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おらが湊鐵道応援団

2007-08-15 22:42:43

― 鉄道存続にかける住民運動 ―

茨城交通が経営している湊鉄道が利用者の減少・経営難などを理由に廃線の危機にさらされています。茨城の勝田駅から阿字ヶ浦駅までの14.3kmを9つの駅で結んで走るローカル電車です。大正2年に開業し、平成16年には90周年を迎えた由緒ある鉄道です。

2005 年の12 月、茨城交通からひたちなか市に2008 年3月にも「湊鉄道線を廃止したい旨」の申し入れがありました。市はこれを受けて関係者等で組織する『湊鉄道対策協議会』を立上げ、市長自らが会長となって、湊鉄道線の維持存続対策・利用促進策・財政支援策を協議しているところですが、沿線住民も存続運動にたちあがりました。

その熱心な住民運動を生んだ湊鉄道はどんな鉄道でしょうか。取材してみました。

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JR常磐線の勝田駅で湊鉄道の切符売り場を探しましたら、JRの駅員さん曰く、「切符なしでホームに入ってください。」戸惑いつつ、ホームまで行ったら小さな小屋風の切符売り場兼改札口がJR常磐線のホームの端っこにありました。

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湊鉄道の中心駅『那珂湊』までの切符を買い、(改札口なんてありません。)少し進むと『阿字ヶ浦行き』という札がかかっている一両の電車が止まっています。

まばらな乗客を乗せて出発。

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このあたりは日立製作所のお家元、つまり企業城下町なので最初の駅は工場や研究所の駅でしたがまもなく辺りには気持ちのいい田園風景が広がり始めました。

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無人駅が続きます。お昼過ぎという時間帯でもあったので、乗り降りする人もわずかです。

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朝夕は学生たちでいっぱいになるので二両編成にもなるとのことですが、企業の採算性を考えると廃線という選択肢もわからないではありません。でも、目にしみる水田の緑、その中を走る単線電車。なんと郷愁をかきたてられることか。郷愁だけで企業は生きていけないのはわかりますが、人の心のふるさととも言える原風景の中を走るローカル線には、何とか生き延びてほしいと存続運動を支援したく思いました。

約10数分のローカル電車の旅を楽しんだらまもなく那珂湊駅です。終点の阿字ヶ浦までのほぼ中間地点で、立派な駅舎も改札口も複数の駅員さんもいる駅です。

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その改札口を出たところに『おらが湊鐵道応援団』のブースがありました。そして団長の佐藤彦三郎さん(60代)が待っていてくださいました。

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佐藤団長さんから湊鐵道存続の市民運動の経緯を伺いました。
茨城交通より湊鉄道線の廃止申し入れを受けて、2006年6月に運動の必要性を確認、10月に「那珂湊地区活性化懇談会」を設立、正式に運動を開始しました。その後『おらが湊鐵道応援団』を結成、佐藤さんが団長に選出されました。ひたちなか市の81の自治会75,000世帯がメンバーに加わりました。

那珂湊港のさんまや阿字ヶ浦付近で採れる米やサツマイモを輸送する目的で94年前(大正2年)に湊鉄道を開通し、当初は蒸気機関車を走らせていたそうです。昭和55年(1975年)頃の最盛期には年間150万人もの人を運んだこともあったとのことです。阿字ヶ浦海水浴場への観光客を輸送するため、上野から臨時列車が出たこともあったほどでした。それがモータリゼーションの波に押されて、今では通勤通学客が主流となり、通勤もマイカーがほとんどとなって利用客はすっかり落ち込みました。現在は利用客が年間70万人ほどで、経営面ではこれをわると危ないといわれています。

佐藤団長は「イベントをいろいろと企画して、沿線の住民一人ひとりが自主的に乗るようにしよう!と呼びかけているのですよ。」といいます。電車に乗って買い物に行ったら商店街が得点サービスをしたり、勝田(かつた)の音読みにちなんだ縁起グッズや切符を発売したり、那珂湊魚市場の賑わいを広報したり、沿線の観光案内のパンフレットを配布したり、一番利用者の多いなかみなと一高、二高、水産高校の生徒たちに沿線の駅に、はまぎくの苗を花壇に植えてもらったりしています。創立当初からの那珂湊駅舎は趣があって、なにやらふるさとの駅に降り立ったような心をほっとさせるものがあります。その一角に自転車が10台ほどあったので、自転車置き場にしてはなぜ改札口の中なのかと思って佐藤さんに聞きました。「貸し自転車ですよ。那珂湊の町の中の観光に使ってください。4時間100円、一日200円です。」とのこと。

那珂湊の町だけでなく勝田市内でさえもシャッター街が増えている現状を憂いて、「実は湊線存続運動にかこつけて、町おこし、街づくり、活性化を図って地域づくりに結び付けたいのです。」と佐藤さんは言います。マイカーでなく、電車を使うことで二酸化炭素の削減が出来れば環境にもやさしいので、日立製作所や小松製作所など周辺の企業まわりをして通勤に湊線を利用してくれるよう働きかけをしてもいます。実際、電車の定期を買ってくれる人が291人にもなったそうです。

佐藤さんたちには夢があります。DMV(Dual Mode Vehicle)といって道路とレールを双方向に走行可能な「夢の乗り物」が安全面さえ完璧になれば、湊線でも使えるかもしれないという5年計画があるのです。国交省もこの計画にかんでいます。これが実現すれば、湊線の終点を阿字ヶ浦からひたち海浜公園まで延ばすことが出来て利用客の増加が図れるというのです。

「鉄道は廃線になると二度と走らせることは不可能に近いです。公共交通機関の廃止は、学生や高齢者等免許を持たない人たちの交通(生活)手段を奪い、広く人々の交流機会を失い、地域ポテンシャルの低下を招きます。多くの人々が豊かで文化的な生活を送るためにも、湊線は『おらが鉄道!みんなの鉄道!』の意識を高め、未来に向かって走るよう、住民運動を盛り上げ、自分たちでその運行を支えて行くことが大切だと考えています。」と佐藤さんは青年のような若々しい情熱をこめて言いました。どうぞ、この住民運動が成功し、湊鉄道が存続しますようにと心から祈っております。

(徳重 富士子)

<ご参考>

茨城交通ホームページ(http://www.ibako.co.jp)
おらが湊鉄道応援団(http://finder.music.coocan.jp)
DMV (http://www.jrhokkaido.co.jp)

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