KANGAは、19世紀後半から、東アフリカのタンザニアやケニアなどスワヒリ社会の中で女性たちに愛されてきた一枚布。
豊かな色彩、多彩な文様(デザイン)、さまざまな用途のゆえに、日常になくてはならないテキスタイルとして定着、発展してきました。
今回、カンガ研究家でスワヒリ文化の造詣も深い織本知英子さんに、カンガの魅力についてたっぷり教えていただきました。
聞き手・構成/斎藤一九馬
写真提供/ポレポレオフィス

揺りかごから墓場まで カンガは生涯の友
─東アフリカの女性たちにとって、カンガとはどのような存在なのでしょう。
日々の生活になくてはならない必需品です。特にスワヒリ社会では、赤ちゃんが生まれたときには、まっさらのカンガでおくるみをしますし、女性が亡くなると、ご遺体をカンガでくるみます。ほんとうに“揺りかごから墓場まで”と言えるくらい、カンガは女性の一生を彩るテキスタイルなのです。
─色使いに、いかにもアフリカらしい強烈なインパクトがあります。
カンガのデザインはまさに百花繚乱ですね。自然の花や草花、農産物のモチーフが多く、鮮やかな色彩が大きな特徴です。モチーフのまわりを黒のラインで縁どったものも多く、これは纏う女性の力強さを演出しているのです。一方で水玉模様なども多く使われ、愛らしさも醸し出しています。
カンガの纏い方と多様な使い方
─カンガは、日本では一般的に女性が身体に纏うカラフルなアフリカ産の大きな布として認識されています。どう着こなすのですか。
カンガは横160センチ、縦110センチ。胸から膝、あるいは腰から足のつま先までを覆うのにちょうどよい長さです。素材は綿100%。
写真右は基本的な纏い方で、服の上から腰に巻いています。写真左は現地では子どもの巻き方で、カンガを背中から脇の下に巻いて、端っこを首の後ろで結びます。端っこの部分をねじねじして結ぶと、シャープな雰囲気になります。
写真中央はカンガを2枚使って、リゾートドレス風に着こなしたものです。1枚のカンガを縦にして、胸の前から巻いて背中で結びます。縦の長さは、背の高さに合わせて折り込むとよいでしょう。
次に、もう1枚のカンガを背中から脇を通して首の後ろで結びます。ここでは上の2枚目を縦使いにしていますが、横使いでもOKです。ちょっとしたドレス風になります。リゾートでくつろぐときなどにいいですね。

臼でとうもろこしをつく女性のカンガスタイルが美しい

魔法の布のメッセージ「カンガセイイング」とは?
─カンガの特徴である「カンガセイイング(Saying)」のいわれをお教えください。
カンガの中央にプリントされている短い言葉が「カンガセイイング」で、スワヒリの昔からのことわざや、人生の教訓、愛のメッセージなどが書かれています。
女性たちは、自分の気持ちや考えを主張したいと思ったとき、その気持ちにぴったりのセイイングが書かれたカンガを纏ったり、相手に贈ることでさりげなく自己主張するのです。カンガを腰に巻くと、ちょうどセイイングの部分が足首の後ろにくるため、まわりの人は後ろからその文字を読むことができるのです。

スワヒリ語の短いメッセージ
─一種のコミュニケーションツールだと。
はい。現地では、カンガのデザインよりもカンガセイイングの意味のほうが、カンガを選ぶときに重要視されます。スワヒリ社会では女性がネガティブな感情や気持ちを直接口にするのは恥であると考えられていて、その気持ちを代弁するために活用されてきました。
また、他者へのメッセージだけでなく、着用する自身に向けてのメッセージとして活用するというケースも見受けられます。
─男性も使うのですね?
カンガは、東アフリカで巻き布として発展してきましたが、広く普及するにつれて男性・女性を問わず、さまざまな使い方がされています。男性だったら、お祭りの衣装や寝間着、部屋着として。
女性はいつでもどこでもカンガでおしゃれを決め込みます。ありすぎて困るものではなく、たくさん持っていればそれだけ便利で、毎日の生活が楽しくなる魔法の布、それがカンガです。
ちなみにカンガとは、優雅な羽根模様をもつ、けたたましく、かつ愛嬌のあるホロホロ鳥のことです。
<<<続きは本誌9.10月号




