pagetop

リポーターブログトップ > 記事詳細

『のんびる』取材より―地域医療を育てる会

2008-06-09 20:31:48

wakasio.jpg
「NPO法人 地域医療を育てる会」の理事長藤本晴枝さんは、『地域医療を守れ 「わかしおネットワーク」からの提案』(平山愛山・秋山美紀著 岩波書店)の中で“房総の山武地区に「平成の女坂本龍馬」と呼ばれる女性がいる”と紹介されています。


藤本さん自身、高熱の出た幼い我が子を診てもらうために、夜遅く車を走らせ千葉市へと向かい、白々と夜があける道を自宅へと再び車を走らせる事もあったと言います。
その時の疑問「なぜ、近くの病院で診てもらえないだろうか」が、この会の発足の原点ともいえるのではないでしょうか。
その疑問はやがて地域医療の問題へと突き当たります。
困難な問題にもかかわらず、一つずつ・一歩ずつ歩みを進める藤本さんの活動を紹介します。

今月のキーワードは「一(いち)」「一つ」です。
kuro-ba.jpg
一、情報誌クローバー発行まで―地域医療のドミノ式崩壊―
2004年から始まった臨床医研修制度により、大学病院による医師引き上げが始まり、医師不足にあえぐ病院が増えています。
医師不足問題は、救急医療対応問題へと波及します。藤本さんの住む地域の病院、東金病院も事情は同じで、冒頭で紹介した通り、夜間の子どもの高熱の受診のため自分で車を走らせて千葉市へということになったのです。

東金病院で救急対応できなくなった分、病床数の多い成東病院へと患者が搬送されました。その結果、成東病院の内科医が全員退職という事態に発展。
事はそれだけではおさまらず隣接の長生病院が「当院はパンク寸前、他の地域の患者まで見る余裕はない」と、異例の記者会見を開きました。

一、藤本さんと平井医師の出会い
2005年1月、地域の医療センター構想についての住民説明会に出席し、そこで東金病院長の平井愛山医師との出会いがありました。
説明会で、行政からはハコモノ作りをお願いするばかり、住民は文句を言うだけという現実を見た藤本さんは、住民として何かできることはないかと考えました。
そして、自分に出来ることとして情報誌『クローバー』を発行することにしました。
藤本さんは、情報誌で医療情報や、医療についての知識を住民に配信し、みんなが同じ土壌で話し合えるようになればと思っています。

一、奄美大島への取材
医師不足や新臨床医研修制度を調べるうち、地域に医師を呼び戻すには若手医師が研修に選ぶ魅力ある病院を作ることが必要という事がわかってきました。
一般にはあまり知られていない、新臨床医研修制度や「若手医師はどのような病院を選ぶのか」という事を情報誌で伝えたいと、東金病院院長の平井医師に相談しました。

「一緒に奄美大島に行きませんか」

ちょうどその頃、東金病院に魅力的な研修プログラムを作ることに注力していた平井医師は、東金病院で働いてみようかと思っている医師が奄美大島にいるから取材に行かないかと言うのでした。
学生時代奄美大島を訪れ離島医療の現場に触れここで働くことを決めたという古垣医師でした。

藤本さんは、「利用者である住民と医療従事者がよりよい医療を作るためには、共に協議する場をもつことが大切」という古垣医師の言葉に、それこそが自分たちの目指す「対話する地域医療」だと思ったと言います。

一、夢プロ
2007年3月3日、城西大学准教授井関友伸氏の講演会に、地域住民・行政関係者や地域を越えた医療関係者220名が参加。
「医療崩壊、医療再生、地域がどちらの道を歩むのか、鍵を握っているのは住民だ」と言う講演内容でした。
3月16日、14名のメンバーが集まり次の事が決まりました。

地域で医療を育てるという東金病院の取り組みに住民も参加してサポートしていく事
現状を正しく認識するために地域医療について学び考えるための連続講座を企画する事

夢プロ―夢と希望を創る地域医療プロジェクトです。

以下に、夢プロ7つの約束、6つのマイチャレンジ”を紹介します。

夢プロ・7つの約束
地域医療は、医療者、地域、行政議員が一緒に作るもの
医療者と住民の意識のギャップをうめよう
健康は人任せではなく自分で守るもの
医療、福祉、健康づくりが一体であることを理解しよう
お互いが支え合って地域の安心をつくっていく
医療とともに、健康づくりに必要な人員や財源を確保しよう
医療機関のネットワークづくりを進めよう

夢プロ・マイチャレンジ
自分の体や健康について良く知ろう 食生活に気を付け運動をしよう
かかりつけ医をもとう
休日夜間には本当に必要な時だけ医療を受けよう
医療者の立場を考えて、敬意を示そう
家族や地域が健康であり続けられる行動をしよう
一歩踏み出す勇気! 一緒に考え行動する仲間を作ろう

一、医師育成サポーター
平井院長の努力により若い研修医が集まるようになった東金病院。
けれども、患者である住民は、若い研修医よりもベテランの医師に診てもらいたいと思っていました。研修医が患者から「なんで若造が来たのか」と言われ、意欲が低下することもあったといいます。
藤本さんは、この「なんで若造が」という言葉には、患者の「先生もっとよくわかるように説明してほしい」という願いがあり、経験の浅い研修医は患者にどの程度の医学知識があり、どのように説明すれば理解してもらえるのかという事がよく分かっていないのではないかと思いました。
そこで「あなたの知らないということが医師を育てる」というような場を作り、若い研修医に患者の事をもっとよく知ってもらいたいと平井院長に相談したら、「おもしろそうだね」と一言。
こうして医師育成サポーターが始まったのです。


医師育成サポーター制度とは
研修医による病気予防の懇談会を開催。そこで研修医による病気の説明などを聞いたサポーター(一般市民)が、その説明の仕方やわかりやすさを評価するというものです。

取材の日は、昨年度のサポーター制度の総まとめの日でした。

参加者の感想
・医学知識が得られる
・先生の率直な意見を聞くことができ、(救急医療などに関することなど)報道ではわからなかった医療現場の事もわかった。
・医療現場で感じている困った患者の情報なんかも、どんどん教えてほしい
・最初は、目線も低く声が小さくて聞き取りにくかった。
・先生への厳しい批判、最初は書けなかったけれども、今では厳しい意見が言えるようになった。これも先生との信頼関係の証。
・素人が医者を育てるなんてできるのかという疑問。先生という存在を評価することに抵抗を感じる
・最初は声も小さく、うつむき加減だったが、今では、ジョークも交え分かりやすく説明できるようになったと思う。
・先生との距離も近くなり、病院への関心も高まった。

昨年度の若手研修医・阿部先生
患者と医師、それぞれの立場にたっての意見交換は、不信感を払拭することができたと思っている。
医師は技術もそうだけれど、人間的な面を学ばなければならないことを痛感

そして、藤本さんは言います。
「この会での医師への厳しい意見、それは、医師への応援メッセージです」

冒頭に紹介した本で「温和だけれども芯の通ったひと」とされる藤本さんは、地域医療の充実のため一歩ずつ着実に歩み続けています。

「続けているうちに見えてくるものがあるのではないか」

取材を締めくくったこの言葉は、今でも私の心に残っています。

参考文献
『地域医療を守れ「わかしおネットワーク」からの提案』平井愛山・秋山美紀著 岩波書店

NPO法人 地域医療を育てる会HP:http://www.geocities.jp/haruefjmt/

この記事のURLコメント(0)

名前
メール
URL
コメント

▲このページの上へ戻る