2024年の全国の世帯数5500万世帯のうち、最も多いのは単独世帯の1900万世帯(全世帯の34・6%)(※1)。夫婦のみや、子どものいる世帯よりも、いまやひとり暮らし世帯のほうが多いのが日本社会の現実です。65歳以上の人のいる世帯で見ると、単独世帯が52・5%で、その6割以上が女性です。そんなおひとりさま女性が、「一人ではきびしいけれど、つながれば知恵もわく」という思いで活動をしています。理事の佐藤ひとみさんにお話を伺いました。
文・写真/やまがなおこ 写真提供/わくわくシニアシングルズ
見えない存在を可視化する
わくわくシニアシングルズは、中高年のシングル女性の集まりです。元母子家庭で子どもが独立した人やずっと独身できた人、別居中や離死別など、シングルである理由は問わず、「交流し支え合って、希望のある心豊かな暮らしを創り出していく」ことを目的に、2015年に発足しました。会員の交流・情報交換、社会制度など気になることについて講師を招いて学ぶセミナーと並行して取り組んできたのが、実態調査です。「私たち中高年のシングル女性は、社会のなかで無用の存在と見られたり、ないものにされてきたんです。それで、暮らしや労働の実際を調べ、発信していこうとアンケート調査に取り組みました」活動開始時からの会員でもある佐藤さんは話します。調査項目を検討し、専門家の協力も得て50代以上のシングル女性を対象に2016年に取り組んだアンケート調査は、2か月という短期間に全国から530もの回答が集まり、それまであまり明らかにされてこなかった実態が見えてきました。「ずっと働いてきたけれど生活はきびしい。子育ての間にはあったさまざまな支援が、子育てが終わるとぷっつりなくなる、親の介護はしたけど自分の老後は……? 自由記述にも書き込みは多く、結婚してもしなくても、みんなすごくいろんな苦労を抱えているということがわかったんですね。報告会をして、本も作りました」2022年に実施した2回目のアンケートは、対象を40代にも広げ、インターネットで回答できるようにしたところ、回答者が大幅に増え2390人に(うち有効回答2345人)。調査結果は、これまで社会的には注目されてこなかった中高年女性の困難が新型コロナ禍によってあぶり出されたことがわかるもので、さまざまなメディアに取り上げられるなど、大きな反響を呼びました。いちばん切実なのは、賃金が少ないということ。コロナ禍で仕事を切られてしまった人も多かったんです。それから住まいがない、借りられない。そうした生活の問題のほかに、話し相手がいない、相談できる先がわからないということがたくさん書かれていました」 そんなことから、会員でない人も参加できる交流会を開いてきました。
初めて本音で話せた
昨年は年に5回交流会を開いたんですが、会場があまり広くないこともあって、毎回キャンセル待ちが出るんです。自分の思いを話したい、聞いてほしいという方がたくさんいらっしゃるんだと改めて気づかされました」
団体ホームページにも感想が紹介されていますが、お金の悩みや生活上のことは、同じ立場、同じ状況でないとなかなか本音で話すことはむずかしいものです。
「自分の気持ちをわかってもらえる人に初めて出会った」といった感想もあるそうです。
アンケート調査でも、不安や心配事があっても、自治体や専門機関の窓口に相談に行ったという人は少ない結果が見てとれます(※2)。自由記述欄のコメントからも、たとえば次のような、相談にまつわるつらい経験などが綴られていました。
•公的支援窓口がどこだかわからない
•あちこち電話や相談をしたが、たらい回しにされた
•生活保護を申請に行っても受け付けてもらえない
•厳しい言葉をかけられた
「相談に行くっていうのはなかなかハードルが高いですよね。ほんとうに困ったら行けるかもしれないけれど、漠然とした不安というのはその段階じゃないです。そうした不安を話し合える場所が求められているんだろうなって思います」<<<続きは本誌11.12月号で




