先週から今週にかけて、医学のシンポジュームにゲストスピーカーとして招聘されたイタリアの大学教授につく仕事をしました。
名古屋から入って福岡へ飛び、その後京都と六日間のかなりハードなスケジュールでした。
シンポジュームの合間のわずかな時間に日本は初めてという教授を案内し、食事もともにしました。日本への関心度は非常に高く、歴史や文化については勿論のこと、日本の生活習慣などにも大いに興味をもってくれました。
イタリヤでフェラーラというルネッサンスの学芸中心地で世界遺産にも登録されている都市に住んでいる呼吸器の教授です。フェラーラにはほんの二軒ほどの和食の店しかなく、それも本格的ではないのでお箸を使ったことがないといいます。来日した初日にまず、和食に挑戦したいとのことで、ホテルの和食レストランで、懐石を食べました。お刺身は苦手のようでしたが、もっと大変だったのはお箸です。ナイフとフォークを使うよう勧めましたが、どうしてもお箸を使えるようになりたいといいます。一生懸命に持ち方を練習していましたが、あんまり力を入れるのでかえって指が動きません。日本の子供たちはこんな難しいものを使いこなせるのかと言いながら、悪戦苦闘しています。
そのとき、お店の人が助け舟をだしてくれました。わりばしに小さく切った爪楊枝をはさんで輪ゴムでくくったものを作ってくれたのです。
これでかなりお料理をつまめるようになりました。すごい進歩です。
でもこんなに苦労したらお料理を味わうどころではなかったでしょう。
食事を終えて店を出るとき、さっきのお店の人が奥様のお土産にどうぞと新しい割り箸で二膳作ったものをくれました。
パーティーなどは別として何度か機会あるごとに教授はお箸の練習をしたいとがんばりました。
鉄板焼きを食べたときは目覚しく進歩していました。もう、輪ゴムつきのおはしは必要ないほどです。
4日目のお昼は軽いものにしたいといわれるので、では、おうどんはいかがと勧めてみました。イタリヤのパスタ類とどれほど違うか比べてみてくださいといって、てんぷらうどんを食べてもらいました。
「とてもおいしい!」と非常に喜んで食べているその手はもうおはしを自由に扱っています。すばらしい進歩で、びっくりしました。いままで、外国人でもお箸をとても上手に使う人はたくさん見てきましたが、その人たちは母国でも和食や中華料理でなれていることが多いのです。この教授みたいに母国で使ったことがない人は最初からフォークやスプーンを使ってしまいます。
文化の違いは時にいろいろなバリアを生み出しますが、今回は外国人にとってお箸を自由に使いこなす大変さを知りました。と同時に、この教授のように努力をしてそれを乗り越える人もいるのだと感心しました。
この話を聞いた主催者が、若狭塗りの夫婦箸をプレゼントしましたので、教授は「次に日本に来るときまでにちゃんと練習しなさいという宿題だね。」と笑っていました。”習うより慣れよ“かもしれませんね。
(徳重 富士子)