
毎週火曜日 共にするワークショップと食事会
NPO法人 タネとスプーン/ 居場所「カドベヤで過ごす火曜日」(神奈川県横浜市)
日本三大寄せ場のひとつとして知られる横浜市中区の寿地区。居場所「カドベヤ」は、
そこからほど近い川を挟んですぐの立地。「誰かとちょっと話したい。
何か楽しいことを誰かと⼀緒にやってみたい。⼀緒にごはんを⾷べたい。
そんな気持ちになったらいらしてね」と呼び掛けて、はや15年目を迎える。
文・写真/斎藤一九馬
想いを「寿地区」の住人たちへ
正月気分も抜けた1月の下旬、15年ぶりに横浜市中区の寿地区を訪れた。
今回と同様、そのときも本誌『のんびる』(2009年12月号)の取材であった。当時の記憶はもう薄れているが、
まだ午後の3時というのに飲み屋の看板に灯りがついている路地、場違いに豪華なつくりのパチンコ店、
対照的に簡素なつくりの宿泊所(ドヤ)など、ところどころに昭和のにおいが消えずにいる光景がちょっと懐かしい。
まだ陽が高いせいもあり、いわゆる「危険な雰囲気」はまったくなく、静かだ。近くを流れる中村川の橋を渡ると、
めざす「カドベヤ」があった。「カドベヤで過ごす火曜日」という団体名が示すとおり、毎週火曜日の夜、
その寿地区の住人をふくむ異なる背景をもつ人たちが集まる「居場所」である。中では代表の横山千晶さんが
ワークショップの準備に忙しくしていた。その合間を縫って話をうかがった。
横山さんは慶應義塾大学の教授。法学部で英語を教え、19世紀のイギリス研究でも知られる学究である。
「幼少期を過ごした北九州の炭鉱町と19世紀イギリスの労働者教育の研究から、横浜市の寿地区に惹かれました」
横山さんは「だから、寿地区に初めて来たとき、懐かしさを覚えました」と笑顔になった。今、寿地区には120件以上の宿泊所が立ちならび、およそ6500人にのぼる住民の多くは、65歳以上の高齢男性の生活保護受給者である。
横山さんによると、現在の住民は大きく2つに分かれるという。「かつては日雇い労働に従事し、高度成長期の日本を支えてきたものの、健康を害して身寄りもなく、寿地区に住むようになった第1世代。それと、突然の病気などさまざまな理由から家族の支援を受けられないままこの街に来ざるを得なくなった第2世代。最近では若い生活保護受給者の姿もめずらしくなくなりました」そうした生きづらさを抱えた人々の様子は、19世紀イギリスの産業革命で生み出された階層の分断とも重なる。「2009年に『カドベヤ』を『コトラボ合同会社』との共同で設立し、2010年から仲間たちと運営を始めました。今年で15年目になります」これで、慶應の英語の教授がなぜ寿地区で? という謎が解けた。では、寿地区へと向いた横山さんとその仲間たちの想いは、居場所「カドベヤ」の中で、どう具体化していったのか。
生きることの安心感と豊かさ
居場所「カドベヤ」で過ごす時間は、19時~21時までの2時間ほど。「19時から20時は頭と⼼のストレッチ。体を動かしたり、何かを作ったり、話をしたりする1時間のワークショップです」(横山さん)。それが終わると、待望の夕飯の時間。「ワークショップが終わったら、栄養と愛情たっぷりの、みんなで⾷べる⼿づくりごはんの時間です。『虹⾊畑クラブ』(※1)のお野菜などを使って美味しいごはんをつくります。料理のお手伝い、配膳、そして後⽚付けもみんなでやるのがカドベヤ流です」
今夜のワークショップは手づくりの福笑い
・・・続きは『のんびる』3.4月号特集をご購読ください。
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