[音声ガイド]とは、テレビドラマの副音声に似た映画の視覚的な情報を補うナレーションです。目の不自由な人たちは、映画の音や台詞を聴き、映像を想像しながら楽しみます。その想像をより鮮明にするのが、この[音声ガイド]の役割。バリアフリー映画鑑賞推進団体シティーライツは定期的に勉強会を開いて、台詞の合間や場面転換などの短い時間制限の中で、どのような言葉で表現するかを考えつつ、音声ガイドづくりのボランティア活動を行っています。
昨年10/7に、このブログで取り上げた音声ガイド映画会をご記憶いただいてるでしょうか?友人の視覚障がい者をこの映画会に誘いました。彼女は「18歳のとき失明して以来初めて映画を観た。」と言ってくれました。「聴いた」ではなく「観た」と言ってくれたのです。視力障がいの方々に「観た」と言わせたのが音声ガイドなのです。そのときは彼女が喜んでくれたのが嬉しくて、単純によかったと思いましたが、一方、どんな人がどんなふうに音声ガイドづくりという大変な仕事をしているのかと、ずーっと気になっておりました。
はからずも、今回そのときの音声ガイドの製作者を取材する機会を得て、その幸運を心から感謝しております。
シティライツの代表平塚千穂子さん(35歳)は映画が好きだったので人に映画を見せる仕事をしたいと思っていました。「視覚障がい者が映画を楽しめない」という言葉を聞いて、音声ガイドを専門にしたボランティア活動があってもいいのではないかと考え、2001年にこの活動グループを立ち上げました。名前もチャップリンの映画からシティライツ(街の灯)をもらいました。教科書やマニュアルのようなものはまったくなく、手探りの状態で一から始めたといいます。
活動拠点の東京都障害者福祉会館には、今日も続々と音声ガイド作りのボランティアとモニターの視覚障がい者たちが集まってきています。今回手がけているのは日活映画『ポストマン・ブルース』(SABU監督 1997年制作)。4人で一班をつくり全部で四班が一本の映画を30分ずつ担当して音声ガイドのシナリオを作ります。
映像が目に浮かぶように各シーンに説明文を入れ、時には時代背景が理解できるような解説も入れます。それぞれの班が前回のミーティングでの検討の結果を修正したものを持ち寄って一冊のシナリオに束ね、また今日も映像を見ながら修正を重ねます。週に一回、約二ヶ月かけます。今日の勉強会は5回目なのでかなり台本も仕上がりかけているようです。今日はモニターとして視覚障がい者が10名、ボランティアが16名の参加です。DVDをテレビで映しながら、ボランティアの一人が出来上がった台本を読んでいきます。
ボランティアたちは真剣なまなざしで、作業中の台本を前に食い入るように映像を見つめています。モニターの視覚障がい者たちも、全身を耳にして聞き入っています。
「昼下がり、下町の狭い路地。赤い自転車に乗った郵便配達の男、沢木。立ち並ぶ小さな家々のポストに次々と郵便物を入れていく。」読み上げられる音声ガイドだけをあえて映像を見ないで聞いてみました。びっくりしました。まるでラジオドラマを聴いているようなのです。画面も十分想像出来ます。
思いがけない出会いから運命に翻弄され事件に巻き込まれて、最後には命を失う郵便配達の男の物語を見ているうちに、いや聞いているうちにすっかり引き込まれ、瞬く間に120分が経ちました。
検討会が始まります。モニターたちが、「家々のポストというと赤い郵便ポストを想像するが普通の郵便受けのことではないか?」とか「郵便屋の自転車のほかに何台も自転車が出てきたが誰がどの自転車にのっているのか、わかりにくい。」と言います。台本を書いているボランティア同士も「刑事の名前がたくさん羅列されるが、全部名前を言う必要があるだろうか。」等々実に細かく検討していきます。「制約された短い時間にいろいろな情報を盛り込むためには、最も適切な言葉を選ばなければなりません。ですからボランティアの方々は言葉の勉強にもなるというのです。」という代表の平塚さんの言葉をいまさらながらに噛み締めました。無駄のない説明と描写。みんな素人のボランティアばかりでこの台本を作り上げるのです。
ボランティア、Yさん(50代・女性)、Fさん(60代・女性)は二人とも日本語教師。「短い言葉で分かりやすく説明するという点で、外国人に日本語を教えるときと共通のものがあります。」という。Iさん(40代・女性)は朗読ボランティアから、音声ガイドの制作に興味を持って参加したとのこと。ボランティアの人たちは、まず、映画が大好き、そして言葉に興味がある方々が多いようです。
モニターとして参加している視覚障がい者のHさん(50代・女性)はシティライツの音声ガイドの映画のおかげで「見えなくなってから四半世紀ぶりで映画を観るようになりました。とても楽しいですよ。」と微笑みます。同じく中途失明をされたIさん(40代・男性)も「映画を観られるようになって嬉しいです。障がい者たちも情報を得て積極的に外に出て、バリアを超えるとこんな世界があるのだともっと知るといいですね。」とさわやかに言います。作り上げる人も、出来上がったものを楽しむ人も、皆、充実感を味わっていました。
創設以来、シティライツは多くの映画に音声ガイドをつけてきましたが映画選びなどは主催者の意向で決まるので、自分たちで選んだ映画に音声ガイドをつけてこの秋から来年1月ごろまでに、第一回シティライツ映画祭を開催したいと考えています。どうぞ平塚さんたちの夢が実現しますように、お祈りしております。(「のんびる」8月号 p. 15掲載中)
(徳重 富士子)
<音声ガイド勉強会・上映発表会参加ボランティアを募集します!>
■活動内容■映画の場面や状況描写、人物の動きなどを「わかりやすく、的確に伝える」音声ガイドを研究製作し、上映会で発表します。
■活動場所■東京都障害者福祉会館(三田・地図参照)
■活動日時■毎週火曜日10時-15時/一作品約二ヶ月のプロジェクト制
■参加条件■
・半分以上の出席が可能な方。
・自宅でビデオまたはDVDを見ることのできる方。
・エクセルの使用が可能な方。(必須条件ではありません。)
※午前のみ/午後のみ参加可という方は事前にお知らせください。班分けを考慮します。
※音声ガイドづくりは全く初めてという方も大歓迎です。
■費用■参加費無料、交通費・昼食代等は自己負担
■応募方法■事務局へメール、又は電話で。(HPもご参照ください。)
■その他の活動■シアター同行鑑賞会、映画情報サポート、会報の音訳、イベントの運営スタッフなど。
TEL: 03-3455-6321
FAX: 03-3453-6550
E-mail: mail@citylights01.org
HP:http://www.citylights01.org/
代表:平塚千穂子(ひらつか ちほこ)