ながむら・さとこ
1983年東京都生まれ。都内で女性専用バーや飲食店を営むかたわら、一般社団法人こどまっぷの共同代表として、「子どもを望む」「子育て中」のLGBTQ+当事者の支援に取り組む。長い妊活の末、2021年に出産し、同性のパートナーと子育てに奮闘中。
「親である」「親になりたい」4組の同性カップルの姿を描くドキュメンタリー映画『ふたりのまま』。監督の長村さと子さんも、その当事者です。好きな人といっしょに子どもを育てたい。ごく当たり前の願いを“なかったこと”にしている社会への問いが、この作品には込められています。 聞き手・構成/濵田研吾 写真/堂本ひまり
当事者の声を広く届けたい
─プロフィールを拝見すると、本業は映像関係のお仕事ではないんですね。
はい、ふだんはレズビアンバーのママなんです(笑)。新宿2丁目でお店をやりながら、当事者のサポートを続けてきました。同性カップルは、「子どもが欲しい」「子育てしたい」と願っても、周りからなかなか理解されません。保険適用の不妊治療を含め、同性カップルを対象とした法整備もされていません。私が共同代表の「こどまっぷ」では、仲間の輪を広げながら、当事者の声を社会や政治の現場に届ける活動を続けています。
─9月に公開された『ふたりのまま』は、こどまっぷの自主製作で、配給会社を通さないインディーズ作品です。
2015年に東京都世田谷区と渋谷区で同性パートナーシップ制度が始まるなど、性的マイノリティの人たちへの理解は、少しずつ広がってきました。でも、「性別に関係なく子育てしたい」という切実な声は、まだまだ社会に知られていません。映像のチカラを借りて、当事者からその声を発信していく。それが映画製作のきっかけです。
─長村監督ご自身、当事者でいらっしゃいます。
同性のパートナーと、3歳になる男の子を育てています。これまでメディアの取材を受けることも多く、どういう言葉に傷つくか、どんな質問でつらくなるのか、自分がいちばん感じてきました。だからこそ当事者の声を拾い、広く届けることができるのは私しかいない、との自負があったんです。
ただ、映像の世界にいたことはないし、映画を撮ったこともない。2023年から撮影を始めましたが、子育てをしながら、ひたすら手さぐりで記録し続けた感じです。
何気ない暮らしの営み
─『ふたりのまま』では、4組の家族の姿が描かれます。最初に登場する女性は、カナダ人ドナーの協力で、子どもを出産します。
彼女は、私がお店を始めたころからの付き合いなんです。出産後すぐに病院に駆けつけ、赤ちゃんと対面して、すごくうれしかった。「悲しませるような映画にしないから、撮らせてほしい」とお願いしたら、快く応じてくれました。
同性カップルで子育てをしている人たちは、長い時間とさまざまな壁を乗り越えてきているので、意志をしっかり持ち、堂々としています。それでも、今回の映画に出るのは勇気のいることでした。一般公開され、客席からどんな反応があるのか、不安もあるはずです。その気持ちもあって、映画の冒頭にはメッセージ(※1)を出しました。<<<続きは本誌11.12月号で




