【のんびるインタビュー】蹴ったボールの向こうがわに

すずき・なおふみ 1975年生まれ。
一橋大学大学院社会学研究科教授。
東京大学とグラスゴー大学大学院で社会学などを学び、
余暇、スポーツ、アートと社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)の関係を研究。
2012年より、ダイバーシティサッカーと関わる。
ラクロス日本代表ヘッドコーチも務める。
写真/堂本ひまり
おもにフットサル(※1)を通して、
スポーツによる居場所づくりに取り組むダイバーシティサッカー協会。
社会的困難を抱えた人たちが集い、ともに汗を流しています。
蹴ったボールの先に見える風景、そして、社会とは─。
【のんびるインタビュー】 
蹴ったボールの向こうがわに  
鈴木直文さん(NPO法人ダイバーシティサッカー協会代表理事)
<みんなが遠慮しないで楽しむ>
─都内で先日催されたダイバーシティサッカー・フェスティバル(※2)を観戦しました。
宮城、東京、千葉、大阪、韓国、ミャンマーなど国内外16チームが出場し、
チームの個性も人数もバラバラで、楽しかったです。
ありがとうございます。今回のフェスでは、リーグを2つに分けました。
チームが力量を思う存分に発揮し、
ハイレベルな試合をするAリーグ。
誰もが参加しやすく、みんなでプレーを楽しむBリーグ。
「ガチ」と「ゆる」という感じですね。
Bリーグは、その場でルールを多少変えてもいいし、
両チームの合意があれば人数(1チーム6人制)も変えられます。

フェスでは、「みんなが遠慮しないで楽しむ」
「お互いに思いやりをもってプレーする」などの共通ルールがあります。
何を大事にする大会なのか、
そのメッセージが一番の価値で、
そのためにはルールが少しくらい狂ってもいい。

─試合には審判でなく、「ゲームコーディネーター」が立ちあっていました。
チーム数と試合数が多く、
審判を立てるとその人ばかりに負荷がいきますし、
そもそも人数が揃いません。
そこを逆手にとり、運営側、審判、選手と役割を明確にわけず、
それぞれが主体となって場を作っていく。
たとえ審判がいなくても、
互いに尊重しあいながらプレーすれば、試合は成立します。 

─それが出会いと交流の場にもなる。  
私たちの協会では、「スポーツを通じた居場所づくり応援」
を活動の一つの柱にしています。
選手にとっては、大会に参加するだけで新たな出会いがあるし、
世界も広がります。対戦相手も、
「初めてのチームどうし組み合わせよう」
といった視点を大事にしています。
新たな出会いが、困難を抱えた人を刺激し、
支援団体の取り組みに生かせることもあります。 

人と話すのが苦手な参加者が、最後までフェスにいてくれて、
「何かやることはありますか?」と小声で言ってくれたんです。
「この人なりに、この場を好きでいてくれている」と思えて、
とてもうれしかったです。

(※1)ピッチとゴールサイズがサッカーに比べて小さく
、試合時間も短い。試合人数もサッカーより少なく、
ゲーム展開が早いぶん、選手一人ひとりにボールが回りやすい。 
(※2)2024年3月9日、ミズノフットサルプラザBumB(東京都江東区)にて開催。

ダイバーシティサッカー・フェスティバル
(2024年3月9日、ミズノフットサルプラザBumB、東京都江東区)
写真/濵田研吾
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