在宅医療は患者主体の医療
さまざまな医療改革により、今後身近なものとなってくる在宅での医療や看取りは、患者や家族の意思が尊重される患者主体の医療と成り得るものです。
『在宅療養支援診療所サポートセンター開設記念シンポジウム』(2007年10月13日(土)開催)のお話から、患者がどのように医療と向き合っていけばよいかのヒントが得られると思います。
「地域における看取りと在宅医療、在宅ケア」
新宿ヒロクリニック院長 英 裕雄氏
http://www.hiro-clinic.com/index.html
在宅療養支援診療所の意義のひとつに、『患者が地域で社会生活を全うできること』があります。
地域で、そして、家庭での看取りが増えてくると思われる今、地域における看取りの量・質共に向上させることが必要となってきます。
地域での看取りの量・質を向上させるためには、在宅療養支援診療所の医師だけではなく、看護師・地域の介護サービス、行政などの協力が不可欠です。
当クリニックの例を見ると、患者の(終末期医療・在宅医療に対する)明確な意思表示がある時の対応は、ある程度充足してきていると思われます。
患者の明確な意思表示がない、又は、できない状況や、独り暮らしや老々介護の状態にある患者への対応をどうするかが、今後の課題となってきます。
そして、市民一人ひとりが自らの死生観をしっかりと持つ事も、在宅療養や、在宅での看取りの質の向上のために重要な要素となります。
「緩和医療における医療連携」
要町ホームケアクリニック 院長 行田泰明氏
http://www.kanamecho-hp.jp/care/zaitaku.html
★医療連携
平成18年に “がん対策基本法”が施行され、緩和ケアの普及が急務とされています。
日本の医療の現状として、日本全国どこでも同じ治療・緩和ケアが受けられる状態ではありません。医療の地域格差・医療機関格差があると言わざるを得ません。
また、在宅医に最新の緩和ケアの情報(鎮痛剤に関する最新の情報等)がない事や、最新の緩和ケアを知らない(※)といった問題があります。
これは、基幹病院が地域へ患者を戻す時の情報の共有が十分できていない事に原因があります。
在宅での緩和ケアや、スムーズな入退院や転院、そして他の専門医の往診を頼む時(患者が他の医師に見てもらったほうがよい状態の時)に、医療連携は重要な意味を持ちます。
医療連携とは、“病院と病院”“病院と診療所”“診療所と診療所”の連携です。
現時点では、まだ充分な連携がとれているとは言えず、また、お互いに顔が見えない連携であるといえます。
★医師も介護保険の勉強を
在宅療養、在宅ケアにおいては、病院、診療所も介護保険についての理解を深める必要があります。
訪問看護の場合、医療保険と介護保険では、使える回数等で差があり、介護保険では充分な看護が行えない場合があります。
例えば、神経難病、癌末期、急性増悪の場合、医療保険では、毎日の訪問看護が可能ですが、医療側の書類の不備により介護保険での訪問看護となっている場合、毎日の訪問看護を受けられないといった例があります。
(詳しくは、
介護保険と医療保険を考える部屋http://www.urban.ne.jp/home/haruki3/houmonhi.html
Medical TRIBUNE http://www.medical-tribune.co.jp/special/kaigosetumei/kaigohoken.htm
参照)
★良質な在宅緩和ケアのために
訪問看護、訪問介護、医師間が三位一体となり、患者のタイムリーな情報を共有することができるシステムを作る事が、必要です。
現状では、看護ステーション(訪問看護)への負担が大きく、看護師の体力的・心理的負担は相当なものと思われます。
これは、医師よりも看護師の方が連絡しやすいという、患者側の心理的要素もあると思われますが、医師が積極的に看護に関わっていない現状もあると思われます。
今後は、看護師への負担を軽減するためにも、医師が介護に積極的にかかわり、情報を共有することが必要です。
看護ステーションと医師が「あ・うんの呼吸」がとれることが、良質な在宅緩和ケアへの道であると思われます。
★在宅での看取りの特徴の一つは、死亡処置に家族が関わるという点です。
いかがでしょうか?
在宅での看取りには、自分も家族も納得して死を受け入れてこそできるものであり、そのようにして看取った後には、家族の死を受け入れることができ、看取りの満足感が得られるとの事でした。この満足感は、在宅での質の高い医療があったからこそ得られるものではないでしょうか?
在宅で質の高い医療を受けるために、私たち一人ひとりが、積極的に医療にかかわる事―疑問点を話し合う、自分がどのような医療を受けたいかの意思表示が必要だと思いました。
その意思表示が“医療の連携”の中心となって在宅医療がすすめられていくのが大切なのではないでしょうか。
(※)緩和ケアについては、2007年8月26日に行われた「第3回がん患者大集会」で以下の点が指摘されました。
・WHO(世界保健機構)が定めた治療法を知らない医師が多い
・医療用麻薬で麻薬中毒になるという誤解がある
・良い患者でいたいとの思いから患者が我慢
この大会では、在宅での緩和ケアの体制の整備と、在宅緩和ケアの専門的な研修を3年以内に実施することを要望しています。
(松尾 陽子)