きょうは、来年4月から新年度の養成講座も始まる、「産業カウンセラー」についてご紹介します。
産業カウンセラーは「働く人」だけにかかわるの?
多くの方が、「産業カウンセラー」という言葉を見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
「産業カウンセラー」は、社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する資格で、協会によると「心理学的手法を用いて、働く人たちが抱える問題を、自らの力で解決できるように援助することを主たる業務として」いるとのこと。
日本産業カウンセラー協会は1960年設立、’70年に労働省の認可を受け、社団法人日本産業カウンセラー協会となりました。
現在、産業カウンセラーは、働く人を対象に企業でカウンセリング業務にあたっているだけでなく、下のパンフレットにもあるように、一般の方を対象にしたカウンセリングを行う場合も少なくありません。

【日本産業カウンセラー協会神奈川支部・横浜相談室のパンフレット】
*カウンセリングは有料です。
養成講座
今年5月の新聞記事によれば、昨年行われた「産業カウンセラー養成講座」の茨城県ひたちなか市の教室は、受付から5時間で満員になったとあり、神奈川支部にもきょう電話で確認してみると、「コースによりますが、ここ数年は2〜3日で定員になります」という答えでした。
おけいこごとやカルチャースクールの感覚からいけば、養成講座の受講料は全国一律199,500円(消費税込)と決して安いとはいえません。
それが、なぜこんなにすぐ定員に達するのでしょうか。
バブル崩壊後のリストラや成果主義の導入などにより、大きなストレスをかかえながら働いている人がふえており、また一般家庭でも、うつやひきこもりなどはひとごとではなく、こころの問題への対応は待ったなしだと考える企業や人が多くなったからではないでしょうか。
そして、めまぐるしく流れていく日々のなかでふと立ち止まり、自分自身と向き合いたい、見つめなおしたい思いになって、自分で自分をカウンセリングするような気持ちで参加する人もふえているのかもしれません。
養成講座は7ヶ月間で全20日間と長丁場。
理論、実技、在宅研修と、かなりぎっしりのカリキュラム。気合のいりそうな内容です。
なかでも、小グループに分かれての実技が重視されています。
受講生は、企業に勤務する人、医療従事者、主婦、定年退職者などと幅広いようです。
参加した50代ぐらいのある女性は、「たしかに最初はきつかった。勉強とはいえ、この歳になって、同じグループの人になんでそんなこと言われなきゃいけないの、って思ったこともありました。感じたままを率直に伝えてくれたんだけど、そういうのって日常生活とはちがうから、受け入れることができなかった。自分を見つめなおすのはつらい作業でもあるし。でも振り返ってみると、いい経験しました。いつかカウンセラーになりたいと思っています。グループも、なんだかなつかしいわ」と笑って話してくれました。
試験が近づくと自発的に勉強会を開き、試験結果発表日にはともに合格を喜び合ったり、講座終了後も毎年定期的に集まっているグループもあるとのこと。
7ヶ月間、中身の濃い講座でさまざまな感情を分かち合ったグループのメンバーは、いつのまにか大切な“同志”になっているのかもしれません。
養成講座を受けないと、産業カウンセラー試験は受けられない?
以下の場合は、試験委員会で審査され、「受験資格有り」と認められると、養成講座を受講せずに産業カウンセラー試験を受けることができます(認められない場合もありますし、今後変更される可能性もあります。HPでご確認ください)。ちなみに私は、下の「1」で資格を取得しています。
◇「学士」の受験資格で受験する場合
1.心理学または心理学隣接諸科学を専攻し、学士の学位を有す
る者
2.旧大学令による大学において、心理学または心理学隣接諸科
学を専攻し卒業した者
◇「実務経験」の受験資格で受験する場合
成年に達した後にカウンセリング業務又は人事労務管理に従事し
た期間が通算4年以上である者
合格したら、すぐ仕事ができるのか
この試験に合格して産業カウンセラーとして認定されても、企業で相談関連部署などに所属している人は別かもしれませんが、カウンセラーとしての職が約束されるわけではありません。
なかには合格をきっかけにカウンセラーとして勤めたり、個人で仕事を始める人もいるようですが、合格すれば即カウンセラーと簡単には進まない場合もある、いえむしろ、それが普通だということを知っておいたほうがよいでしょう。
ですが、がっかりしないでください。産業カウンセラーに合格後数年たった人などを対象に、養成講座の実技指導インターンを募集して将来の実技指導者として育成したり、相談室のカウンセラーとして採用したり、と協会も仕事の場を用意してきています。研修などに参加しながら学び続けていれば、チャンスもやってくるかもしれません。
試験合格後に、産業カウンセラーより高いレベルの資格、「シニアカウンセラー」をめざして勉強する人たちもいます。「シニアカウンセラー」試験の合格率は20数%と難関ですが、それだけにこちらの資格を取得すれば、仕事につなげていける可能性も高いようです。
シニアカウンセラー山下さん
そこで、現在シニアカウンセラーの資格をもって活躍中の、山下正勝さんにお話をうかがいました。

企業に勤務し、人事・労務・福祉部門を担当し、毎年500人の面接をしていたという山下さん。「そういう点では、人を観察できていたかもしれませんね」。
以前の勤め先の同期で、その後独立した友人に、カウンセラーの資格をとって自分の仕事を手伝ってくれ、といわれたのが山下さんがカウンセリングを学び始めたきっかけです。
来年、古希を迎える山下さんは現在、関東地方では資格を持っている人が30名というメンタルヘルス推進支援専門家としての2社でのカウンセリング業務、産業カウンセラーの勉強会での後進への指導などでパワフルに活動しながら、自身よりかなり年下の臨床心理士の
スーパービジョンを定期的に受けるなど、自己研さんも欠かしません。
*スーパービジョン:自己点検や担当中のケースの点検等、心理臨床家が専門家としての資質向上を目指すための訓練方法。
このごろ、カウンセリングを通じて感じることは
「最近の若い人のなかには、上司にちょっと叱られただけで出社拒否になってしまう人もいます。私たちの子どものころは兄弟も多くて、けんかしたし、学校でけんかして負けて家に帰っても、もう1回行って来いっていう感じでした。いまは人とのつきあい方がわからない人がふえているのかもしれません。50代ぐらいの人は、将来設計や家族の問題で悩む人が多いように思いますが、がまん強くてよっぽどでないと、カウンセリングを受けにくることはありませんね」。
山下さんは、50歳が自身の転機になったとのこと。そのためか50代の人を応援しようとする気持ちが伝わってきます。
「60歳になってから何かをするというよりも、50代の現役のときにやりたいことをとりあえずピックアップして、60歳までは助走。
いける!と思ったら、60歳を過ぎて離陸っていうのがいいように思います。とにかく、いろんなところに顔を出してみる、自分がやりたいことを1つだけでなく考えてみる、ということをしてみたらどうでしょう」
資格のいかし方のひとつ
いま産業カウンセラーの資格取得を目指している私の40代の友人は、「カウンセラーというよりも、いつか地域の人たちが気軽に立ち寄れて、ちょっとぐちったり、気持ちを楽にして帰っていけるような、サロンみたいなことをやりたい」という夢を持って勉強しています。
カウンセラーとして勤めたり、個人で仕事をするのもひとつの方法ですが、専門的な知識をいかしつつ、自分の住む地域の人たちとつながって、地域のためにボランティアに近い形で活動を展開していくというのも、人生後半の生き方として魅力的かもしれません。
産業カウンセラーの資格はとったけれど、実際にはそれをあまりいかす機会がない人も少なくなさそうです。そんな方たちには、いつか身近な地域での活動を始めてもらえたらうれしいな、と思います。
2006年度産業カウンセラー試験結果
・学科試験
志願者 5,253名
欠席者 149名
受験者 5,104名
合格者 3,552名
学科試験合格率 69.6%
・実技試験
志願者 3,193名
欠席者 80名
受験者 3,113名
合格者 2,742名
実技試験合格率 88.1%
総合合格者数 3,554名(総合合格率 65.9%)
一部合格者数 1,206名(学科のみ合格 200名、
実技のみ合格 1,006名)
【
来年度(2008年度)の養成講座】
2008年4月〜10月までの7ヶ月間
全20日間169時間で実施予定
募集要項などは2008年1月にHPで掲載予定とのこと。
(通信養成講座もありますが、そちらは11月から1年の予定で、
すでに始まっています)
詳細は、下記の「養成講座の問い合わせ先一覧」でご確認ください。
社団法人日本産業カウンセラー協会
http://www.counselor.or.jp/Default.aspx
養成講座の問い合わせ先一覧
http://www.counselor.or.jp/guest/course_list.html
(成相陽子)