
夕暮れの空に揺れるカラフルなペンライト。ユーモラスな架空団体名がプリントされたのぼり旗。自作プラカードには思い思いのメッセージが……。
今、全国各地で戦争や政治への懸念を表明するデモが広がっています。20代、30代の若い女性の姿も多い、こうしたデモを呼びかけているひとりが、市民運動家の菱山南帆子さんです。
文・写真/やまがなおこ
ポートレート写真/堂本ひまり
韓国のデモに学んで
「ずっとペンライトって言ってきたけど、なかなか理解してもらえなかったんです。でも、2月の衆議院選挙のあと、思い切って呼びかけたら、たくさんの人がペンライトを持って集まってくれました。
それ以降、あちこちで、私と同世代の女性たち、これまでデモや集会には来ていなかった人たちが、思い思いに『NO WAR!』とか『改憲反対』を掲げながら、ペンライトを振って交流している。すごく画期的な光景だと思っています」
市民団体のメンバーとして長年、平和運動に関わってきた菱山さんは、2018年から韓国の市民活動家たちと交流してきました。
去年(2025年)2月、韓国で尹錫悦大統領弾劾デモでスピーチをしたときのペンライトデモの熱気に、「こういうのが日本でもできたら」と思っていたといいます。そして、今さざなみのように各地に新しいかたちのデモが広がっていることに、手応えを感じています。
「ブームを作ってきたのはいつも女性たち。韓流も、バンドブームも、このペンライトブームも、お互いを認め合いながらみんなでがんばろうという、女性たちの姿勢のあらわれだと思うんです」
そのあたたかな雰囲気を、筆者も確かに感じました。国会前に足を運んだ日は、お隣の女性が「どうぞ」と持っていたペンライトをひとつ貸してくれたり、鈴などの鳴り物を持ってきた人が誘い合って一緒にコールをしていたり、有楽町駅前のウィメンズアクションでは、「私、こういうの初めて来たんです」といいながら、自作の応援うちわを見せてくれたり。
「韓国のデモスタイルに連帯して、オリジナルののぼりなどもどんどんユニークになっています。女性たちはカッコつけるより、『頭、お花畑ですが、なにか?』って、揶揄を逆手に造花のカチューシャをつけたり、自由で楽しい参加の仕方がいっぱい出てきました」と菱山さん。
女性たちの痛み、悔しさ
これまでとは違う人たちが、街に出て声を上げるのは、なぜなのでしょうか。菱山さんは、韓国のフェミニストから学んだ「地下水脈的運動」という言葉を紹介してくれました。
「地表にはあらわれなくても、大地を潤して土壌をつくるっていう意味なんです。2018年に始まった#MeToo運動が韓国ではすごく盛んで、女性たちが声を上げ、連帯して社会を変えてきました。日本でもフラワーデモが起こり、女性たちがこれまで言葉にできなかった性被害の経験を語り、耳を傾けてきました。
それに、韓国のフェミニズム小説や映画、ドラマなどを通じて、日本の女性たちは女性差別や暴力への怒りを静かに共有して、何かあれば路上で抗議する韓国の市民運動とも、地下水脈のようにつながってきていたんですよね」
ライブ応援グッズのペンライトは、日本でも多くの若者におなじみ。そのきらめく日常のすぐそばで、今急速に変化していく社会のあり方や、当たり前だと思っていた平和な暮らしが揺らいでいくことへの不安や危機感が、静かに広がっているというのです。
「それと、2024年の朝ドラ『虎に翼』を観てっていう人も多いんです。戦争でボロボロになった日本で、日本国憲法にどれだけ多くの女性たちが光を感じたか。主人公の寅ちゃんと今の自分を重ね合わせたり、暴力や身売りを強いられる環境から弁護士を目指した山田よねさんに涙したり」
高市政権が支持される背景には、長年男性が中心だった政治の世界に風穴を開けてくれそうという期待がある、と菱山さんは分析します。賃金格差や雑用を押し付けられ、能力を評価されず悔しい思いをしてきた女性たち。
あるいは、結婚は? 出産したら、いつ辞めるの?とプレッシャーにさらされてきた女性たちにとって、初の女性首相の誕生がもつ意味は小さくありません。「これで世の中が変わるなら、頑張ってほしい」と期待を寄せてしまうような背景が、そこにはあります。<<<続きは本誌7.8月号で







