私たちの暮らしのすぐ隣にある格差や貧困、制度のはざまで手が届きにくいところにスポットをあて、
私たちにできることを一緒に考える連載企画「支え合うまちづくり」。
2017年1月号にご登場いただいたその後について、お話をうかがいました。
原発事故避難者を孤立させない!3月末に迫る退去にむけて奔走
避難の協同センター(東京都板橋区)
東京電力福島第一原発事故によって避難指示区域外から避難した人たちが、
いまも全国各地でくらしています。
避難者と支援者の協力で設立された「避難の協同センター」では、
孤立しがちな避難者が抱える住まいや健康、就労といった生活上の問題に寄り添い、
地域の他団体とも連携しながら支え合う活動を続けています。
避難者と支援者の協力で設立
2017年3月末、国と福島県は、福島原発事故によって
避難指示区域外から避難した人(いわゆる「自主避難者」)への
「応急仮設住宅」「みなし仮設住宅」の無償供与を打ち切りました。
打ち切りが近づく2016年7月、避難当事者と支援者によって
設立されたのが「避難の協同センター」(以下、協同センター)です。
住宅無償供与が打ち切られた区域外避難者は約1万2千世帯にのぼります。
そのうち約8割が福島県外で住み続けることを希望しました。
母子避難世帯や仕事を失った高齢者、
生活困窮や心身の不調を抱える避難者もいるなか、
協同センターでは住まいを失って追い詰められる事態を防ぎたいと、
定期的な相談会・交流会の開催、伴走支援のほか、
国や行政との交渉を行ってきました。
「実際に、住宅無償供与終了後に住まいを失って
ホームレス状態になった男性にも出会いました。
その人は自力で仕事を探しながらネットカフェや公園で1年も寝泊まりを続け、
所持金5円になってから相談の連絡をくれたのです」
そう話すのは事務局長の瀬戸大作さん。
この男性のケースでは、一緒に役所に行って生活保護申請を行い
シェルターを探したそうです。
今年3月末に迫る退去
今年3月末には、国家公務員住宅に避難している
約130世帯の区域外避難者が退去を迫られています。
また、民間賃貸住宅に家賃を払って避難を続ける世帯のうち、
収入が一定条件以下の生活が厳しい約2千世帯に行われてきた
月2万円の家賃補助も終了します。
「定期的に相談会を行ってきた江東区の国家公務員住宅には
区域外避難者約80世帯が暮らしていますが、
その8割が4月以降の住まいが決まっていません。
うつ病を患う人まで退去を迫られていて、
4月以降は損害賠償として2倍の家賃を請求するとも言われています」
住まいが決まらない背景には、転居先が見つからない、
保証人が確保できない、次の家賃や転居費用がないといった、
さまざまな課題があります。
無償供与打ち切りから2年が経った民間賃貸住宅に暮らす避難者からも、
更新料が払えないという相談が寄せられています。
「東京都によるアンケート調査(※1)によると、
住宅無償供与が打ち切られた避難者のうち、
月収10万円以下の世帯が22%。
過半数が20万円以下の世帯でした。
非正規の仕事しかなく仕事をかけもちしても生活が厳しい。
家賃補助がなければくらしていけない人もいるんです」
避難先での「いじめ」を経験し、子どもが転校することや
関係性を築いた地域を離れることに不安を感じる人も少なくありません。
「住まいは人権にかかわるもの。
しかし、国も県もこうした避難者の状況を把握しようとはしません。
2016年10月以降、福島県は区域外避難者の実態調査さえしていないのです。
一部を除く帰還困難地域からの避難者への仮設住宅の無償提供も
2020年3月末で終了します。
オリンピックまでに『避難者ゼロ』にしたいのではないかと考えてしまいます」
孤立する人を出さないために
瀬戸さんたちは深刻な状況に置かれた避難者を
孤立させないことをめざして活動してきました。
しかし、支援してきた母子避難の女性が自らの命を絶つという、
つらい出来事も経験しています。
「その女性は子ども2人を守りたいと避難し、
昼も夜も働きながら子どもたちを大学に進学させました。
しかし、夫は放射線に対する不安を理解せず、
家事のために福島に戻るとDV(配偶者からの暴力)を受けていた。
ずっと子どものことを思ってきたのに『家族をバラバラにした』と
自分を責めるようになり、過労も重なって
心身の調子を崩してしまったんです」
いままさに協同センターでは、この3月末で
避難者が住まいを失うことのないように行政との交渉を続けると同時に、
転居がむずかしい一人ひとりの事情を聞きながら、
住宅や経済問題の支援に奔走している最中です。
「社会は『早く自立を』というけれど、
仕事は非正規ばかりで、事故のPTSD(※2)、
病気、DVなど複雑な困難を抱えた人もいる。
そもそもなぜ避難しなければいけない状況になったのでしょうか。
僕たちがつながっている避難者は氷山の一角。
こういう問題が自分の地域でも起きていることを知ってほしい。
これ以上、追い詰められる人も、家を失う人も出したくないのです」
(※ 1)東京都「平成29年3月末に応急仮設住宅の供与が終了となった
福島県からの避難者に対するアンケート調査」(2017年10月)
(※2)心的外傷後ストレス障害。とても怖い思いをした記憶がこころの傷となり、
そのことが何度も思い出されて、恐怖を感じ続ける病気。
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原発事故避難者の緊急支援を行います!
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■「原発避難者住宅問題」緊急ホットライン
〜私たちの声を聞いてください〜
3月末の民間賃貸住宅家賃補助の終了、避難先自治体の支援策終了に伴い、
「4月以降の家賃が払えない」「転居費用や更新料が払えない」などの
困難を抱える原発事故避難者から電話相談を受け付けるため、
下記日時で開設します。
【緊急ホットライン】0120-311-557(共通フリーダイヤル)
2月28日(木)14時〜20時
3月2日(土)11時〜17時
※ホームページ内に設けたメールフォームから、メールによる相談
も受け付けます。詳細はホームページをご覧ください。
http://hinan-kyodo.org/
■入居支援事業スタート
生活困窮者支援での実績をもつ「認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい」や
「一般社団法人つくろい東京ファンド」と連携し、
住まいを必要とする原発事故避難者への不動産物件の紹介提供などを開始します。
詳しくはお問い合わせください。
問い合わせ先:避難の協同センター
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9(FoE Japan 内)
【TEL】03-6909-5983
【FAX】03-6909-5986
【Eメール】hinankyodo@gmail.com
【避難者専用相談ダイヤル】070-3185-0311
(月〜金 10:00〜17:00 出られないときは折り返します)
http://hinan-kyodo.org/
◆『のんびる』2019年3月号 目次
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