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上野千鶴子さんの『おひとりさまの老後』で読む目からウロコの老後。著者インタビューのおまけつき

2007-10-17 17:12:25

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「結婚していようがいまいが、だれでも最後はひとり」―。

うまい! タイトルの『おひとりさまの老後』もうまいけれど、この表紙のコピーだけでも手に取ってしまいます。さらに「これで安心して死ねるかしら」の追い討ち。20万部の快進撃だそうです。

「面白いよ。こっちはイマイチだけど」と、女ともだちがポンと2冊の本をくれました。1冊が上野さんの最新刊の『おひとりさまの老後』(法研)、もう1冊の「イマイチ」のほうは精神科医・香山リカさんの『老後がこわい』(講談社現代新書)。両方とも広告を見たときから、ちょっと気になっていました。とくに『おひとりさま・・・・・』のほうは、タイトルを見たときから・・・。さっそく読んでみることにしました。
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みーんなシングルの時代が、すぐそこに

毎日新聞の記事に、この本を書いたのは「札付きのウエノチズコ」と別人と思った人がいるらしい、とありました。京都の平安女学院短期大学助教授時代、『セクシイ・ギャルの大研究』で華々しく登場して以来、フェミニズムの論客として活躍してきた上野さん。『セクシイ・ギャル・・・』を出版した今から25年前、取材をしたことがあります。とてつもなくイキがよくてシャープだけど、ピンクの花柄ブラウスを着たおしゃれのし具合が、なんだかとてもミスマッチで、やんちゃでかわいいツッパリ先生という印象でした。

その上野さんもはや59歳。イキがいいのも、シャープなのも、やんちゃなのも、人づてに聞くとおしゃれなのも、変わっていないようです。ただ、変わったのは、親の介護を通過して、「自分の老後」がチラつき始めたこと。私も同年輩なので、ひとごとじゃありません。

上野さんが『おひとりさま・・・・』を書くきっかっけになったのは、香山さんの『老後がこわい』だったとか。その『老後が・・・・』を読んでみると、冒頭を開くなり、ひとり暮らしの友の死を語り、「誰が喪主になるのだろう・・・」とシミジミ。

うわっ、暗い!! それに続いて、「明日は“わが身”」、「自分の老後を想像すると」、「いつまで働けるか―再雇用の現実」、「仲良しだった親が死んだら」「孤独死なんて言われたくない」・・・。なぜか気弱になった(というか自分の気持ちにとても正直に沿った)香山さんの、老後への暗〜い不安が、これでもかとばかり続きます。

でも、これって40代のアプローチかも。フム、上野さんが「そんなこと言わないでよ」と『おひとりさま・・・・』を書く気になったのも、私の女ともだちが「イマイチ」と言ったのも、人生を少しばかり長くやった60前後のオバサンにとっては「うん、アプローチがちょっとちがうんだよね」ということだったのでしょう。上野さんの本を読んで「そうなのかなと思うけど、ピンとこない」と言っていた40代の女性がいましたが、逆に、60前後のオバサンにとっては、上野さんの本はビンビンとくるし、読後の元気も出てきます。

「老後」のスキルとインフラを満載

「なあーんだ、みんな最後はひとりじゃないの」に始まるこの本は、なんとも読みやすいのが特徴です。サラサラサラッと読めながら、ふむふむ、はた! と考えさせる。思索家&プロデューサーの松岡正剛さんが、彼女の文章について、とてもうまいことを書いています。

「ともかくチャーミングなのである。賢くスマートで、大胆で高速で、それでいてちゃらんとコケットリーで、ぽらんと軟派の遊びをいつだって挟んでいる。そのちゃらんハードもぽらんソフトも、どこで浮いてどこで沈むかが、めっぽう研ぎ澄まされている。しかも快速感がある」「まことに明快、しかも大事な説明はゼッタイに省かない」

上野さんがこの本でターゲットにする“おひとりさま”は、シングルばかりではありません。「おかえりなさい、シングルアゲインの女たち」と、元“おふたりさま”も、未来のおひとりさまもしっかり巻き込んで、「そんなこと、知ったこっちゃない。せいぜい女に愛されるよう、かわいげのある男になることね」と、冷たく突き放した男たちにも、「老後」を楽しく生き抜くスキルとインフラを提供しています。

香山さんの本がリアリティに欠けている、と映ったのは、データを豊富に取り入れ、新聞記事もたっぷりちりばめているけれど、「現場」があまりないことでした。お役人がよくやるデータのトリックや、机上の制度づくり、新聞記事の底の浅さを、よ〜く知っているオバサンたちは徹底した現場主義ですから、心やからだに訴える実例がないとピンときません。

その点、『お一人様・・・』は実例にあふれています。フィールドワークで調査した介護の実態、ちょっとアッパー・ミドルの例が多いのが、ロアー・ミドルの私としては引っかかるけれど、老年期を迎えたさまざまな女性たちの肉声インタビュー、そして、文中で紹介される“人生の先輩”の本をはじめとする30数冊の「お役立ち本」。

「どこでどう暮らすか」(第2章)、「だれとどうつきあうか」(第3章)、「おカネはどうするか」(第4章)、「どんな介護を受けるか」(第5章)、「どんなふうに『終わる』か」(第6章)。そして、自分が死んだら、京都の大文字山の「大」の文字が「犬」になる位置に、すでに埋めてある愛鳥と愛犬のところに散骨してほしい、と書き、そのあとを「おひとりさまの死に方5条」でしめくくる上野さんのこの本を読みながら、ウチの母の口癖を思い出しました。「立つ鳥、あとを濁さず」。そうよね〜。

老後がこわくないわけはない。でも、コワイ、コワイと怯えていてもはじまりません。さぁて、私もおひとりさまの“老後”に向けて一歩踏み出しますか。くじけたら、上野さんの言うように「お願い、助けて」って言えばいいんだもの。        
(中澤まゆみ)

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さて、この本を読んでいるとき、嬉しいプレゼントをもらいました。書店向けの新聞で記事を書いている友人の芦原さんによる、上野さんへのインタビュー記事です。とてもいい記事だったので、「転載させてくれない?」と聞いたら「いいよ」と快諾してくれました。芦原さん、ありがとう!!

女性学・ジェンダー論の分野のパイオニアとして、つねに社会に影響を与え続けてきた上野千鶴子さん。両親の介護・看取りを経験し、自らの老いも視野に入れた上野さんは、近年、ケアの分野を研究の対象としている。その延長線上で書いた『おひとりさまの老後』は、多くの人びと、とくに中高年の女性たちの関心と共感を呼んでいる。これからも高齢社会に様ざまなメッセージを送り続けていくという上野さんに、本書について語ってもらった。         (芦原真千子)

―25年ぶりの書き下ろしで初の単著ということですが、なぜ今、本書を書こうと思われたのですか

いくつかの理由、きっかけがあります。まず私自身が50の坂を越え、この先どうなるの?という思いが切実になってきたのとほぼ同時期に、介護保険制度ができた。ここ数年は、介護保険を含めたケアの問題を研究の対象にしてきました。が、研究の仕事関係の文章には“私事”は書けない。でもぜひ私事の文体でも語りたいという気持が強くなり、心にガスがたまってきてました。

そんななかで、編集者の弘さんに出会ったことが大きかったですね。今までは出版社から書き下ろしを頼まれると、『時間的にとても無理、10年待って』なんて断ってたんです。だから編集者とは、基本的に友人関係はつくらないように(笑)。

でも弘さんとは友だちモードに入ってしまい、一緒に遊んだりおいしいものを食べに行ったりというつきあいをするうちに、ぜひこういう本を作ろう、作らなきゃという気運が高まりました。だからこの本は私にとって、これまでの足跡から自然に生まれた幸せな副産物といえます。

―香山リカさんの『老後がこわい』(講談社)という本にも、影響を受けたとか。
 
そう、私より10歳も若い人に『老後が怖い』なんて言われたくない。もし彼女たちの老後が怖いんだったら、われわれの老後だって怖いんだから。それで『老後は決して怖くないよ』というメッセージを、送らなきゃという使命感が俄然強まった。だからリカちゃんの本は、いわばロケットの推進力(笑)。

―そのメッセージを送る相手の年代は、どのあたりを中心に考えていましたか。
 
基本的には、自分と同年代の団塊世代。もうひとつは30代のシングルたち。彼女たちに、勝ち犬だろうと負け犬だろうと、長生きすればみーんなシングル、ひとりで生きるのが基本の時代が来るんだから、それでオッケーと言いたかった。

―それがフタを開けてみたら、世代を問わず読まれ、支持されて、たちまちベストセラーになりました。

すでに高齢の方も含めて、みんなそういう言葉を待っていたんですね。ひとりで生きると言ったって、本当にひとりでは生きていけない、家族にも誰にも頼らないで最後まで頑張ると言い切れるほどの自信はない、不安だらけのなかで、それでも大丈夫ですよ、と言ってくれる言葉を。

しかも内容は“脱力系”で、PPK主義(ピンピンコロリ=前日まで元気で、ある日コロリと逝くのが理想という考え方)とは、ある意味対極の価値観。どうしても自分で解決できなければ、最後は『お願い、助けて』と言おう、と謳ってるくらいですから(笑)。
 
―本書が話題になるにつれ、書店でトークショーや講演会をされたり、ご自分でも書店回りをなさったそうですが、そういう経験は初めてですか。
 
サイン会は『スカートの下の劇場』(89年、河出書房新社)のときにもやりました。本を作るときには、私はつねに伴走者(編集者)と一緒に商品を作っているという意識をもっていて、その商品は読者に届いて初めて価値があるとも思っています。だからマーケティング訴求や販売にも積極的に協力しますよ。

『スカート〜』のときは、文庫も含めて48万部ぐらい。大体において“色モノ”“下ネタ”系は強い(笑)。でも“老後”がテーマでこんなに伸びるとはね。わりに早い段階で、編集サイドと協議してタイトルにつけた、『おひとりさま』という言葉も、共感を呼んだのでしょう。
 
―サイン会などで実際に読者と接してみての反響、感想は。
 
多くの方が、『これを読んで安心しました』と言われますが、なかには80代の方から『アンタみたいな“年寄りの駆け出し”がこんな本書くのは早すぎる』とお叱りを受けたり(笑)家族に対して、お前たちの世話にはならないと突っ張ってきたある高齢の方が、本を読んだ後『他人さまの世話になって、長生きしてもいいんだと初めて思った』と言われたのは印象的でした。
 
この本は、これまでの私の本とはちょっと違う売れ方をしていて、一度に5部、10部といったまとめ買いをする人が多い。友人知人にプレゼントするということらしいですが、これも予想外でしたね。

―男性も結構買っているようですね。

男性にとってもひとごとではありませんからね。その影響か、中央公論新社の依頼で、『中央公論』11月号(10月10日発売)に「男おひとりさまの老後」をテーマにした一文を書きました。とくに団塊以上の男は、自分の老後は妻が看取ってくれると楽観的に考えているフシがありますが、色んなデータを出して、『それは甘いよ』と(笑)。まあ本格的な“男おひとりさま本”は、これから意識を変えた男性に書いてほしいですね。

―今後、ご自身が歳を重ねる過程で、またこうした本を書いて行こうと思われますか。この本によって多くの人が、それを上野さんに期待すると思いますが。

私はどんな研究にも、そのベースに“当事者性”があって然るべきと思うので、今後も老いやケアといったテーマを追い続けるつもりです。その過程で、また何か書くかもしれません。今のところ、介護を受ける立場になった高齢者が、その視点から書いた本はない。日本では高齢者の権利意識が弱く、これまで市民運動としての高齢者運動といったものはなかったんです。

でもこれからは、それが必要だと思います。だからその声を上げるためにも、自分が要介護になってみたいな、なんて考えるんですよ。その立場になって初めて、それまで見えなかったものが見えるかもしれないし、考えが変わるかもしれない。

変われるというのは人間にとってすばらしいことで、10年、20年たって考えが変わったら、それは成長の足跡として受け止めればいい。そういう意味で、歳をとっていくのは楽しみでもあります。

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