印旛沼の流域に住む74万人だけでなく水道水として印旛沼の水を利用している140万人の市民の健康が危ぶまれる状況を憂いて立ち上がった市民グループ。それが、
『印旛野菜いかだの会』なのです。
印旛沼農業用水路に浮かべたいかだで野菜の水耕栽培をしています。これが水の浄化に大いに有効なのです。
陶芸家の美島康男(みしま やすお)氏(66歳)は地域新聞の知り合いから水質浄化のための野菜いかだの話をたまたま、絵画と陶芸の展覧会の後のパーティーで聞きました。
中国野菜の空芯菜を「いかだ」で水耕栽培すると水中に長い根が張り、その根が水中の窒素・リンを養分として吸収して育つ、それによって水中の富栄養分が除去され水質浄化につながるというものです。「これをやろう!」と美島さんのもとに仲間たちが集まりました。2000年5月のことでした。
理事長に推された美島さんは、印旛沼土地改良区組合から許可を受けて印旛沼の西沼脇農業用水路を借りていかだを組みました。「木のいかだと竹かごに空芯菜を育てる方法は、すぐ腐ったり、台風が来ると流されたりと試行錯誤の連続でした。アルミいかだを開発し軽量化と耐久力に成功、現場で組み立てられるので効率がよくなりました。」と美島さん。冬場は空芯菜に代えてハーブとクレソンの栽培。当初水深10センチ程度しかなかった透明度が現在は50センチとなり、水草のマツモも増え始めました。行政のみならず、民間企業も注目し、助成金も。「“生き物がはぐくむ水辺がほしい。”すべてはそこからはじまったのです。今では近隣の人たちがどぶくさい臭いがなくなったといってます。うれしいですね。七年目にしてやっと軌道に乗ったかなという感じです。」と美島さんは感慨深げな面持ちで語られます。
京成本線京成臼井駅北口から印旛沼へ向かって車で7〜8分、船渡大橋のたもとを河川敷へ下ります。ここに車を置いて作業小屋へ。作業責任者の村田さん(66歳)と作業会員の実川さん(64歳)が待っていてくださいました。作業小屋には小さな台所も用意されています。「真夏は炎天下の作業になるので休憩できる小屋が必要なんです。ボランティアの女性に作ってもらうお昼ごはんはみんなの楽しみでもあります。お昼ごはん作りのボランティアの女性も大募集してます!」とのこと。
早速、小屋から100メートル足らずのところにある農業用水路の現場に連れて行ってもらいました。約10メートル幅の大きな用水路の真ん中に一基四畳半の大きさの野菜いかだが三基つながれて浮かんでいます。たたみ半畳ぐらいの小型いかだを綱で手繰りながら乗り移ります。ぐらぐらとなかなかスリルがあります。
この活動を高く評価している民間企業の寄付で来週はこれがもう一基増えると美島さんはニコニコ顔。空芯菜はもう残り少なくなって白い夕顔のような可愛い花がさいています。「空芯菜は、この花が咲くと今年はもうお終いということなんですよ。」と美島さんが教えてくれました。作業責任者の村田さんは「冬場は空芯菜に代えて、クレソンとペパーミントを植えてます。どんどんつむと次々出てくるんですよ。」と言いながら、たくさん摘んでお土産に下さいました。「わー、うれしい!」とリポーターは大喜び。
いかだの上で野菜のかごを持ち上げて見せてくれました。なんと50〜60センチもの長い根。これが窒素やリンを吸い取ってるのです。しかも立派な食材になります。残留農薬、環境ホルモン、重金属等の検査をしていますが何も問題ないそうです。
二枚貝が有機浮遊物質を吸収し透明度を高める効果があるとのことで最近はいかだの下にしじみと池蝶貝(淡水真珠)のかごを下げて実験。「沢山の人に手伝ってもらえれば野菜栽培や淡水真珠養殖の事業化も夢ではありません。」と美島さんは言われます。
岸辺に戻ると道路を隔てたもう一方の用水路へ。ここには木のいかだが組んであります。
メタルよりは板が広くて安定がよいようです。近くの千葉市立柏井小学校では総合学習の時間に環境学習として80時間のカリキュラムを組んで「水の浄化活動を通して、自然を大切にする心を養う場にしています。時に、魚つり大会のイベントなどもするので、子供たちの安全を考えて、広い板を使用しています。」(美島さん)とのこと。
いかだの先端に白鷺が一羽止まっています。「小魚を狙っているんですよ。」と村田さん。その美しい姿にしばし見とれました。いかだの周りにはメダカ、川エビ、タナゴ、フナなどが戻ってきているのです。休日には、釣り人の姿も多いそうです。さかなが戻って来てからは、鳥も来るようになったとのこと。まさしく自然の仕組みの妙です。その自然を人間の手で壊してきたのですから、責任もって回復しなければ・・・。
土手の上にはサイクリング道路。マラソンの高橋尚子選手がここでトレーニングをしていたそうです。最寄り駅からは徒歩30分ほどあるので、作業に来る人は車で来ます。「私はこのサイクリング道路を6キロ、自転車で走ってきますよ。いい運動です。」と実川さん。
印旛沼の富栄養化は、農業排水で農薬が流れ込んでいるのと生活排水とが原因です。流域の農業者にも協力を仰いで、農薬使用を極力押さえてもらい、除草剤を使わずに出来るだけ刈り取ってほしいと申し入れをしているところですが、人手の問題もあるので、雑草の刈り取りのボランティアも必要だと美島氏は言います。PTAや中学生たちにも協力してもらうこともあるとのこと。県はこの用水路沿いを公園にして市民の憩いの場にしようと計画しているので、出来るだけ自然を生かした形になるよう、協力していくつもりだと美島氏は言っておられます。
『とりもどそう、きれいな印旛沼を!』を合言葉に、みなさんお手伝いくださいませんか?!
(徳重 富士子)
<DATA>
『印旛野菜いかだの会』
事務局:千葉県佐倉市上志津1823-8
(〒285-0846)
TEL&FAX: 043-488-2515
HP URL:
http://www.catv296.ne.jp/~ikada/
活動場所:千葉県佐倉市臼井田船渡大橋脇西沼農業用水路
アクセス:京成本線京成臼井駅北口下車 徒歩30分
車でこられる方は河川敷に駐車場所あり。
創設:2000年5月 / NPO法人化 2001年10月
理事長:美島康男
年齢性別不問。夏は空芯菜、冬はハーブ・クレソンの水耕栽培。小学生の
環境教育用の木製いかだ・竹かごの手入れ、用水路の清掃、二枚貝の繁殖
状況調査等、一年中さまざまな活動あり。
活動日の昼食の用意をしてくれる女性も大歓迎。
■支給されるもの■
現時点ではすべて無償ボランティア。将来的には、行政からの支援で小遣
い程度は支給できることを目標にしている。
■活動日時■
毎週水曜日・土曜日の10時〜14時
ただし、可能なときだけの参加でも歓迎。
■問い合わせ先■
直接、美島康男理事長の携帯へ。
美島理事長携帯: 090-2942-5445