
3月のブログでも紹介した「般若心経」。今回は、生命科学者の柳澤桂子さんが説く「空(くう)」の世界をご紹介しましょう。
(小学館 「生きて死ぬ智慧」 文・柳澤桂子 画・堀 文子)
著者の柳澤桂子さんについて
生命科学者として将来を嘱望されながら、原因不明の難病(その後「周期性嘔吐症候群」とわかります)と闘うなか般若心経に出会いました。
私とこの本の出会いは2005年に放送されたNHKの番組。
その中で印象に残ったのは
「原子レベルで宇宙を見る」という言葉でした。

本のあとがきに、次のように書いてあります。
私たちは原子からできている。原子は動き回っているために、この世界が成り立っている。
宇宙を原子レベルで見てみると、私のいるところ・戸棚のところも原子が密に存在する。一面の原子の飛び交っている空間の中に、ところどころ原子が密に存在するところがあるだけ
あなたもない、私もない、けれどもそれはそこに存在する。
物も原子の濃淡でしかないから、それにとらわれることもない。
本文では、般若心経『是諸法空相』の訳として
「あなたも 宇宙のなかで 粒子でできています ほかの粒子と一つづきです(略)あなたという実態はないのです あなたと宇宙は一つです」
『三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提』の訳として
「このように 過去・現在・未来の三世の人々と 三世のほとけとは永遠に存在しつづけます」
と書かれています。
ここで思い出すのが、手塚治虫の「火の鳥」。
輪廻転生という言葉すらしらなかった小学生の頃、黎明編に出てくる猿田彦のブツブツした鼻が印象的で、そのブツブツ鼻の人物が他の物語にも登場してくる事を不思議に思いながら読みふけっていました。そして、底流に流れる「命の不思議」という事を幼心に感じていたのだと思います。
そしてもう一つ思い出されるのが「2001年宇宙の旅」。
その昔、地上に落ちてきた黒い物体。猿が類人猿となり、やがて人類となる。文明が発達し、人類は宇宙へと旅立ち、再びその物体に出会います。
この映画のラストシーンは、とても印象的で、宇宙には何か大きな力があり、それを人は神と呼ぶのかもしれないと感じたものです。
またある時、このような言葉を聞きました。
「科学でも物理学でも、真理を追求すればするほど、その先に謎が生まれてくる。何か大きな力がそこにあるような気がする」
こうして考えてみると、この本のあとがきにも書かれていますが「お釈迦さまはものすごい天才で、真理を見抜いていた」という事でしょうか。
最後に、私の悟りにも似た体験をご紹介します。
濃霧に覆われた公園を散歩していた時のことです。
頬にあたる細かい霧の粒を感じながら、目の前に広がる白い世界を見ているうちに、これが「一面の原子の飛び交っている空間」という事なのかも知れないと思ったのです。
この世界を粒子の世界で見るということは、目の前に広がる霧の世界のようなものなのかもしれない。
今、私も、公園の木々も、あのマンションも、白い霧の中にとけ込んでいる。
この世界を粒子で見てみると、こんなふうになっているのかも知れない。
そしてみんな、同じ粒つぶでつながっている。
そして、そのつながりは宇宙へと広がり、過去へも未来へも通じている。
そう考えれば、気の合わない上司も、トラブルメーカのご近所さんも、突き詰めれば同じ粒つぶ。
本物のダイヤモンドも、ガラス玉も、みんな同じ粒つぶ、ちょっと濃度や密度が違うだけ。
なんて考えるといろんな事にとらわれていること自体、何やってんだか……と思えてくるのではないでしょうか。
時には「空(くう)」の世界に心を解き放ってみませんか。
参考にしたHP
手塚治虫オフィシャルHP
(松尾 陽子)