この秋はあまりの忙しさに心が騒がしく、(忙しいとは心が滅びると書くとよく言いますものね。)少し仕事から離れれば落ち着くかと、中高時代の友人たちに誘われたのをいいことに、ヨーロッパに行ってきました。主人が元気だったころは主人ともよく一緒に出かけたものでしたが、久しぶりの海外旅行です。
友人4人とその中の一人の母上との合計6人の旅です。このお母様は、非常にお元気で私たちが旅行するときにはほとんどご一緒なさいます。旅の途中で88歳の米寿を迎えられ皆でお祝いをしました。日本の観光地と海外の観光地についての、バリアフリーの観点から私見ですが、感想を書かせていただきます。
88歳のYさん(写真左)は飛行機だけは楽に行きたいとビジネスクラス、私たちは格安航空券なので、後部座席のシート指定もままならないところ。12時間窮屈な思いはやっぱりしんどいですね。Yさんみたいに余裕があれば良いけど、ビジネスに乗るくらいなら後二回は旅行できると思うと考えてしまいます。私たちのようにツアーに乗らない個人旅行は、せめて、航空会社の超早割りにでもすればもう少し、シート選択の自由があったかもというのがまず最初の反省でした。それには早くから計画せねばなりません。若いときのように思い立ったらというのではなく、年をとってからの計画はたっぷりと時間をかけること!という反省です。
出発二日前まで、仕事で大童でしたのでフィレンツェでどうするかは他の5人が主導権を握って決めていました。みんなフィレンツェは二度三度行っているので、市内は自由行動にして日帰りでボローニャとピサ・プッチーニの生家のあるルッカに行くことになりました。ホテルも友人たちの趣味で大型ホテルを避けてクラシックなこじんまりとしたところをインターネットで取りました。まあ、雰囲気重視でしたからどうしても機能的には劣ります。エレベーターに乗るにしても部屋の中でさえも階段だらけです。ボーイさんもあまりいませんからトランクを運んでもらうのも時間がかかります。バリアフリーには程遠いです。
フィレンツェとその近郊
フィレンツェの町は昔のまま石畳の道なので、でこぼこしてハイヒールのお嬢さんは大変でしょうね。私は出発二週間前に捻挫をしていたのでかなり足に響きました。88歳のYさんは足腰もお丈夫ですが、美しい教会の尖塔に見とれているうちにつまずいて転び、目の脇にうちみを作られました。骨がどうもなくてみんなほっとしました。日ごろヨガで鍛えておられるのでこの程度で済んだのかもしれません。
歴史的建造物の保全とバリアフリーは相容れにくいのでしょうね。日本のように街の中には点字ブロックも見当たりません。そういえば視覚障害者も車椅子の人も町でまったく出会いませんでした。観光地であるにしても生活の場も歩いてみましたが、本当に会いませんでした。私は今まで、日本の観光地があまりにもバリアフリー化が出来てないと義憤を感じていましたが、これはとんでもない間違いだったかもと思うようになりました。少なくとも、フィレンツェ、ボローニア、ピサ、ルッカのバリアフリー化はまったくといってよいほど見られませんでした。
移動に特急列車も利用しましたが、びっくりするほどホームから列車へのステップが高くて車椅子の人はどうするのかと疑問でした。
駅の階段も古い石作りでエスカレーターなんてありません。
駅員さんにエレベーターは?ときいても英語は通じない。時間を見つけてインフォメーションへ駆け込んで聞いたら、ホームの奥を指差してあるよといいました。トイレのことは次回にまとめて書きますが、車椅子用トイレなんて探すのは至難の業です。一昔前の日本の観光地のようでした。
もしかして、公共の施設に関しては日本のバリアフリーの方が進んでいるのだというのが、私の感想です。認識を新たにし、もう一度各国の状況を調べなおさなければと思います。
ルルド
フィレンツェで4泊した後、友人たちはみんなパリへ行き、私はルルドへの一人旅をしました。ルルドというのは、スペインとの国境のピレネー山脈のふもとにあるカトリックの聖地です。
約150年前に地元の貧しい粉引き屋の娘ベルナデッタが薪拾いをしていたときにマリア様が現れ、泉が湧き出し、その水が病人を癒す奇跡を引き起こすというので、以来、世界でももっとも有名な聖地巡礼の場のひとつとして数えられています。
パリからTGV(新幹線)で5時間半かかりました。でもフランスの田園風景には心癒され、ルルドに近づくとピレネー山脈の一部まで見え始め、5時間半はあっという間でした。(新大阪から広島へ行く山陽新幹線のようなトンネルはありません。)TGVはさすがにイタリアの特急よりは日本の新幹線に近い機能を持っています。
ルルドの駅に降り立ったらホームで車椅子のグループに会いました。ここから聖地まではタクシーで20分強。普通のホテルもありますがここでの私の宿はスペイン系修道院。日本で言えばお寺の宿坊のようなものです。本当に簡素です。10月でシーズンが終わって宿泊客も4〜5人。杖をついている人もいました。
ルルドでの足掛け三日は、シーズンから外れていたおかげで実に静かで心休まる日々でした。人間たまには孤独になるのも必要かもしれないと思いました。
身体を心を癒したいと奇跡を求めて世界中から人が集まるので、それはそれはバリアフリーがよく整っていました。高い丘の上まで、スロープが整えられ、ゆっくりと時間さえかければ、杖をついていても車椅子でも登れます。
障害者のための休憩所も準備され、もちろん車椅子用トイレもあります。聖地に湧き出る泉の水を味わい、それがピレネー山脈から流れ出る水と合流して川底まで透き通って見える流れとなっているのを眺めて時が経つのを忘れました。
パリまでの帰りは飛行機で1時間半、パリ滞在していた友人たちと合流して、帰国しました。今回、パリは通過地点でしたのでバリアフリー状況は見られませんでしたが、四年ほど前に視覚障害の友人について介助ボランティアでフランスとドイツの旅をしたときはあまり不自由を感じなかったので、パリは案外整っているのでしょう。でも、今回は、日本についての認識が変わりました。井の中の蛙は反省しました。 そうそ、88歳のYさんはパリでも、みんなと同じように動いて元気はつらつの姿で再会できました。すばらしいでしょう?!
(徳重 富士子)