ときた・えいいちろう
愛知県出身。幼い頃から自然の中で遊びながら育つ。国内外で登山やクライミングをするなかで、どうしたらこの自然を残せるかと考え、大学生のときにプロギングを日本に普及させるための団体を設立。2020年、一般社団法人プロギングジャパン設立。

新しいアクションを起こしている人に注目する連載「動くヒト」。今回は、学生時代に出合ったスウェーデン発祥のプロギングを日本に広めたいと活動している常田英一朗さん。全国各地で走りながら楽しくごみを拾うイベントを開催しています。 文/中村未絵 写真/堂本ひまり

50キロのごみが集まることも

20人ほどのグループで公園や街なかを楽しくおしゃべりしながらジョギングし、道端に缶やペットボトルなどのごみを見つけたら、声をかけ合って拾う─そんなイベントが全国各地で開催されています。実はこれ、「プロギング」と呼ばれるフィットネスなのです。

「プロギングは、ゴミ拾い(Plocka Upp)とジョギング(Jogging)をかけ合わせた言葉。2016年にスウェーデンで誕生して、いまでは世界中に広まっているんです」と話すのは一般社団法人プロギングジャパン代表理事の常田英一朗さん。

「きれいに見える東京・日比谷公園周辺でも1時間で8キロくらいのゴミが拾えます。新宿なら50キロになることも。多いのは空き缶やペットボトルなどですが、それでも世界的にみれば日本はごみが少ないほう。

競技時間6時間で拾ったごみの量や走った距離、標高などを競うプロギングの世界大会がイタリアで開催されたときは、約70人の参加者で3トンものごみが集まりました。すごい量ですよね」

 プロギングには、走ってごみを拾うという以外に特別なルールはなく、子どもから高齢者まで誰でも自由に楽しめるのが特徴です。

「環境のため」と言わなくてもいい

「僕は子どものときから自然のなかで遊ぶのが好きで、学生時代はワンダーフォーゲル部に所属していました。休学して海外でも登山やクライミングをするなかで、いつまでもこの自然を残したいと思ったんです。そのためにはどうしたらいいかと考えていたときに、プロギングのことを知りました」

 常田さんは学生時代からプロギングを広める活動を開始。「プロギング=環境活動」という認識が強い欧米とは異なり、日本では「『楽しいから参加したい』と思えるようなフィットネスとして紹介すること」を意識しています。それには理由がありました。

「大学のときに環境問題について考える教室展示を企画したんです。大学構内で消費されるペットボトルの量を知ってもらう内容で、水筒を持ってきた人に無料でコーヒーなどを配る工夫もしました。

でも、学生が全然来なかったんですよね。友達に理由を聞いたら『SDGsの真面目な話を聞かされそうで入りづらい』と言われ、それはそうだよなって」

 その一方で、知り合いを集めて初めて大学で開催したプロギングのイベントでは、こんな経験もしたそうです。

「そのとき参加したのは、何をするのかもよく知らないまま、『誘われたから来た』という人ばかり。でも、みんなでチームに分かれて競技形式でごみを拾ったらすごく盛り上がって、結局30キロ近くものごみを集めることができました。

『環境のためにごみを拾おう!』と言わなくても、楽しければ自然と人は集まるし、結果的にごみが拾える。それでいいんじゃないかと思ったんです」

 そんな常田さんの活動のモットーは「ポジティブな力で足元から世界を変える」。「SDGsとか環境活動と言われると、『自分には関係ない』『面倒くさそう』と感じてしまう人もいます。義務感や罪悪感では続かないので、楽しく前向きな気持ちで取り組めることがやっぱり大事です」<<<続きは本誌12月号で

イベントには、性別や年齢問わずさまざな人が参加(写真提供/プロギングジャパン)