わが家の梅干しものがたり(『のんびる』6月号特集より)

2015年6月号梅干し物語のサムネイル
 

パルシステムが発行する月刊『のんびる』
6月号特集「手作り、手仕事、生きる知恵」 より

わが家の 梅 干しものがたり 取材中!
パルシステムでは梅を使った保存食づくりの魅力や楽しさを広めようと、2007 年から、組合員の皆さんが自慢の梅干しを持ち寄る「手作り梅干し交流品評会」を開催。9回目となる2014年度は95点の梅干しが応募され、25点(赤梅干し11点、白梅干し14点)が一次審査を通過、入選しました。3月14日(土)には、入賞者が手づくりへの思いを報告しあう交流品評会がパルシステム連合会本部(東新宿)で開かれ、『のんびる』編集部も参加。後日、入選したおふたりを訪ね、お話を伺いました。

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林さんの「わが家の梅干しものがたり」
父の遺した道具とレシピ 
 

しょっぱかったけれど、おいしかった梅干し

 閑静な住宅街にある林さんのお宅にお邪魔すると、立派な梅の木が出迎えてくれました。林家の梅干しものがたりは、この梅の木から始まります。
「実家の梅を、ここに移植したんです。父が大切にしていましてね。梅干しにするには実が小さいんですが、今でも梅がたくさん成るんですよ」林さんの梅干しの手づくり歴は11年。
そのエピソードを、懐かしそうに語ってくれました。
「父は千葉の農家の出身で、横浜に住んでいたんです。私の記憶では、退職してから梅干しづくりを始めました。手仕事が好きだったのか、梅を天日干しする台も、そうめんの木箱をばらして、自分で手づくりしたものです。もう30年以上も前の話です」

 

 林さんが、「梅干し」と書かれた分厚いファイルから出してくれたのは、お父様手書きのメモ。「57年7月我が家梅干漬方」と書かれています。「父の梅干しは、おいしかったですよ。ただ、今から思うとしょっぱかったかな。30年前に父が漬けた梅干しを、今でも残してあるんです。干からびて、塩をふいていますが、お茶漬けに少しだけ入れると、おいしいんです」
昭和60年にお父様は亡くなり、梅干しの味を受け継いだのは、林さんのお母様でした。梅を仕込む樽も、天日干しする木枠も、そのまま使い続けました。
「父の梅干しづくりを見ていた母が、それからは毎年漬けました。私の娘が、梅のへたとりを手伝ったりもしていましたね。ところが20年ほど経ち、母が病気になり、自宅で療養することに。自分のことより、漬けた梅干しが心配みたいで、『おれが漬けるから、寝てなよ』とよく言いましたよ」

 

 平成16年の夏、お母様が他界。家には6月に漬けたばかりの梅干しが遺されました。
「母が漬け込んだ梅をそのまま天日干ししたのが、私の梅干しづくりのきっかけです。母がせっかく漬けた梅を、無駄にはしたくなかった。初めてでもおいしかったですよ。それからは毎年、自分で漬けるようになり、どんどん梅干しにのめり込んでしまって(笑)。漬けるのは、赤梅干しが中心ですね」
 2010年からはパルシステムの「手作り梅干し交流品評会」に出品。審査委員のアドバイスを受けながら、梅干しの見た目、味、食感のレベルアップに努めます。
「梅干しづくりは深いです。梅の産地も違えば、梅の種類も違う。『今年は氷砂糖を加えてみよう』とか、自分なりにテーマを変えて、楽しんでいます。梅干しを漬ける組合員さんは多いと思いますし、自慢の梅干しを自由に持ち寄って味見したり、情報交換できるような場があれば、うれしいですね」

手づくりが、生きる自信に

 梅干しだけではなく、夏野菜を庭で育てたり、味噌を仕込んだり、庭の剪定をやったり、手仕事が好きな林さん。昨年退職し、仲間で農園を借りて野菜を育てたり、蕎麦打ちにも挑戦したいとか。「農家出身の父の血を継いでいるのかな」と笑います。
「手づくり、手仕事を通して、季節感を感じることができますよね。冬は味噌の仕込みどき。春になれば夏野菜の準備。それが終われば梅干しの季節。柿とか、季節によって剪定する木も変わります。四季折々の匂いを、手仕事を通じて感じる。これも生きる知恵だと思います」
「他人の手づくりもいいけれど、自分の手づくりだからこそ、楽しみが無限大に広がる。こればかりは、買って得られる喜びではない」と林さん。
最後に、
「人間って、いろいろなことができると思うんです。ただ、手づくりは、できるうちに始めないとダメですよね。でなければ、震災にしろ、天候不順にしろ、何かあったときに役に立たない。手づくりの意識をいつでも持っていると、それが生きる自信につながります。そういえば、母と私、両方の梅干しづくりを見た娘が、『お父さんとは別に漬けたい』と言っているんです。うまくいくかなあ。お手並み拝見です(笑)」

 

写真提供/林さん

▼林さんの梅干しデータ

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田中さんの「わが家の梅干し物語」
自分でつくれば、誰かに伝わる 
 

実家の母へ、SOS!?

 田中さんにお会いしたとき、その手元に見覚えのある表紙が……。マトリョーシカが描かれた『のんびる』2013年2月号です。田中さんは、『のんびる』読者さんでした。
「4月号の桜特集で紹介されていた桜染めとか、『いいなあ』って。自分で染めものをするのが好きなんです。玉ねぎの皮をいっぱい煮込んで、焙煎して、ふきんやTシャツに染めていく。Tシャツはすごい柄に染まっちゃって、恥ずかしくて着れませんでした(笑)。今日は梅干しの話ですよね」
 田中さんの梅干しの手づくり歴は12年。その前から、梅酒を漬けていたそうですが、梅干しには関心がなかったそうです。「娘が10歳の頃、『手づくりの梅干しは一粒一粒、愛
情がわくよ』と友人に勧められたんです。それを聞いて、気楽な気持ちで始めました。ただ、天日干しに使うざるは、一番大きいのを買いました。『小さいざるだと、梅が干しきれないかな』と(笑)」
 梅干しを漬け始めた田中さんがまず思い出したのが、離れて暮らすお母さんの梅干し。でも、詳しいレシピはわからなかったそうです。
「子ども心に、母が漬けた梅干しはきれいだなあと思っていました。梅はピンク色、しそは紫色で、自分で漬け始めたとき、『どうやったら、あんなきれいな色になるの?』と母に電話しました。すると、『わかんない』と(笑)。目分量なので、レシピもないし、ノートもない。ただ、『しそはよく揉んだほうがいい』と教えてくれました」。
 田中さんも漬けるのは赤梅干しが中心。最初は3キロから始め、5キロに増やし、2014年度は8キロの梅を仕込みました。レシピはパルシステムをお手本にしているそうです。

 

「毎年、梅が届くとうれしくて。昨年は、私が住む埼玉・越生産の梅と、故郷が九州なので長崎五島の塩で仕込みました。ふたつの地元を仲良くさせようと(笑)。しそは群馬産で、塩分を調整して、もみしそにしています。しそが出回る時期を見定め、梅を漬けるタイミングが難しいんです。しかも、毎年同じように漬けているのに、いつも出来が違う。梅干しって、不思議ですね」
「手作り梅干し交流品評会」には、梅干しの出来に自信が持てた年だけ応募。5回目の応募となる2014年度は出来がよく、3月14日の交流品評会で、「手作り梅干し10年以上」賞を受賞しました。

終わりがなく、つながる楽しみ 

取材の途中、田中さんから、「もしよかったら、召し上がってください」とうれしい贈り物が。お手製の梅干しと小梅の塩漬けがガラスびんに詰められ、チャーミングにラッピングされていました。
「鮭フレークの空きびんなんです。ラベルをきれいにはがして、ふたには柄ものの布を貼って、梅を入れています。こうしたちょっとした手づくりが大好きで……。梅干しは自分で食べるより、人にあげるのが楽しいかな。キャンディを包む袋に一粒だけ入れて、可愛くリボンをして、『はい、どうぞ』って。『飴をくれるの? ありがとう。あれ、これ、梅干し?』って(笑)。大事に育て
た梅干しを一粒でも手放すときは、里子を出すようで淋しいけれど、友人や知り合いから『おいしかったよ〜〜♪』と言ってもらえるとうれしくて、おすそわけします」

 

田中さんはさらに、「手づくりには、終わりのない喜びがある」と言います。
「私に梅干しづくりを勧めた友だちも、ご主人のお母様が漬けていて、それで始めたのがきっかけなんです。それが今度は、私につながったわけです。自分でやれば、誰かに伝わるし、そこに終わりはないと思います。それも手づくりの魅力ですね。2015年度の梅干しは初心に戻り、かつ冒険を!と考えています」
 田中さんは、「若い人や初めての人に、梅干しづくりの楽しさを知ってほしい」と語り、最後にこう続けました。
「娘に話すんです。『難しいかもしれないけど、自分でやると愛情が持てるよ。3キロとか少しずつ、レシピどおりにやればいいよ』って。梅干しに限らず、愛情を持つことで、食材を大切に思うことができるし、安心もできる。“無駄にしない”ではなく、“無駄にできない”んです。それに、食材を大切に思うからこそ、料理を考えたり、保存したり、いろいろな知恵が生ま
れる。大事に食べるためには、手づくりが一番の近道なのかな。おいしい、安い、楽しいだけではなく、手づくりにはもっと大切な意味があると、私は思いますね」
天日干し3日目の梅干し。 2014年度の梅干しに使った、埼玉・越生産の青梅。
「一粒ずつ丁寧に裏返す作業が楽しい」と田中さん。
田中さんからいただいた、梅干しと小梅の塩漬けのセット。梅の香りがいきた、おいしい手づくりでした。

 

▼田中さんの梅干しデータ

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いかがでしたか?
今年は梅干しにチャレンジしたい!
そんな気持ちになった方はぜひパルシステムの「梅フェス」にもご参加くださいね。
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