【明日へのアクション 動くヒト】孤立した若者たちに 向き合う NPO法人サンカクシャ 代表理事 荒井佑介さん 

あらい・ゆうすけ
2008年よりホームレス支援や子どもの貧困問題に関わる。
中学3年生の学習支援に携わるなかで、高校進学後につまずき孤立する若者の存在に気づき、
居場所づくりを始める。2019年、NPO法人サンカクシャ設立。

 

新しいアクションを起こしている人に注目する連載「動くヒト」。
今回は、親や身近な大人を頼れず、制度や支援が届かない若者とつながり、
「安心して生き抜く」ためのサポートに取り組む荒井佑介さんです。
文/中村未絵 写真/堂本ひまり

虐待を受けて居場所のない若者  
東京都豊島区にあるビルの一室に、NPO法人サンカクシャが運営する若者の居場所「サンカクキチ」があります。
ここでは週4日、午後2時から9時まで、多いときで25人ほどの「家にいたくない」という若者が、ゲームをしたりスマホを見たり、スタッフと話したりと思い思いに過ごしています。さらに月2回は、夜9時から朝5時までの「ヨルキチ」もオープンしているそう。「家族とうまくいっていなくて家にいられない若者に、サンカクキチやヨルキチを使ってもらっています。でも、そもそも家がない、ネットカフェで寝泊まりしていたけど所持金が尽きてしまうといった相談も増えているんです」。そう話すのは、代表理事の荒井佑介さん。若者の社会参画を支えたいと、荒井さんが2019年に立ち上げたサンカクシャでは、セーフティネットからこぼれ落ちやすい15歳から25歳くらいの若者を対象に「居場所」「仕事」「住まい」の3つを軸にした伴走支援に取り組んできました。周りに頼れる大人がいなくて、家にも居場所がない─そうした若者はホームレス状態やネットカフェ暮らしに陥りやすく、貧困ビジネスやいわゆる「闇バイト」などに巻き込まれてしまう危険にもさらされていると言います。 「実際にサンカクシャを利用しているのは20歳前後の若者が多く、親からの身体的、精神的な暴力を受けてきた人がほとんど。ネグレクトや逆に親が過干渉で成績が下がると殴られたという人もいる。そうした家庭で育ってきた若者たちは、誰かに暴力を振るわれるんじゃないか、イヤな思いをさせられるんじゃないかと、常に気を張っているんですよね」

支援からもとりこぼされて孤立する  
荒井さんがこうした活動を始めたのは、生活困窮世帯の中学3年生への学習支援に携わったことがきっかけでした。
そこで出会った子どもたちは、家の電気やガスが止まってしまったり、親から虐待を受けていたりと勉強どころではない環境に置かれていたそうです。「その子たちとすごく仲良くなって、高校進学後も相談にのっていました。でも、進学後のほうが大変だったんです。妊娠出産、中退、夜職や闇バイトにつながっていく人も多かった。18歳を過ぎると利用できる公的支援がほとんどなく、中退後はつながりを失って孤立してしまう。それで2016年頃から居場所をつくり始め、NPO法人を立ち上げたんです」荒井さんが一番気にかけているのは、公的支援の存在を知らなかったり、自分から相談窓口に行ったりすることが難しい若者たち。そうした若者とつながるために、TikTokやYouTube、XなどSNSを活用した発信にも力をいれてきました。

・・・続きは『のんびる』3.4月号特集をご購読ください。

◆3.4月号目次◆

【バックナンバーのご注文】  富士山マガジンサービスよりご注文ください。 【定期購読(年6冊)のご注文】 ・パルシステム組合員の方:ログインしてご注文ください(注文番号190608) ・パルシステム組合員でない方:こちらからご注文ください

 

関連記事

ページ上部へ戻る