「江戸しぐさ」という魔法で心がホッコリ〜
公共広告に使われたり、マナーの基本として最近よく「江戸しぐさ」が登場しますね。
地域デビューに限らず、人付き合いを円滑にするための知恵やヒントがいっぱいありそうだな、と思っていたところ、西東京市で「江戸しぐさ」講演会があると知り、参加してきました。
開催したのは「西東京明るい社会をつくる会」。お互いの思想、宗教、政治などその違いを認めつつ、平和で暮らしやすく明るい社会をつくろうと活動している民間の任意団体です。挨拶運動や使用済み切手の寄付、チャリティコンサート開催など、地域の活性化や、社会奉仕活動などを中心に活動しています。
今回の講師は、NPO法人「江戸しぐさ」所属の語りべ・辻川牧子さん。現在、全国の小中学校や、企業などの新人研修などで「江戸しぐさ」を伝える活動をしています。
300年近く平和で穏やかな暮らしが続いた江戸時代……と、語りべ・辻川さんの美しく響く声と歯切れのよい美しい言葉で、話は江戸の時代背景から始まりました。
江戸の人口は100万〜130万人といわれ、当時世界でも最大級の大都市です。その人口の約4分の1が商人。日本各地から集まったそんな商人が、言葉や習慣の違いを越えて、安泰で商売が繁盛する社会環境を作ろうと知恵を絞り、磨き上げたものが、江戸しぐさ。「商人しぐさ」「繁盛しぐさ」ともよばれ、口伝された商人道の奥義、つまり商売繁盛のための非公開の「コツ」のようなものだったそうです。それがいつの間にか磨き上げられ、お互いに心地よく暮らすための江戸町人の生活の知恵になりました。
今「粋」という言葉はおしゃれというような意味で使われますが、当時「粋」であることは、いきいきと生きるの意味があり、お互いに気持ち良くあること、そして世の中のためになることが最高の「粋」であると考えられていました。
そのためには、自分の立場をわきまえ、「約束は守る」「人の意見は尊ぶ」、その人の職業や持っているものの大きさで人を判断することは、とても「下品」「野暮」なことと考えられ、「この世に要らぬ人は無し」の教えどおり、同じ「人間」としての土俵で生きることを大事にしていました。
また、言葉をとても大切にしていて、心が荒れる=「慌てる」、心を亡くす=「忙しい」という言葉を嫌い、ゆとりや心をなくしてはいけない、ていねいに生きなさいと教えられていました。
「言霊」という考えから物事を引きつける言葉をとても大切にし、「差し言葉」「水かけ言葉」「とじめ言葉」などは厳しく戒められていたそうです。
人はお互いを尊重し、自然も大切にする。行動を伴った精神性の高い生活哲学が行き渡っていた江戸。聞いているうちに、江戸の時代にタイムスリップしたくなります。
別れ際の挨拶も「さようなら」と言って別れ、数歩進んでから別れを惜しむように、お互いに振り返ってもう一度会釈をする、そんな江戸しぐさの挨拶の仕方を、小学生達に教えると、「心が二度ほっこりした」という感想が聞かれるそうです。小さな子ども達にも、十分に伝わるんですね。
また、社内研修で「江戸しぐさ」を取り入れると、3カ月で社内の雰囲気が変わったという報告もあるそうです。

【参加者が、「傘かしげ」を実演してくれました】
狭い道や席を、お互い譲り合おうという知恵の「傘かしげ」、「肩引き」、「こぶし腰浮かせ」などに代表される江戸しぐさ。帰するところは「相手への思いやり」ということがよくわかります。私たち日本人は素敵な祖先を持っていたんだなぁと、誇らしく嬉しく思えてきました。
最後のほうになると、「江戸しぐさ」という魔法をかけられたように、私も心がホッコリとしてきます。
講演会が終わった後の狭い洗面所。行き交う人々が、お互いを気遣いながらすれ違い、まるで皆も魔法をかけられているかのような何とも優雅な空気が流れます。先を争って、という雰囲気はまるでありません。
「どうか、この魔法が溶けませんように!」と思わず願ってしまいました。
誰かに小さな気遣いをされただけで、心がほんのり暖まります。そうすると、それを誰かに同じように返したくなる。そんな連鎖がどんどん広がれば、ストレスが少なく互いに穏やかな気持ちで暮らせそうです。そういう社会って豊かですよね。
そして、地域デビューにおいても、私たちがほんの少しでも気遣いをし合えば、よりよい人付き合いができ、さらには何らかの形で人や地域の役に立てたら、それは「粋」なセカンドライフと言えそうです。
辻川さんは、一人でも聞いてくださる方がいれば、「江戸しぐさ」を語りに行きたい、とおっしゃっていました。大人も子どもももう少し相手を思いやれる余裕が持てるように、是非NPO法人江戸しぐさの方たちに魔法をかけ続けてほしいと思いました。
NPO法人 江戸しぐさ
http://www.edoshigusa.org
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ここで突然ですが1つ、辻川さんから聞いたお役立ち情報を。
「
こんにちは」をよく、間違えて「
こんにちわ」と書く人が多いのですが、これは江戸時代の世辞、「こんにちはよいお天気でございますね」「今晩は静かな夜でございますね」という一文であることを知ると、
「は」を
「わ」と書く間違いはしなくなりますよ、と教えていただきました。
(吉田和子)