世界の平和を祈りつつ、 こしらえた400の豆料理メニュー (特集「豆でまぁるく」より)

豆屋・楽天堂代表 髙島千晶さん

たかしま・ちあき 1963年兵庫県生まれ。京都市で豆とスパイスの専門店を営む。
1997年、季刊『らくてん通信』編集長。2002年から豆と豆料理を通して
新しいライフスタイルを創造する「豆料理クラブ」を主宰。
2003年、京都に豆屋・楽天堂を開店。同時にワークショップを開催。
2011年より「小さな仕事塾」を主宰。
2019年より、隣家をゲストハウス 楽天堂 ANNEXとして経営する。

京都市上京区・西陣のはずれ、近代住宅と古都の町家が交じる閑静な住宅街の一角。
入り口際の壁に貼られた墨痕鮮やかな「Ceaze fire now 停戦」のビラが
ひときわ目立つ「豆屋・楽天堂」。
店主の髙島千晶さんにうかがった「豆と平和の物語」をどうぞめし上がれ。
聞き手・構成/斎藤一九馬 写真提供/豆屋・楽天堂

きっかけは9・11米国同時多発テロ
─髙島さんが豆と豆料理に関わるようになったきっかけをお教えください。
髙島 2001年の秋、9・11米国同時多発テロが起きたころ、アメリカに住む友人と
いろんな料理レシピを交換していたんですね。
時代の状況が今と似ていて、社会が暗く沈んでいたときです。
子どもが0歳と5歳。山口県でやっていた事業も閉めるまでに追い詰められていました。
これから生活が苦しくなるのが目に見えていて、とても心細かった。一方でアメリカの友だちも社会の混乱の中で
同じように心細い思いをしていました。そんな2人でレシピを交換しているなかで見つけたのが
世界の豆料理の数々だったのです。野菜と豆だけでこんなに満足できる食事がつくれるってすばらしい。
これから貧乏になる自分にとっては心強い味方になると思ったのです。
─世界の難民キャンプには必ず豆料理があると聞いたことがあります。
髙島 そうなんです。交換したレシピの一つに、イラクやパレスチナでも食べられている中東料理の
「ホンモス」というひよこ豆のペーストがありました。これがほんとうにおいしいんです。
アメリカがアフガニスタンを攻撃したころには、アフガニスタンの豆スープを知りました。
そうして出会った世界の豆料理づくりが当時の私を支えてくれたように思います。

京都楽天堂を拠点に平和を訴えたい
─山口県で会員制の豆料理頒布会をスタートさせましたね。
髙島 楽天堂自体は1997年に、経営していた洋品店「ベネトン山口」の片隅に併設する形で始めました。
そこでフェアトレードとオーガニック商品を売っていたのですが、そのときの経験から
豆はただ置いているだけでは売れないし、なかなか料理してもらえないこともわかりました。
洋品店を閉じて3日目、ふと、ひらめいたんです、豆とスパイスとレシピ集を
頒布会のような形でお客さまにお届けしたら、豆料理を普及させられるかなと。直感です。
それで、2002年に会員制の
「豆料理クラブ」を立ち上げました。
最初の会員は30名弱。豆と豆料理を通して新しいライフスタイルを創りませんかと呼び掛け続けて、
京都に来てから300人ほどに増えました。
─豆について勉強されたんですか。
髙島 図書館に通い、豆や豆料理について勉強し、家では毎日豆料理をつくりました。
わたしはもともと料理が不得手だったのですが、豆料理をつくることでそのハードルがぐっと下がりました。
おかげでわが家の食費もずいぶん助かりました。そうした経緯があって、2003年3月に京都へ越してきたのです。
─どうして京都だったのですか?
髙島 私、商売は好きですが、商売って消費を煽るものなのかなぁという疑問をずうっと持ち続けていました。
とくに2人の子どもにはお金を使わない暮らしの楽しみを伝えたいという思いがあって、次は消費を煽らなくて済む
仕事がしたいと思ったんです。豆はその意味でもぴったりの商材でした。京都を新天地に選んだのは、
まず夫が京都で野口整体を学びたいと言っていたのと、家賃のことを考えても、子育て中ということを考えても、
職住一致で暮らしたいと思ったからです。京都の町家は家賃が安いし、家で商売ができる間取りなので、
わたしたちにはうってつけでした。夫が探しに来て、1件目のこの物件を即断で決めました。
─お店の前に「ガザのジェノサイドをやめて」というメッセージが貼ってありますね。
髙島 9・11のときに、すごい貧富の格差が社会を不安定にしていると感じました。
やがてアフガニスタンが報復の対象になったころにペシャワール会(※1)に入会したんですけど、
中村哲さんからいろいろ報告が来る。アフガニスタンは本当に貧しい地域で、そこへさらに爆弾を落とそうとしている。
もう、 自分たちだけが豊かな暮らしをするというのは無理があると思ったんです。
爆弾が飛び交う空の下にも生活があって台所があります。豆を売ることで戦争反対の気持ちを伝えたい。
越してきて3日目に軒先に丸テーブルを出して豆を並べ、翌月には中東の豆料理レシピを印刷して
興味のある方にお渡ししました。中東の食文化からわたしたちはたくさん恩恵を得ているので、それも伝わるといいなと思いました。

・・・続きは『のんびる』1.2月号特集をご購読ください。
◆1.2月号目次◆
【バックナンバーのご注文】
 富士山マガジンサービスよりご注文ください。

【定期購読(年6冊)のご注文】
・パルシステム組合員の方:ログインしてご注文ください(注文番号190608)
・パルシステム組合員でない方:こちらからご注文ください

 

関連記事

ページ上部へ戻る