
しんや・けんた
1991年北海道北見市生まれ。金沢美術工芸大学卒業。2017年、美大時代からの相方・楓大海とともに珠洲市に移住し、ゲストハウス「仮( )-karikakko-」を開業。
移住者コミュニティ中田文化額装店、学習支援のNPO法人ガクソー、海浜あみだ湯の運営等に取り組むかたわら、現代アートでも社会に応答している。
新しいアクションを起こしている人に注目する連載「動くヒト」。今回は、奥能登珠洲市で仲間とともに銭湯を運営している新谷健太さんです。移住者として地域の媒介物になるべく、飄々と多様な活動を展開しています。
文・写真/やまがなおこ
海のみえる銭湯「海浜あみだ湯」
石川県珠洲市にあるあみだ湯のことは、NHK『ドキュメント72時間』や『あさイチ』などでご存じの人もいるかもしれません。1988年に開業した、まちの銭湯です。
2024年元日の地震で配管やポンプなどを損傷しながらも、1月19日には営業を再開。以来、人々を温める営みを続けてきました。
「発災後数か月は、目の前の命をどう守るのか、何ができるのか、動きながら考え、駆け抜けた、という感じですかね。配管の応急処置をしてもらって開業したら、風呂場やロビーで『お?、生きとったか』と地域の方々が抱き合っていたり、お客さんから『やっと心と体がくっついた気がします』と言われたり、じーんとすることがいっぱいありました」
地下水をポンプで汲み上げ、薪で沸かしていたあみだ湯は、震災後、長く断水が続くなかで、被災者だけでなく、ボランティアや解体業者さんにとってもなくてはならない存在となりました。
加えて、支援物資の配布やボランティアの受け入れ・派遣拠点、子どもの居場所や中高受験生の勉強場所としても機能し、希望として注目されることに。
「報道されるのは大事だと思うから取材は断らなかったけど、メディアに出るとヒーロー扱いされてしまう。それはちょっと抵抗がありました。営業再開が難しい飲食店や、珠洲を離れざるを得ない人もいるなか、分断を加速するんじゃないかって。でも銭湯はやめられないし。意識的であろうとしています」
まちを弔い、記録する
先代のオーナー夫妻の時代から、あみだ湯では、人口減少に伴って解体される建築木材を引き受けて、燃料にしてきました。学生時代、銭湯でのアルバイト経験があった新谷さんは、近くでゲストハウスを営んでいた縁で高齢の先代のオーナーを手伝うように。ボイラーに廃材をくべる作業をするなかで、ある想いを抱きます。
「灰の中からビスとか釘、ボルトなどの金具を拾っているとき、収骨みたいだなあって。解体した家を燃やすのは、まちを燃やして、弔っているというか」
実は能登半島では2022年6月、2023年5月、2024年1月と大きな地震が続いていました。そこに9月の豪雨災害が追い打ちをかけ、さらに多くの、歴史と思い出の詰まった家が解体されることになりました。
「お連れ合いを亡くし、すごく立派な家を一人で守っていらしたあるお母さん。珠洲を離れて世帯を持っている息子さんから、公費で無料で解体できるうちに壊してくれと言われて。迷った末に公費解体を申請されたんですよね。なんとかできないのかなあっていう思いは、あります」
市全体で申請のあった約8000の家屋のほとんどが2025年内に公費解体を終え、いま、地域には更地が広がっています。新谷さんらは、せめて記憶と記録を留めようと家主さんの思いを聞き取り、写真を残すことに取り組んでいます。
悲しみややり場のない喪失感を受け止め、建具や欄間を希望者に譲渡する「建具バンク」の活動も始めました。<<<続きは本誌3・4月号で





