この日のセミナーのスケジュールは、
1.コーディネーターの濱田静江さん(社会福祉法人 たすけあい ゆい理事長)より挨拶・パネラー紹介
2.「地域から始まる福祉事業」泉一弘さん(いこいの家 夢みん 代表)
3.「車いすから始めるソーシャル・ビジネス」服部一弘さん(NPO法人アニミ 理事長)
4.「小箱ショップで地域をつなぐ」吉田麗子さん(ハートフルショップたんぽぽ 代表)
5.ディスカッション
6.会場からの質疑応答
7.4名のゲストに参加者から個別相談
という予定でしたが、講師のみなさんが熱心に話してくれたのに加え、参加者からの質問も多かったため、結局予定していた終了時刻の午後4時30分にすべては終わらず、最後の個別相談は散会後、希望者が残って行なわれました。
セミナーは、まずコーディネーターの濱田静江さんの挨拶から。
濱田さんは現在、訪問看護ステーション、通所介護事業、デイサービスなどを行なっています。
「私が20年間、波乱万丈でサスペンスに満ちた事業を続けてこられたのは、たくさんのすてきな人との出会いがあったからです。
私は人と接するのが好きで、困ったときはみんなで助け合おうよ、ということをみなさんよりちょっと早く気づいただけだと思っています」と自身のこれまでを振り返りながら、パネラーを紹介。
飾らない濱田さんの語り口に、会場の空気がなごんだようでした。
「地域から始まる福祉事業」泉一弘さん(いこいの家 夢みん 代表)
「いこいの家 夢みん(むーみん)」は、横浜市戸塚区の大規模団地「ドリームハイツ」の住民の高齢化に伴い、住み慣れたこの地域で最後まで暮らせることを目的につくられた団体。交流事業と介護予防が活動の中心です。
歌、昼食サービス、パソコン教室、体操、デイサービスなど月曜日から土曜日までさまざまなプログラムが組まれ、住民の「憩いの場」として利用されています。
泉さんは奥さんが長く病気で、お子さん2人をかかえてたいへんだったときに、この地域の人たちに助けられました。どこかで地域にお礼をしたいとずっと考えてきて、いまの仕事につながったといいます。
地域デビューについても、「自分の役割はどこかにあります」。また男性が地域に入るときの心構えとして「企業人の延長ではだめなんです。男性は、自分は正しいというプライドを持ちがちのように思います。どこかでプライドを脱ぐ覚悟が必要。そうすれば楽しく活動できます。私もいまを十分楽しんでいます」と語りました。
「車椅子から始めるソーシャル・ビジネス」服部一弘さん(NPO法人アニミ 理事長)
’63年生まれの服部さんは、オートバイ乗りでした。’86年、北米大陸横断中に事故にあい、車椅子生活に。リハビリ後にカナダに出かけ、何かに挑戦しなければならない立場に追い込まれてしまったなと実感。
パソコン教室、障害者就労支援などの事業を経て、現在、障害のある人が社会参加できるように、福祉増進・社会教育事業を展開しています。
「障害のある側から言わせてもらうと、“してあげる”というのではなく、『その人の可能性を引き出す』ぐらいの気持ちになって、まちづくりをしていくことを考えてほしいです」。
「小箱ショップで地域をつなぐ」吉田麗子さん(ハートフルショップたんぽぽ 代表)
地域の福祉施設で、高齢者や障害をもつ人たちによる手作り作品を展示・販売。小さな3段ボックス3つを利用。1段1段がお店なので、9つのお店になるとのこと。
「人が好き。昔のように、2〜3世代が一緒に暮らすというのは無理な時代。だからこそ、地域とのつながりを大事にしていきたい。いつか、子ども、若い人、高齢者などみんなのたまり場をつくりたい。」
講師陣は参加者からのさまざまな質問にも丁寧に答えて、時間はまたたく間に過ぎていきました。

【会場前方で、休憩時間も参加者の質問に答える講師の方たち】
私の隣の席に座っていらした参加者、堀角咲耶(ほりずみさくや)さんにもお話をうかがいました。
堀角さんは、東北にある実家を、広さもあるし誰も住まないのはさびしいので、いつか何かの形で地域のために生かしたいと考えています。
そこで準備として、現在ホームヘルパー2級の資格取得のため勉強中。横浜の自宅近くの施設で生活支援員の仕事も始めました。
「実家を、みなさんの集まってくれるような居場所にしたら、きっと両親も喜んでくれると思います」と堀角さん。
自分が生まれ育ったふるさとの、なつかしい思い出のしみこんだ家。その家が、誰かのためになるような形でこれからもそこにあり続けてほしいという堀角さんの思いに、心から共感しました。

【堀角咲耶さん】
セミナーに参加する前には、「社会起業家」という言葉にどこか一時の流行りもののような軽さを感じていた私ですが、講師はみな、ふつうの生活者の感覚で地に足をつけて仕事をしていることが伝わってきました。
地域に暮らしていて困ったこと、問題だなと思うことを、自分らしい方法で少しでも減らしていく・・・。
その道のりは決して楽ではないと思いますが、起業セミナーやサポートもさまざまなところで行なわれるようになってきています。
丁寧に準備をし、自分の身の丈にあったやり方で進めることを忘れなければ、起業を実現できる可能性の高い時代が来ているのを感じます。
(成相陽子)