いつ発生してもおかしくないとされる南海トラフ。静岡県内陸部でも強い揺れが予想されるだけに、静岡県民の防災意識は高い。県内外45の子育て支援団体でつくる「しずおか子育て防災ネットワーク」は、とくに災害時の乳幼児家庭支援に力を入れ、全国的なつながりづくりを進めています。
聞き手・構成/斎藤一九馬
写真提供/しずおか子育て防災ネットワーク

子育て支援団体をつないで防災支援に取り組む
─原田さんが「しずおか子育て防災ネットワーク」を結成するきっかけと経緯をお教えください。
原田 私が静岡県に越してきたとき、防災訓練がよく行われていました。でも、まだ子どもが小さくて私は参加できませんでした。乳幼児がいるとなかなか難しいのです。当時、ほとんどの子育て中の親が災害に際してどうしたらいいのかよくわからないのが現実でした。
静岡県は巨大地震(南海トラフ)の脅威にさらされています。太平洋側に津波が押し寄せたら、それは大きな被害が出ます。それでも、静岡県は東西にとても長い地形ですから、どこかが助かる可能性はあります。たとえば西部が被害にあっても、中部や東部の人が支援できるかもしれません。
子育て支援団体は防災について必ずしも詳しいわけではないけれど、子どもと日常的に接している団体だからこそできることはいっぱいあります。以前県の事業で集まったときに「お互いに、何かあったときは助け合いませんか?」と声をかけたら、「それっていいですね」と、皆さんが賛同してくださって、5年前に西部、中部、東部の6団体(現在45会員)でネットワークを結成しました。
─子育て支援に特化ということですが、非常時において、実際、どんな活動をなさっているのでしょう?
原田 ネットワークはつくっても、最初は何もできませんでした。ところが2022年9月の台風15号で静岡市清水区の水害が起きて、そのとき中部が中心になって支援に入り、西部と東部の会員が後方支援に回りました。そこで初めて、私たちにできることがわかったのです。
浸水した家の片付けで手一杯のときに、お子さんの託児を引き受ける。断水があり、被災者は洗濯する余裕がないので、洗濯ボランティアを行う。それらは全部、子育て団体だからこそ気づいた支援です。「これで、いい!」とみんなが現場で実感したので、それ以降は結構活発に動き始めました。清水地区のこの体験が大きな転換になったと思います。

子どもの存在が見えにくくなる被災地
─解決すべき課題はいろいろ見つかったのではないでしょうか。
原田 子育て支援というと、どうしても女性中心になってきますが、もちろんパートナーにもできるだけ関わってもらいます。ちなみに防災の行政関係者はほとんどが男性です。私たちが民間同士で協定を結ぶときに行政に立ち会ってもらうのは、子どもがいる家庭の視点からの被災地支援が大事であることを理解してもらいたいからでもあるのです。
それから、避難所生活の問題があります。避難所は学校の体育館にあることが多いですね。そうすると、長期間にわたり多くの人がそこに滞在する、子どもの遊び場がなくなるとか、運動場も使えなくなり、学校が早く再開できなかったりします。それと乳幼児が避難所へ行くと周囲に気を使わざるを得ず、結局車中泊が多くなったりする。こうした事情もあり、最初から避難所に行きたくないという人が結構多いんですね。
─確かに、被災地では車中泊の人も目立ちました。
原田 能登半島地震のとき、発生翌日の1月2日にラインで行政の人と連絡を取り、避難所に子どもがいるか聞きましたら、いないと言う。その後災害支援に入った団体に聞いても、見ないと言うんです。みんな他所に逃げたんじゃないかと言うのですが、実際は車中泊をされていたのです。
そういう問題を多く抱える避難所だからこそ、子どものいる家庭ならではの気づきというのがすごく大事になってきます。避難所では、なにより水・毛布・食料が優先される。その食料の中に乳幼児用品があるかとなると、あってもミルク缶ぐらいのもの。だけど、少し成長した赤ちゃん用の離乳食はない。しかし、必要とする声はどこの避難所でも少なくないのです。それは国が用意するわけではないし、市町村が備蓄しているわけでもない。
それからアレルギーの問題。炊き出しには、何が入ってるかわからないから、アレルギーのひどい人は怖くて食べられない。だから、炊き出しするときに何が入っているかがわかるように表示したい。今後の課題です。
<<<続きは本誌3・4月号で





