京都府精華町の自衛隊祝園分屯地で弾薬庫の拡張計画が発表され、昨年夏から工事が始まりました。

この動きにとまどいと不安を覚えた住民たちが地域の未来や平和についてともに考え、対話をしていこうと住民ネットワークを結成。

近年、急速に進む“安全保障政策”の実態や、日々の暮らしを守る草の根活動の全国的な拡がりについて、共同代表の呉羽真弓さんにうかがいました。

聞き手・構成/斎藤一九馬


学研都市の中心部に弾薬庫

─日本最大級の武器弾薬庫といわれる自衛隊祝園分屯地について概要をお教えくださいますか。

呉羽 陸上自衛隊の祝園分屯地は、京都駅から電車で30分ほどの精華町と京田辺市にあり、その敷地は東京ドーム100個分、精華町の面積の6分の1を占め、車で1周すると30分以上かかります。

 問題なのは、この分屯地が、京都・大阪・奈良の3府県・8市町村にまたがる「関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)」の真ん中に位置していることです。国立国会図書館関西館や多くの研究施設、企業、大学、データセンターなどがあり、1980年代から開発された閑静な住宅地に囲まれています。

─つまり、本州最大級の自衛隊分屯地と学研都市が、いびつな形で併存しているということですね。

呉羽 そのとおりです。「軍民分離」(※)をうたう国際人道法に違反しているのではないかと指摘されています。ここは大阪市内や京都市内にも通勤可能なので、私もそうですが、この町で子育てをしたいと移り住む人も多い地区です。

祝園分屯地の半径10キロ圏内には、奈良市や大阪府枚方市、寝屋川市などの人口密集地があります。

(※)国際人道法(特にジュネーブ諸条約第1追加議定書)における最も基本的な原則の一つで、戦闘員と非戦闘員(文民)、および軍事目標と民用物を明確に区別し、攻撃の対象を軍事目標のみに限定することを義務付けている。

呉羽真弓さん

学研都市 12 のクラスターの中央部に位置している祝園弾薬庫

急な弾薬庫の増設の知らせに驚きと動揺が

─そんな特異な環境にあっても住民の皆さんは静かに暮らしておられたのが、「京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク」(以下、ほうそのネット)が発足しました。なぜ、今なのでしょうか?

呉羽 2023年の年末に防衛省が「2024年度予算案で、陸上自衛隊祝園分屯地の火薬庫8棟の増設費用102億円を計上する」と発表したのです。「急に8棟増設とはどういうことなの!?」と住民は驚き、やがて不安と動揺が広がっていきました。「有事の際、ここが真っ先に標的になるのではないか」と。

─弾薬庫にはどんなものが貯蔵されているのですか。

呉羽 弾薬庫は密集した木々に囲まれる小高い山になっていて、外から中の様子をうかがい知ることはできません。今弾薬庫が何棟あるのか、どんな種類の弾薬が保管されているのか、町長以下、誰も知らないのです。そして2024年の暮れになって、さらに6棟を増設するため197億円を追加予算措置すると発表したのです。

─もともと、よその地区にあった弾薬庫が爆発事故を起こしてこちらに移ってきたという経緯があるそうですね。

呉羽 そうです。戦前に大阪府の枚方市にあった弾薬庫が爆発して死者94名、負傷者602名を出す大惨事となって、当時森に囲まれた里山だったこの地に移転してきたのです。

戦前の1941年のことで、今回の弾薬庫の増設計画はその古い記憶もよみがえらせました。「突発的な出来事、地震や火災、輸送中の事故などで弾薬庫が爆発する危険性が高まったのではないか」「敵基地攻撃の能力を持つ長距離ミサイルが配備されるのでは」など、不安の声が上がりはじめたのです。

─そうした住民の危機感を背景に、今回、「ほうそのネット」が結成されたのですね。

呉羽 2024年3月20日のことです。結成大会にはゆうに200人を超す人々が集まり、この問題を重要と考える人たちの多さに、私たちは勇気づけられました。ほうそのネットの目的は、自衛隊反対をとなえることではありません。

事実を知る、知った上で、みんなが考える。そして、平和と安全を求めて行動する。それが私たちの基本姿勢です。弾薬庫の存在を知っていても特段気にも留めてこなかった人たち、私も含めてですが、そんな方たちへ正しい情報を広げていこう。そういう思いからの出発でした。
<<<続きは本誌7.8月号