よしだ・ゆうひ
東京都生まれ。高校卒業後、フランスへ留学し、パリの映画専門学校などで学ぶ。
帰国後、フリーランスの映像ディレクターとして旅番組『遠くへ行きたい』などの制作に携わる。
第二子を助産所で出産したことをきっかけに、
ドキュメンタリー映画『1%の風景』(2023年11月公開)を初監督。
聞き手・構成/濵田研吾 写真/堂本ひまり
病院やクリニックではなく、
助産所(※1)での出産や自宅での自然分娩を選択する人は、
日本ではわずか1%。現在公開中の映画『1%の風景』は、
妊婦と助産師、その二人三脚ともいえる日々をみつめたドキュメンタリーです。
監督の吉田夕日さんも、“1%の風景”をみつめたひとりでした。
【のんびるインタビュー】 産むとき、産むひと。 そばに誰かが、の風景 吉田夕日さん(映像ディレクター/映画監督))
<「待つ」という視点>
─映画『1%の風景』では4人の妊婦の日々(妊婦健診、出産、産後)を通して、
助産師の渡辺愛さん(※2)と神谷整子さん(※3)の姿を追っています。
私は出産に立ち会ったことがなく、お産があんなに静かなものとは知りませんでした。
映画やドラマだと「あとちょっと!」みたいに周りが励ますイメージがあるかもしれません。
でも実際は、赤ちゃんが産まれる寸前まで、とても静かな時間が流れているんです。
助産師さんも「とても静かなのよ」とみなさん言います。
最初のお産のシーンを撮影しながら、
助産師さんの仕事の深みのようなものが映っていると感じました。
映画でもまず、「産む」ということを見てもらおうと考えました。
言葉で説明するのではなく、
まるで出産の場に居あわせたかのように時間を共有してもらえる構成にしたかったんです。
─陣痛の始まった妊婦さんのそばで、神谷さんが寝ころんで寄り添う姿が印象に残りました。
妊婦さんをひとりにさせず、「そばにいるよ」と存在で示す。
その寄り添い方が自然で、押しつけがましくないですよね。
神谷さんはカリスマ的な助産師さんで、妊婦さんに厳しく接することもあります。
でもお産のときは、とにかくやさしいんです。
─渡辺さんも神谷さんも、産まれるときを「待つ」という視点で共通しています。
「待つってどういうことなんだろう」とおふたりを撮りながら考えました。
妊娠、出産というテーマでもいろんな描き方があります。
私の視点は「待つ」でした。
この映画では、日常の延長線上にあるものとして出産を描きたかったので、
助産師さんと妊婦さんの何気ない会話を大切にしました。
─そのやりとりのなかから、妊婦さんそれぞれの素顔が浮かんでくる。
喜びの表情もあれば、不安げなときもある。
私自身、妊娠と出産は大きな喜びであり、戸惑いと不安もありました。
それも含めて、新しい命と向き合っていく。
一人ひとりのお産は、世界の片隅で起きる小さい出来事かもしれません。
だからこそ、妊婦さんの表情や助産師さんとのやりとりを撮りたかった。
妊娠、出産、産後という時間の流れを記録して、作品にしようと考えました。
助産師さんは、目の前にいる母子一人ひとりに対して精いっぱい尽くします。
そして同時に「産むのはあなたよ」と女性の主体性も大事にしている。
そこにお互いへの信頼感が生まれ、妊婦さんは安心して新たな命を迎えることができるんです。
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◆『のんびる』2024年1・2月号 目次
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『1%の風景』監督・撮影・編集:吉田夕日/
撮影:伊藤加菜子/出演:渡辺愛(つむぎ助産所)、
神谷整子(みづき助産院)ほか/配給・宣伝:リガード/
製作:SUNSET FILMS/2023年/106分