「不安」の矛先|コロナで広がる中傷、デマ、排除(「差別」と「人権」を考える第4回より)

町内の中学生が描いたイラストをもとに島根県美郷町がつくった啓発チラシ。
同町は昨年、新型コロナウイルス感染に関する差別や偏見を防ぐ独自の条例を制定。
全国でも同様の条例をつくる自治体が広がっています(写真提供/島根県美郷町教育委員会)

「差別」と「人権」を考える第4回
「不安」の矛先|コロナで広がる中傷、デマ、排除
新型コロナウイルスは、感染への不安を広げているだけでなく、
心ない誹謗中傷、地域や職場での嫌がらせなども生み出しています。
しかし、感染対策に関心が集まる一方で、差別を防ぐ取り組みはあと回しにな
りがち。
周囲の差別を恐れるあまり受診をためらう人がいれば、感染の拡大にもつながりかねません。

 

「負のスパイラル」を断ち切るために

新型コロナウイルスの感染が、国内で初めて確認されてから1年以上。
この未知の感染症は、私たちの社会に「病気」だけではない大きな問題をもたらしました。
それが、感染者やその家族、ときには医療従事者などに向けられる「差別」や「偏見」という問題です。

町内の中学生が描いたイラストをもとに島根県美郷町がつくった啓発チラシ。
(写真提供/島根県美郷町教育委員会)

感染症そのものだけではなく差別や偏見が、問題の根幹になってくるのではないか。
早い時期からそうした危機感を抱いていた、災害医療統括監の丸山嘉一さんらを中心に、
日本赤十字社は「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!」と題したガイドや動画を作成し、
2020年3月に発表。社会に警鐘を鳴らしてきました。

「新型コロナウイルスによってもたらされる影響は、疾病そのものよりも、そうした心理的・
社会的影響のほうがはるかに大きいかもしれません」。
丸山さんは指摘します。

丸山嘉一(まるやま・よしかず)さん
日本赤十字社の災害医療統括監、日本赤十字社医療センターの国内医療救護部長、
国際医療救援部長を務める。
日本赤十字社のガイド「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!〜負のスパイラルを断ち切るために〜」
の作成に参加、動画での解説にも当たっている。

こうした新型コロナウイルスにまつわる差別について、
昨年9月に「新型コロナ差別ホットライン」を開設し、
差別に苦しむ人からの相談に応じてきたのがNPO法人「World Open Heart」(WOH)」。
もともとは、メディアスクラム(集団的過熱取材)やバッシングに苦しむ犯罪加害者家族への支援活動を続けてきた団体です。
それが、一見畑違いとも思える新型コロナ差別に取り組んだのはなぜだったのか。
理事長の阿部恭子さんにうかがいました。

阿部恭子(あべ・きょうこ)さん
宮城県仙台市を拠点に、犯罪加害者家族の相談や支援に取り組むNPO法人World Open Heart( WOH)の理事長。
昨年9月に「新型コロナ差別ホットライン」を開設して相談に当たっている。
著書に
『息子が人を殺しました—加害者家族の真実—』(幻冬舎新書)など。

 

・・・続きはのんびる 3・4月号  にて

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