事の起こりは「骨太の方針」
「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」で、2011年までの5年間で社会保障費を1兆円削減するという方針を打ち出しました。
OhmynewsHP http://www.ohmynews.co.jp/news/20071130/17925
http://www.ohmynews.co.jp/news/20071016/16182
さらに遡ると“医療費亡国論”が……
「誰が日本の医療を殺すのか」の著者、太田宏氏は、12月4日のラジオ放送「大竹の言い放題」で「消える産婦人科の病院」についてコメント、国の低医療費政策の根源には“医療費亡国論”があるとしました。
医療費亡国論とは
厚生省保険局長(当時)吉村仁氏の「医療費をめぐる情勢と対応に関する私の考え方」という論文(1983年、『社会保険旬報』)の中に出てくる言葉。論文中に「このまま医療費が増え続けると国家がつぶれる、これは仮に“医療費亡国論”と称しておこう」とあります。また、医療費削減のためには、予防・健康管理・生活指導などに重点をおいたほうが効率的とし、近い将来の医師過剰や世界一の病床数などに言及しています。
平成14年から始まった医療費削減政策
医療療養病床における診療報酬の見直しで、老人や低所得層の医療難民・介護難民という言葉が生まれました。
厚生労働省HP(医療制度改革の課題と視点):http://www.mhlw.go.jp/houdou/0103/h0306-1/h0306-1a.html#top
来年4月から始まる「特定健診・保健指導制度」
病気の早期発見・早期治療、健康増進を目的にした制度を目前に、巷にあふれ出た“メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)”という言葉。
健診の祭の受診推奨の基準とされるメタボ基準値が、国と日本人間ドック学会では異なるという事です。
医療費削減ありきで早急に進められているための歪みでしょうか。
“医師薄寂”
住友生命保険が一般から応募した「創作四字熟語」です。
医師不足を実感している国民の声です。
毎日新聞の世論調査によると、国民の6割が医師不足を実感しています(毎日新聞 2007年10月19日(金)朝刊)。
日本の医師数は26万人です。これは、OECD加盟国平均より、12万人も不足しています。(日本の医師数:26万人の中には、70歳以上の高齢の医師も入っている)
医師不足がもたらした事件
激務に耐えかねた勤務医の辞職や、大学病院による派遣先からの医師の引き上げなどが原因で、閉院や診療科がなくなるという事態がおきています。
特に、小児科・産婦人科でその傾向が顕著です。
★小児科医が自殺
働き盛りの44才の小児科医が自殺。月に8回を越える当直と30時間以上の連続勤務という激務からうつ状態になったのが原因。
医療現場は人員不足だった。
http://www.fmk.fm/journal/06_05_22.html
救急搬送拒否
★奈良「産科たらい回し」
8月29日、午前5時10分、大阪府高槻市の国道171号交差点で、奈良県橿原市の女性(36)を運んでいた救急車と軽ワゴン車が衝突。女性は別の救急車で病院に運ばれたが流産。
3度の受け入れ要請があった奈良県立医大病院が、8月31日経緯を説明する文書を発表
分単位で2名の当直医の行動が書かれてあり、医療現場の過酷な現状と受け入れ困難な実態があきらかになる。
この当直医2人は、一睡もしないまま翌日の業務についた。
J-CAST(9月3日)http://www.j-cast.com/2007/09/03010907.html
★福島市で交通事故にあった女性の場合
福島市で道路を横断しようとして乗用車にはねられた女性が救急搬送される際、4つの病院に計8回受け入れを断られていた。女性は事故から約1時間後に、9回目に依頼した病院に搬送され、約6時間後に死亡。
★兵庫県の男性の場合
兵庫県姫路市の男性(66)が救急搬送された際、近隣の18病院が医師の不在などを理由に受け入れを拒んでいた。男性は約30キロ離れた市外の病院に2時間近くかけて搬送されたが、途中で病状が悪化。搬送先の病院で死亡が確認された。
救急搬送関連の問題には、医師不足の他、医療を受ける側の問題も指摘されています。
救急医療に見る患者の身勝手
★コンビニ受診
水虫や軽い風邪などで、簡単に夜間救急にかかる風潮のことです。
医師が疲弊し退職する事例も少なくありません。
東京都によると、夜間などに入院が必要な急患を受け入れる「二次救急」の指定医療機関に救急車で運び込まれる人の60%は軽症、特に子どもは95%が軽症だとしています。
子どもを急いで病院につれていく必要があるかを電話で相談できる窓口を利用するのもいいかもしれません。
厚生労働省HP http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html
★救急車をタクシー代わりに利用した男を逮捕
7月31日、広島県警は、必要がないのに救急車を呼んだ61歳の男性を業務妨害の容疑で逮捕。
日本人のモラル低下が、医療崩壊に拍車をかけているようです。
東京消防庁
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/tksei01.html
削減されているのは医療費だけではない
★堺市の患者置き去り事件
堺市の病院、全盲の糖尿病患者を公園に放置。
この事件では、男性の入院中の態度(暴言など)や、生活保護打ち切りの問題があります。通院治療が可能とされながらの長期入院、本当に療養型の病院や施設に送ることができなかったのか、行政の対応はどうだったのかという問題も含まれているようです。
いずれにしても、医療・福祉の問題が凝縮されたショッキングな事件です。
社会保障費(対GDP費)
日 本:13.1%
スウェーデン:32.0%
ド イ ツ:28.2%
ア メ リ カ :14.5%
http://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/syakaihosyou-kokusai/kokusaihikaku.html
コミュニティーの力で住み良い社会を
★地元の小児科を守ろうと立ち上がったお母さんたち
兵庫県丹波市の県立柏原病院小児科を巡り、地域の母親たちが結成した「県立柏原病院の小児科を守る会」。
かかりつけ医を持とうと呼びかけたり、子どもの病状に応じた適切な対応をチャート図にしたりと努力した結果、夜間受診が激減し、医師が寝当番できる労働環境が実現したそうです。
Web CLOVER http://hello.ap.teacup.com/sodateru/328.html
県立柏原病院の小児科を守る会http://mamorusyounika.blog123.fc2.com/blog-entry-15.html
コミュニティーの力で住み良い環境を作り上げた良い事例ですね。
「地域にはいろいろな組織があるのに、それが有効に利用されていない」という事を耳にします。
役所や自治体が作った組織を縦糸に、NPOなど民間の力が横糸となって紡ぐ社会は、民間の声が自治体へ、そして国へと届く社会となるのではないでしょうか。
では、皆様よいお年をお迎え下さい。
(松尾 陽子)