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一家に一人、救急救命:大切な人のいのちを救う救命講習

2008-01-11 18:06:08

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危険がいっぱいの現代、救急救命は私たちの身近な道具です

21世紀のしょっぱなから始まった「不安の時代」。地震、災害、事故、テロが次々と続くそんな世相を反映してか、救命講習を受ける人が、このところグンと増えています。

実は私も3年前、思わぬ事故に遭いました。終電前のターミナル・ステーションで、走ってきた青年に足を引っ掛けられて大転倒。頭とお尻をしこたま打って「う〜ん」とうなっていたら、「大丈夫ですか? ボク、救急救命ができます」と、声をかけてくれた男性がいました。頭はガンガン、ボーっとしていたけれど、名前も言えるし、住所も言える。「大丈夫で〜す」と小声で答えて、あとは救急車の人となりましたが、それ以来、機会があったら救命講習を受けようと思っていました。

東京の場合、救命講習は東京消防庁と日赤でやっています。ところが、申し込もうとしたら、東京消防庁のも日赤のも満員御礼。結局、2ヶ月待ちでようやく、消防庁の「普通救命講習」を受けることができました。いやあ、こんなに人気があるとは・・・・。

一緒に受けた若いお母さんは、「息子が野球をやっているので、事故があったときのために」と、上級講習まで受ける予定。60代の男性は「私も妻も高血圧なので」と、家族の心筋梗塞や脳溢血にそなえて。40台のサラリーマン氏は「何が起こるかわからない時代ですから」。やはり、家族の「まさかのとき」を考えて受講する人が多いようです。

では、その救命講習。どんなことを、どんなふうに学ぶのでしょうか。3時間の「普通救命講習」を写真とともに紹介しましょう。
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1回の定員は60人。講師は東京救命協会のスタッフです。

1、まずは講義で救命の大切さを学びます

■生死の分かれ目は、6〜7分の差

全国平均でみると、救急車は45秒に一度呼ばれています。救急車が到着するまでは平均6〜7分。実はこの6〜7分が人のいのちを左右します。突然、あなたの家族が倒れたり、目の前で人が倒れたりしたとき、救急車が到着するまでの空白の時間を、あなたが応急手当をしながらつなぐことができれば、その人の生存率はかなり高まります。

ちなみに、心筋梗塞などで心臓が停止した場合、3分経過すると死亡率は50%、呼吸が停止すると10分後には死亡率50%、多量に出血した場合は30分で死亡率は50%になるといわれています。早く応急手当が始まれば、それだけ延命効果は高くなるのです。

成人の突然死の最大の原因は心臓発作と脳卒中

突然死する大人は、毎年平均5〜6万人いるといわれます。その原因の多くは心臓発作(とくに急性心筋梗塞)と脳卒中(とくに脳梗塞とくも膜下出血)です。

急性心筋梗塞では、次のような症状が急にあらわれます。
・胸の真ん中の強い痛み
・肩や腕、あごにかけての痛み
・胸が締めつけられるような圧迫感
・息切れ
・冷や汗
・吐き気
・立っていられない

脳梗塞では、次のような症状が急にあらわれます。
・体の片側に力がはいらない、しびれを感じる
・言葉がうまく話せない
・ものが見えにくい
・反応がない

くも膜下出血では、バットで殴られたような強い頭痛がします。

こうした症状があったら、座らせてから、すぐさま救急車を呼びます。

子どもの突然死の最大の原因は「不慮の事故」

子どもが突然死する原因は、ケガ、溺水、窒息などの「不慮の事故」です。ケガのうち、いちばん多いのは「椅子からの落下」と「交通事故」。また、子どもはわずか数センチの深さの水にも溺れます。窒息も子どもの突然死の大きな原因です。トイレットペーパーの芯を通過できる大きさのものは、子どもの口に入る、といわれています。

2、実地訓練:救命処置は誰にでもできます

人のいのちを救うために行われる救命処置は、「心肺蘇生」「AEDによる除細動」「気道異物除去」の3つで、誰でも行うことができます。約30分の説明が終わったら、さっそく心肺蘇生を実地訓練。参加者を6人〜8人ずつグループ分けし、2つのダミーを使って、まずは「心肺蘇生」から。

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これがダミー。最初はちょっと不気味かも。

心肺蘇生

まず、インストラクターがデモンストレーションをします。

1.周囲が安全かどうか確認しながら、倒れている人の横にひざまずき、肩を叩きながらできるだけ耳元の近くで、名前を呼んだり、「もしもし」「大丈夫ですか」「わかりますか」などと呼びかけ、反応を見ます。

2.呼びかけは、最初は小声で、次第に声を大きくしていきます。目を開けたり、何らかの応答やしぐさがあれば、「反応あり」。なければ「反応なし」と判断します。

3.反応がなければ、大声で助けを求め、やってきた人に「119番に通報してください」「AED(自動対外式除細器)を持ってきてください」と頼みます。最近ではAEDは、多くの公共施設やビル、デパート、会社などの壁についています。自宅の周辺や通勤路では、どこにAEDが置いてあるのか、知っておくといいですね。


4.「気道確保」を行います。反応がなくなると、全身の筋肉とともに舌の筋肉もゆるみ、舌がのどに落ち込んで、空気の通り道をふさぐため、ひたいに片手を置き、もう一方の手の人差し指と中指をあごに当て、あごを持ち上げながら、ひたいをうしろに押し下げ、頭をそらして気道を確保します。

5.呼吸をすばやく確認します。倒れている人の口と鼻先に頬をできるだけ近づけ、相手の胸の動きを見ながら、呼吸を目で「見て」、耳で「聞いて」、頬で「感じ」ます。

6.相手が8歳以上で、気道確保をしても、普段どおりの息がなければ、ただちに胸骨圧迫と人工呼吸を併用した「心肺蘇生」を行います。

「心肺蘇生」は人工呼吸2回、胸部圧迫30回が1クール 

1.まずは人工呼吸をします。感染を防ぐため、人工呼吸用マウスピース(講習の前に配布される)を取り出して相手の口に差込み、あごをあげて気道確保したままで、相手の鼻をつまみ鼻の穴をふさぎます。人工呼吸がためらわれる場合は、胸部圧迫だけでもOKです。

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2.大きく口を開け、空気がもれないように相手の口に密着させ、胸の盛り上がりが見える程度の空気を2回吹き込みます。

3.顔を上げ、一方の手の根元を、乳頭と乳頭の真ん中にある胸骨に平行に当て、もう一方の手を重ねます。

4.胸部圧迫を30回行います。圧迫の速さは1分間に100回のテンポ。

5.この「人工呼吸2回と胸部圧迫30回」を、救急車が来るまで続けます。ほかにも救助者がいる場合は、2分を目安に交代します。

デモンストレーションが終わったら、さて、実地訓練。みんな緊張気味です。「さあ、人が倒れていますよ、どうしますか」インストラクターに言われて、ひざまずきますが、いきなりなので、周囲の安全確認を忘れてしまいます。「はい、安全を確認して」と、インストラクターからの注意。

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最初は声を出すのが恥ずかしくて、小さな声で「もしもし」。「それじゃ、聞こえないよ」とインストラクターに言われて、「もしもし、もしも〜し・・・・・」。だんだん、声が大きくなってきます。

「反応はどうですか?」「ありませ〜ん」「じゃ、次、どうするの?」「ええ〜っと・・・・あ、そうだ、119番に電話してください」「それから?」「????? ああ、AEDを持って来てください」「誰に頼んでるの?」。どっと笑いが起こります。

笑いながらも、みんなの目は真剣です。気道確保もなかなかむずかしく、手順をすぐ忘れてしまいます。あるいは呼吸の確認をしないで、あわててダミーの口に人工呼吸用マウスピースを差し込む人も。「あれれ、そこにいきなり行っちゃっていいの?」「??????」「呼吸のチェックはどうしたのかな?」「あっ、忘れてた」で、また笑いの渦。

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マウスピースを装着して、息を吹き込みますが、最初はスースーもれるばかり。「ほら、鼻をつまんで」「口はちゃんと大きく開けて」「それじゃ、人工呼吸にならないよ」「2回でいいの、5回もやらなくても」。インストラクターの声が飛びます。

ダミーには、人工呼吸と胸骨圧迫の強さとリズムを計る計器がついています。計器のスイッチを入れると、ド、ド、ド、ドという音がして、これに合わせて圧迫すると、ちょうどいいリズム。訓練は人工呼吸2回、胸骨圧迫30回を3回ずつで、終わるとデーターが出てきます。

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「ほらほら、手が胸骨に当たってないよ」「もう少し強く押して」「そんなに早く押しちゃだめだよ」。終わったあとは、出てきたデータを見ながら、インストラクターがまた、どこが悪いのかを説明してくれます。

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次々と交代しながら、「心肺蘇生」の訓練を約1時間。終わるころには、みんなだいぶ、コツをつかんできました。

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これが出てきたデータ。速度も圧迫の強さもほとんど合格です。

AED(自動体外式除細動器)による除細動

休憩のあとは、AEDの使い方を学びます。AEDは高性能の心電図解析装置を内蔵した医療機器で、心電図を解析して不整脈を検出した場合は、除細動(電気ショック)を行い、心臓が本来もっているリズムを回復させます。AEDの使用は、以前は医師、看護師、救急救命士に限られていましたが、2004年から「使用が反復しない」限りは、普通の市民でも講習を受ければ使えるようになりました。

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ここでも、最初にインストラクターが、デモンストレーションを行います。AEDにはいくつかのタイプがありますが、基本的には電源を入れると音声メッセージが始まり、あとはその指示に従うだけと、使い方はとても簡単です。ただ、現場ではいくつかの必要な手順がありますので、講習によってそれを学ぶ必要があります。

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AEDには何種類かありますが、使い方はほとんど同じです。

1.AEDが到着しました。周囲にAEDを使える人がいるかどうかを確かめ、いる場合はその人に操作を頼んで、自分は心肺蘇生を続けます。いない場合は、自分で電源を入れて、AEDの操作を開始します。

2.まず、倒れている人の衣服を開いて胸を出し、2枚の電極パットを1枚は右の鎖骨の下、もう1枚を左の脇から5センチくらいのところに貼ります。1歳未満の乳児にはAEDは使えません。1歳以上の幼児には、幼児用のパットが入っていますが、ない場合は成人用パットで代用します。

3.除細動が必要かどうかの解析を、AEDが自動的に行います。音声メッセージが「傷病者に触れないようにしてください」と言うので、誰も触れていないか確認します。

4.電気ショックが必要とAEDが判断したときには、「ショックが必要です」と音声が指示します。充電が行われ準備が終わると「ショック・ボタンを押してください」という指示がありますので、「さわらないでください」と言いながら、誰も傷病者に触れていないことを確かめてから、ショック・ボタンを押します。「ショックは必要ありません」という指示が出た場合は、ボタンにさわらず、心肺蘇生を続けます。

5.電気ショックを施したあとは、ただちに胸骨圧迫30回、人工呼吸2回の心肺蘇生を続けます。心肺蘇生を開始してからも、2分経過するごとにAEDが自動解析をします。「ショックが必要です」という指示が出たときは、心肺蘇生を中止し、もう一度、電気ショックを与えます。「ショックは不要です」の支持が出たときには、心肺蘇生をそのまま続けます。この手順は救急隊に引き継ぐか、何らかの応答や反応が出るまで繰り返します。

状況によって、AEDを使う前の準備は変わってきます

さて、AEDの実地訓練です。最初はインストラクターが行ったデモンストレーションに沿って、AEDが到着したところから、順番に訓練を行います。「はい、AED到着しました」。すぐにAEDを開ける人がいると、「あれ? 何か忘れてない?」とインストラクター。「?????」「聞かなきゃダメでしょ」「あっ、AED使えますか?」。持ってきた人が答えます。「使えませ〜ん」

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衣服を開いて、電極パットを。「同じ側に2枚貼っちゃ、ダメだよ」と言われ、貼りなおす人も。「電源を入れないと、音声が出ないよ」

音声ガイドに気を取られ、「触れないでください」というのを聞きながら、うなずいてショック・ボタンを押そうとすると、「自分でうなずいてちゃ、ダメでしょ。周りに言わなくちゃ」。こういう細かいことは、ついつい忘れがちになってしまいます。

胸部圧迫と人工呼吸は、すでに1時間の訓練を受けているので、だいぶスムースになってきました。

一回りしたあとは、「シナリオ・トレーニング」です。訓練で習うのはこの4パターン。

・傷病者の体が濡れているとき―濡れたまま電極パットを貼ると、十分に電気ショックが伝わらないことがあるので、乾いたタイルなどで拭く。

・ペースメーカーや、ICD(自動埋め込み型除細動器)が入っているとき―これらの上から電極パットを貼ると、電気をブロックすることがあるので、3センチ以上離して貼る。

・医療用の湿布薬や貼り薬が胸に貼ってあるとき―そのまま電極パットを貼ると電流が心臓に伝わらなかったり、やけどを起こすことがあるので、はがしてふく。

・濃い胸毛があるとき―胸毛の上から電極パッドを貼ると密着度が悪くなり、解析ができないことがあるので、まずパッドを押し付けて胸毛をはがしておいてから、もう1組のパッドを張りなおす。

「は〜い、この人はプールから上がってきたところで倒れてしまいました。じゃ、最初からやってみてください」

倒れている人に声をかけるところから、スタートします。「もしもし、もしもし・・・・。反応ありません」「気道確保します」「呼吸を確保します。見て、聞いて、感じて・・・・、呼吸ありません」「え〜と、次は・・・・あ、そうだ、119番呼んでください。AEDを持ってきてください」。そして、すばやく、心肺蘇生。少々おぼつかないところもあるけれど、流れはわかってきました。

「はい、AED到着しました」と、インストラクター。「AED使えますか?」「使えませ〜ん」。衣服を開き、電極パットを貼ろうとすると、「濡れてるんだから、拭かなきゃだめでしょ」とインストラクター。「あ、そうか」と拭いて、電極パットを貼って、電源を入れ・・・・・。

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「はい、次は公園で倒れたおばあちゃんです。この人は胸にも背中にも貼り薬だらけ」
「この人は駅で倒れていたんですけど、服を脱がしたら胸毛だらけだったのね」
「次は家で倒れたおじいちゃん。ペースメーカーをつけてますよ」

同じように、「もしも〜し」からスタートし、順繰りに訓練しているうちに、また1時間近くがあっという間にたってしまいました。

残りの30分は、駆け足で「気道に入った異物の除去法」と、簡単な止血法を聞いて、3時間の「普通救命講習」は終了です。3年間有効の「救命技能認定証」をもらって、「ありがとうございました!」

やはり繰り返しが大切です

でも、正直なところ、講習を1回受けただけでは、すぐに忘れてしまいます。家に戻ってから、家族相手に「心肺蘇生」を試してみたら、ダミーでは感覚がよくつかめなかった胸骨の位置や、圧迫の程度も、ちょっとわかってきました。やはり、繰り返し講習を受けたり、家族相手に練習したりすることが必要です。

東京消防庁では、この3時間の「普通救命講習」(教材費1400円)のほか、仕事でAEDを使う人向けの「普通救命講習」(4時間:試験付)、「上級救命講習」(8時間:ケガの手当てや運搬方法を含む=教材費2600円)、「普通救命再講習」(2時間20分=教材費1200円)、「上級救命再講習」(3時間=教材費1600円)があり、「応急手当指導員コース」(8時間×3日=教材費1万2000円)を終了すれば、救命講座を教えることもできます。

また、日本赤十字社でも、同じメソッドの救急法の講座があります。

東京消防庁では、20人以上のグループには、出張講習を行っています。かかる費用は教材費のみですが、事前の申し込みが必要です。詳しくは、東京消防庁企画調整部広報課(電話:03−3212−2111 Eメール:tfdinfo@tfd.metro.tokyo.jp)か、東京救急協会へ。

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