障がい者のための大正琴のクラス
先日チャリティー映画会にご一緒した視覚障がいの友人のIさんがこの10年楽しみとして続けているお稽古があります。大正琴です。そのクラスを参観させていただきました。
三田の東京都障害者福祉会館の二階の一室がお稽古場所です。テーブルを長く並べて皆さん楽器を前に向かい合って座っています。先生は20数年も大正琴を教えていらっしゃる長尾美都里(みどり)さんです。とてもはつらつとした素敵な方です。普段は13人ほどのメンバーがいらっしゃるそうですが、きょうは二人お休みでした。全盲だったり、弱視だったりの視覚障がいの方々、内臓の障がいがある方々、そして先生の補佐をしながら会計等の役割を担っていらっしゃる健常者がメンバーです。
「さあ、始めましょう。復習からね。」と先生の声にさっと皆さん居ずまいを正してお琴に向かいます。「いちと、にと、さんと、し」先生の合図でひき始めました。
全盲の方々は暗譜しています。弱視の方々は、拡大した楽譜を見ながら、他の方は普通の楽譜を見ながら見事にそろってひいています。
『さくら』から始まって、『荒城の月』『船頭小唄』と次々と弾き続けます。大正琴の音色はマンドリンの音を少々鉄琴に近くしたような音であることをご存知でしょう?それは心の中の郷愁をかきたてるなんともいえない音色です。ちょっと寂しげでちょっと物悲しいそれでいてなんともいえない懐かしさを覚える音色です。そうです。幼いときに聞いた子守唄のような心の琴線に触れるような響きを持っているのです。『五木の子守唄』『黒田節』と進んでいって、『カチューシャ』『星影のワルツ』『ゆりかごの歌』と現代に近づいたところで一段落です。ここまでが基本編、毎回、レッスンの最初にこれら十数曲を一気に弾くそうです。ピアノの音階練習のような感じで指慣らしをするのです。
それにしてもびっくりしたのは皆さんの暗譜力です。こんなに沢山の曲をどうやって正確に覚えられるのでしょう。しかも左手の指遣いも正しく鍵盤を押して、右手のピックできれいなトレモロを弾いているのですから。あとから友人のIさんに聞きましたら、新しい曲を習う時は先生が音階を数字で言ってくださるのをテープに録音して家に帰ってから毎日時間を決めて練習するそうです。楽譜はおたまじゃくしでなく数字で書かれています。大正琴には♭はなく♯しかないそうです。
キーになる音を指でしっかりと覚えて位置をはずさないように抑えていくそうです。努力なしでは何事も身につかないのは承知ですが、この方たちの努力は本当にすごいものなのだと、改めて感銘いたしました。
10月7日に南大井文化センターで他のグループとの合同発表会があったそうです。長尾先生は大正琴のクラス8クラスとマンドリンの1クラス、ウクレレ1クラスを持っていらっしゃるとのこと。他のクラスはすべてシニア対象、特に七十代・八十代の方が多いと聞きました。この障がい者のクラスは月三回で,会費はお菓子代の500円だけ。先生はまったくのボランティアで教えてくださいます。
おせんべとクッキーのおやつをいただきながら、皆さんとお話しました。Iさんのように10年も続けている人もいれば二、三年の人もといろいろですが、みんな、楽しくてお稽古の日が待ち遠しいといいます。私も大正琴を触らせてもらいましたが、先生に「ピアノのように指を離したらいけません。」とご注意を受けました。なるほど。
後半の練習に入りました。来年の春には大井町のキュリアンでの発表会をするので、『愛の讃歌』『千の風になって』『禁じられた遊び』を練習しています。テンポがずれると先生の厳しい声が飛びます。最後に「家でよく練習してください。」の一言で締めくくられました。
趣味とはいえ、やはりなんでも努力ですね。特にハンディを背負っている方たちの努力をし、かつめげない精神力には頭が下がりました。おかげで私まで、楽しい午後を過ごすことが出来ました。
(徳重 富士子)